『ブライズメイズ 史上最悪のウェディングプラン』 「親友」争奪戦 (original) (raw)

$映★画太郎の映画の揺りかご

ポール・フェイグ監督、クリステン・ウィグ主演の『ブライズメイズ/史上最悪のウェディングプラン』。R15+。

Wilson Phillips - Hold On

子どものときからの親友リリアン(マーヤ・ルドルフ)が結婚することになり、ブライズメイドとして彼女の結婚式の段取りを決めることになったアニー(クリステン・ウィグ)はほかのメンバーたちと計画を練るのだが、そのなかのひとりでつい最近リリアンと親しくなったヘレン(ローズ・バーン)が気に食わず、なにかとトラブルを起こしてしまう。

“ブライズメイド”とは結婚式の花嫁の付添い人のことで、アメリカには花嫁によって親しい友人や家族などから選ばれたメンバーたちが結婚式を取り仕切る習慣があるらしい。

この映画はそこでのドタバタを描いたもの。

宇宙人ポール』で下品な言葉を口走るキリスト教原理主義の女性を演じていたクリステン・ウィグが主演とともに共同で脚本も書き(アカデミー賞脚本賞にノミネート)、プロデューサーも務めている。

ローラーガールズ・ダイアリー』ではエレン・ペイジにアドヴァイスしてくれる子持ちのチームメイト、『ポール』とおなじグレッグ・モットーラ監督の『アドベンチャーランドへようこそ』にも出演してたり、最近よく見かけるようになった女優さんである。

シリアスからお笑いまでオッケーで高い演技力をもち、おまけにけっこう綺麗な人だったりもするんだけど、「サタデー・ナイト・ライブ」出身というからもともとお笑いの人だったのね。

なるほど、この映画はまるでコント集のようでもあるのはそういうことか。

『史上最悪の~』という邦題からもわかるように「女性版ハングオーバー!」と喧伝されてる本作。

たしかにそのとおりだといえる。

ただ、『ハングオーバー!』があくまでも男子たちのバカぶりを笑う映画だったのにくらべると、おなじバカを描いていてもこちらの方がよりリアルに身につまされる部分は多いんじゃないかと。

笑えるし『ハングオーバー!』よりもさらに下品だったりするんだけど、最後はホロリとさせられたりもするのだ。

ひとつひとつのシーンに役者の芝居を見せる時間を割いている。

だから上質の舞台劇を観ているような(下品だけど)感じもする。

アニーの古くからの親友で花嫁のリリアン役マーヤ・ルドルフは、マイク・ジャッジ監督の『26世紀青年』で主人公とともに未来にタイムスリップするヒロインを演じていた。

冒頭でワンシーンだけ出てくる口の悪い黒人インストラクター役のテリー・クルーズは、これも『26世紀青年』でマッチョな大統領を演じてた人(『エクスペンダブルズ』ではスタローンといっしょに戦っていた)。

製作は『26世紀青年』とおなじジャド・アパトウ(『40歳の童貞男』)なので、ようするに主演のクリステン・ウィグも含めてアパトウ組なんだな。

アニーのライヴァルになる美人で金持ちのヘレンを演じるローズ・バーンは、僕は『ノウイング』ではじめて見て「綺麗な女優さんだなぁ」と思ったんだけど、『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』ではムダに下着姿を披露してくれていた。

やっぱりあちらでも美人と思われてるのね。

んで結論からいうと、いままで観たこういうタイプのコメディ映画のなかで一番といっていいぐらい面白かったです。

劇場でもかなり笑いが起きてた。

これはぜひ当たってほしいなぁ。

以下、

ネタバレあり。

冒頭からいきなりベッドシーン。

お下品かつ笑わせてくれるのだが、ここですでに相手の男にいい感じで遊ばれている主人公アニーの立場が描かれる。

この映画がわりと画期的なのは、特別若くもないしものすごい美人でもない30代後半女性が主人公で、しかもコメディだということ(おばちゃんたちが頑張ってる『セックス・アンド・ザ・シティ』は観てないからよく知らないが)。

しかもゲロ&ウンコネタ付き。

ハッキリいって主人公のアニーはずいぶんと自分勝手な女性だ。

劇中でもかなりヒドいことをしてるにもかかわらず、ヒロインをギリ愛想尽かさずに観ていられるのは、ひとえにクリステン・ウィグのコメディエンヌとしての才能による。

腹が立ちながらも彼女の演技につい笑ってしまうのだ。

親友が結婚することにすくなからぬショックをうけて仕事にも身が入らず、勤めている宝石店で幸せそうなカップルの客には「愛なんていつか冷める」といい放つ。

まだ年端もいかない少女にはヒット・ガールばりの罵声を浴びせたりする。

自分に好意をもった警察官は不安感から冷たくあしらう。

そして…親友のシャワーパーティはぶっ壊す!

こんなことほんとに立てつづけにやったら誰からも相手にされなくなるところだが、そこは主人公の特権で彼女は心配してくれる人たちのおかげで「どん底」から這い上がることが出来るのだ。

この映画は女性たちが大活躍するが、この手の作品にありがちなように男性キャラがおざなりになっていない。

アニーをセフレとしか見ていない最低野郎テッド(演じるジョン・ハムの軽薄演技が最高。彼はベン・アフレック監督・主演の『ザ・タウン』ではFBIの敏腕捜査官を演じている)も、アニーに真面目に想いを寄せる警官のネイサン(クリス・オダウド)も丁寧に描写されていて、ただのお飾りになっていない。

特にあまりに身勝手なアニーの行動にネイサンがブチギレるところは、これ以上甘やかしたら共感も感情移入もできなくなりそうな主人公にちゃんとお灸をすえていて、シナリオがじつによく出来ている。

まぁ、どんなにムチャやっても彼女のことを見捨てずに心配してくれたり想ってくれる人がいるなんてのは、都合がいいっちゃいいんですが。

終盤にヘレンが泣きながらアニーに詫びる場面も、彼女は別に悪いことはなにもしていないのに(飛行機でアニーを心配したりしてるし)ちょっとズルいな、とは思っちゃったけれど。

ヘレンは美人で金持ちなので嫌味に感じられることはあっても、彼女自身には悪意はないし、ほんとにイヤな女性ではないんだよね。

僕はそこに好感がもてたんだけど。

また、この映画のなかでは一番フィクショナルな存在に感じられた花婿の妹メイガン(メリッサ・マッカーシー)は、それでもアニーへの説教の場面でリアルな人物になる。

「自分のことを人のせいにするな!」と。

メリッサ・マッカーシーはこの役で第84回アカデミー賞助演女優賞にノミネートされている(受賞は『ヘルプ』のオクタヴィア・スペンサー)。

この作品は「頑張ってきたのに報われない」と落ち込んでいる女性たちへの応援歌といえるが、女性にかぎらずヘコんでる人に元気をくれること請け合いだ。

ただ、アニーに替わって“メイド・オブ・オナー”になってシャワーパーティを仕切ることになったヘレンが予算を度外視したために赤字確実になり、リリアンがコロッと態度を変えて「やっぱりアニー、あなたしかいないの!」って泣きつくっていうのは…なんかヘレンひとりを悪者にしてるみたいでちょっといただけなかった。

ブライズメイドの習慣は日本にも広まってきているみたいだけど、こんなめんどくさいことにかかわるのはゴメンこうむりたいな。

まぁ、僕は男なんで関係ないですが。

それにしても、友だちとか親友ってなんだろう。

この映画ではアニーはヘレンとどちらが花嫁との「本当の親友」かを競い合う。

ん~と、僕にはそう呼べる人がいないんでよくわからないんだけど(大切な友だちならもちろんいますが)、そんなに自分が人の「親友」であることが重要なのだろうか。

そして「親友」ってのは競い合って勝ち取るものなのか?

けっきょく幼い頃から親しかったアニーがリリアンの本当の「親友」だった、ということになるんだけど、結果としてはそれでいいとしてもちょっと腑に落ちなかった。

さっき書いたけど、ヘレンはアニーに嫉妬してふたりのあいだを邪魔した、と謝るんだけど、う~ん、そうかなぁ、と。

僕はアニーにもおおいに反省すべき点があると思うんだけど。

でも「私には友だちがいない」と涙を流すヘレンに彼女は「同情なんかしない」とけっこう冷たい。

これは女性だからこそわかる心理なのだろうか。

あるいはメイガンに励まされたあとだから、あえておなじように冷たく突き放すような言い方をしたんだろうか。

たしかにアニーはいままで失敗や失望をかさねてきて臆病になってもいるのか、冷笑的なところがある。

そこが魅力的でもあるし、そういうネガティヴな感情を笑いに変える彼女の能力にネイサンは惹かれたのかもしれないが。

…つまり、こんなふうにけっこうあれこれ考えてしまうほど人間描写が丁寧だったということです。下品だけど。

これはオススメですよ。

下品なのはいっさいNG、という人を除いては。

DVDになったらまた観たいな。

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