放浪日記 (original) (raw)

毎年年始恒例の記事です。
昨年観た映画をまとめてみました。

題名の後ろに★が付いているのは、映画館で観賞したもの。

「テラフォーマーズ」

「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人 」

「RED SHADOW 赤影」

「セデック・バレ 太陽旗」

「セデック・バレ 虹の橋」

「男たちの挽歌」

「犬鳴村」

「ゾンビ ディレクターズカット版」

「男たちの挽歌Ⅱ」

「リベリオン」

「アンタッチャブル」★

「ララランド」

「スラムドッグ・ミリオネア」

「人生の特等席」

「ヒトラーの忘れもの」

「ジオストーム」

「ゴジラ キングオブモンスターズ」

「狂猿」★

「マトリックス」

「マトリックス リローデッド」

「バーフバリ 伝説誕生」

「ゴジラ VS コング」★

「KANO」

「ブレードランナー」

「アガースワーディ村」

「メトロポリス」

「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野」★

「300」

「アタック・オブ・ザ・キラートマト」

「スターリンの葬送狂騒曲」

「機動戦士ガンダム」

「モスル」★

「ONODA」★

「機動戦士ガンダムII 哀・戦士編 」

「マトリックス リザレクションズ」★

以上、全35本でした。

2017年は36本、2018年は34本、2019年は34本、2020年が40本でした。

コロナとか関係なく、まあだいたいこれくらいの数になるんだね。

以上の映画から、2021年の私的ベスト3を発表。

まずは第3位。

「セデック・バレ 太陽旗」「セデック・バレ 虹の橋」

ずっと観たかった映画がGyaoになったので観賞。広告を見ることになるとはいえ、無料で映画が観られるなんて、すごい時代になったものだね。

1930年に台湾で先住民が日本軍に対抗して起こった霧社事件を描いたもの。

某国人がつくれば日本人が完全悪として描かれるのだろうが、ここでは悪ではありながら、人間としての葛藤なども描かれていた。

詳しくは知らないが、先住民たちは後の大東亜戦争で日本軍の軍属となり、活躍したらしい。台湾の先住民は勇猛果敢ということがよくわかった。

そんな前知識なくても、単純にかっこよく、そして悲しい。2本立てだが、その長さはまったく気にならなかった。

続いて2位は、

「ザ・ハーダー・ゼイ・フォール: 報復の荒野」

休日に何となく映画が観たくなって、何の下調べもせず映画館に行き、最短で上映開始する映画がこれだった。

黒人の、黒人による、黒人のための西部劇。

主要登場人物は全員黒人で、黒人同士がジョン・ウーも真っ青のガンアクションでドンパチ撃ち合いまくるので、頭の中空っぽにして、銃声に身を包まれろ。

そして、西部劇とは縁のないゴリゴリのブラックミュージックが大音量で画面を占領する。劇中で新しい街に着けばタイトルのように画面いっぱいに街の名前が記されるなど、映画というよりも長編のMVを観ているような快感。

そして何より一番驚いたのは、これがNetflixの新作映画だったということだ。大手の映画会社ではなく、Netflixでもこんなにおもしろい映画、いやNetflixだからこそのこのクオリティか。時代が確実に進んでいて、僕は少し取り残されていることを実感した。ネトフリ契約者はぜひ観てみて。

さあ、そして2021年の1位は

「スラムドッグ・ミリオネア」

いまさら何だよという感じですが、なぜか見逃していて、今頃になってようやく観賞。

映画のストーリーとかそういうことで1位なのではなく、これを観ているうちに、インドでの出来事が走馬灯のように頭の中をよぎり、何とも言えない気持ちになった。

映画が現実世界からどこかへ連れて行ってくれるものという定義なら、この映画は僕にとってはまさしく極上の一本だ。

主人公はスラムで育ち、波乱万丈の人生を送る。その人生の集大成がクイズ番組の4択クイズとして(偶然に)出題される。

インドを旅したとき、大勢の子どもに接する機会があった。僕が子どもが好きなほうではないので、自ら子どもに寄っていきはしない。インドという国は、異邦人を放っておいてくれる国ではない。その悠々たる濁流の中に身を浸せば、聖俗入り混じった事象がまとわりついてくる……。

ある町に行こうと鉄道に乗った際、誰にも頼まれないのに勝手に通路を掃除して、乗客からバクシーシ(喜捨)をねだる少年がいた。僕を見て外国人と見るや、執拗に手を差し出してきた。お腹がすいているんだというジェスチャーをしながら。

けれども僕はお金をあげなかった。それは当時の僕の旅のポリシーだった。

しばらくして、少年はあきらめ、違う客へとねだりながら、次の車両に移っていった。

インドの鉄道の乗車時間は長い。今はもうできないだろうが、当時は連結部であれば喫煙が黙認されていた。僕は時折連結部に移動して、目の前を通り過ぎていく景色を眺めながらタバコを吸っていた。

すると、あの少年が連結部にやってきた。僕を見るなり、また手を差し出してきたが、何もないよというジェスチャーをすると、今度はいともあっさりあきらめて、僕の隣に座った。どうやら、彼の仕事は終わったらしい。

外国人が珍しいのが、ちらちら見てくる。タバコ吸うかと吸いかけのタバコを渡そうとしたら、はにかみながら手を横に振った。

言葉がまったく通じないので、無言の時間が過ぎていく。

そういえば、さっき食べていたビスケットのあまりがあったはずだ。サブバッグのポケットからビスケットを取り出し、一枚を食べ、もう一枚を差し出したら、少年は受け取った。そして、ゆっくりと食べた。無言だった。

「パルレ ジー」とビスケットの名前を言ってみたら、少年は笑った。

普通の子どもの笑顔だった。

そこから十数分間、連結部の轟音にかき消されながら、お互い単語を言い交わすだけだったが、そんな小さな国際交流が楽しかった。

そんなとき、車両を巡回する警官が連結部にやってきた。ほうきとゴミ箱代わりのバケツを手にした少年を見るや、何か注意している。少年も負けじと言い返す。何を言っているのか理解はできなかったが、おそらく無賃乗車を注意しているのだろう。すると突然警官は手にしていた警棒で少年を殴った。肩、胴、そして頭。少年の悲鳴が上がる。警官はそれでも続けて殴り続ける。あまりの出来事に一瞬動けなかった。

なにやってんだと警官を止めたら、隣にいたインド人野次馬に止められた。

彼は無賃乗車なんだ。

知ってるよ、それくらい。それくらいでなんで殴られなきゃいけないんだ。

野次馬は動物を見るような目で、少年を指し、もう一度「無賃乗車」と言った。

あまりにも殴り続ける警官は、さすがに周りの人に止められ、少年に向かって何か怒鳴って去っていった。

彼は次の駅で降りなければいけない。

野次馬は、そう英語で訳し、自らの座席に戻っていった。

列車はあいかわらず平野の中を走っている。連結部には僕と、何発も殴られ頭と鼻から出血した少年が残された。

僕が彼を見ると、彼も僕を見た。目が合った。

少年は、はにかんだ。血を流しながら、へへっと笑った。悲しい笑顔だった。

いつものことさ、と言っているかのように、何事もなかったかのように、僕の隣に座りなおした。けれども、それ以降少年は無言だった。

そして、次の駅に列車が停まり、少年は列車から降りた。ホームに立つと軽く僕を振り返って、そしてどこかへと逃げるかのように駆けていった。

映画を観ながら、主人公の悲しい笑顔を見ながら、僕はそんなことを思い出していた。

僕は旅行者という名の傍観者だった。

時に映画は、僕を強引に過去へと引き戻す。

そんな時間が、たまらなく愛おしい。