2016-03-16 (original) (raw)

今回のラオス旅行、アジアを代表するハブ空港である、韓国の仁川空港からは、ビエンチャンにもルアンパバーンにも直行便が飛んでいます。

だからラオスでは韓国人の観光客にたくさーん会いました。

ところが日本からラオスへの直行便は飛んでないので、私はベトナム航空を使い、ハノイ経由でラオスに出入りしたんです。

ハノイの空港は(他のアジアの空港と同じように)成田より圧倒的に立派できれい。

すばらしいっ!ってことで、さっそく生春巻きとビールで「うひひ」してたわけですが、

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その後、行ったトイレで「???」となりました。

これ

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何が「???」かわかります?

映っているのはトイレットペーパーホルダーですが、上の丸いのと、下の(日本でよく見るタイプの)ホルダーと、ふたつ付いてるんですよね。

しかも下部の「日本でよくあるタイプ」にはペーパーがセットされておらず、使用されていません。

空港のトイレは広く、女性用トイレでは 10個以上の個室がずらっと並んでいます。そのすべての個室に、使われてないホルダーが空しく放置されてるんです。

なんで、使用されてないペーパーホルダーが付いてるのか?

私の仮説はこうです。

写真には写っていませんが、便器には“ TOTO ”の文字がありました。

経済支援かビジネスかは不明ですが、空港のトイレは日本企業が納入しているようです。

おそらく便器だけでなく、個室を仕切るパネルやトイレのドア、そして壁付けのペーパーホルダーも、すべてセット品なのでしょう。

だから、日本と同じようなペーパーホルダーが“もれなく”付いている。

んが、こんなものは海外の空港では使えない。

なぜって?

メンテが大変すぎるからです。

日本タイプのホルダーにセットできるトイレットペーパーは長さが短い。

空港のようにひっきりなしに使用されるトイレでそんなペーパーを使っていたら、ものすごい頻度でペーパーを交換する必要がある。

それじゃあ大変すぎるから、上のどでかい丸形のホルダーに入るような、長ーーーーーいトイレットペーパーを使うワケです。

この大きな丸いタイプ、日本ではあまり見ませんが、海外の公共施設では大半がこっちだと言っていいほど普及してる“グローバルスタンダード”なペーパーホルダーです。

おそらくベトナムの空港でも、最初に日本メーカーが設置したトイレのホルダーが「げげっ、こんなの使えないよ!」って代物だったので、こっちのデカイのを後付けしたのでしょう。

念のタメ、他の場所にあるトイレも(広い空港を走り回って!)確認してみましたがどこも同じ状況でした。

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この、「使われないまま放置されてる日本タイプのトイレットペーパーホルダー」は、いろんなことを示しています。

「日本式のモノが当然、一番いいはず」という思い込みで、世界で使われてないものをそのまま輸出、設置してしまう日本メーカーの姿

(↑ こんなんだから、あそこまで素晴らしい洗浄機能付き便座がなかなか世界で普及しないのでは?)

もうひとつは、海外の良い物を(知らないのかイヤなのか知りませんけど)全く取り入れようとしない日本の姿です。

だってね。

日本だって空港や商業施設、駅や新幹線、学校から市役所まで、多数の人が使うトイレでは、海外タイプのホルダーを使ったほうがよいと思いませんか?

人手不足の中、お掃除の人がペーパーを取り替える手間を大幅に省けるでしょ?

写真をみてもらえば分かるけど、ペーパー交換の頻度は 10分の 1くらいで済むかもしれない。

しかも日本式のホルダーではすぐにペーパーが切れてしまうため、日本の大規模施設のトイレには、未使用のペーパーがたくさん置いてあります。

このトイレットペーパーを持ち帰ってしまう人も少なくなく、震災後のペーパー不足の時には、高級デパートのトイレにさえ「持ち帰らないでください」の張り紙がでていたほどです。

なのになぜ日本では、いつまでも家庭用のペーパーホルダーを公共施設で使い続けるの?
日本だって、ハノイ空港みたいに後付けしてでも大型のモノに変えてしまったほうが合理的では?

使われないままむなしく放置されるトイレットペーパーホルダーは、
・海外のニーズに頓着せず日本式の商品を押しつけ、一方で、
・海外の合理的な商品を日本に取り入れようという気もない、
・「日本のモノが一番いいに決まってるだろ?」的な思想の犠牲者のように見えました。

トイレの数は、ハノイの空港だけでも相当数に上ります。

でも、おそらくハノイだけでもないのでしょう。

ホーチミンでも、もしかしたら他のアジアのあちこちの空港でも、大量に「使われないまま」朽ちていく日本タイプのペーパーホルダーが存在しているのかもしれません。

グローバルに受け入れられない日本の商品が使われないまま、ずらりと並んで空しく放置される光景には、ちょっと哀しい気持ちにさせられました。

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そんじゃーね!

<以下、当エントリに関するフォローアップツイート>

先日のペーパーホルダーの件→ https://t.co/kxZ4E4iIU4 「海外のは合理的かもしれないが使いにくい」という声が複数ありました。その通りです。なぜ使いにくいままなのかって?日本が取り入れないからです。日本が取り入れたらあっというまに改善して使いやすくなりますよん

— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2016年3月17日

「使い勝手は良いが非合理な商品」VS「合理的だが使い勝手がよくない商品」がある時、「どっちがいいか」みたいな議論は意味が無い。「それはチャーンス! だったら合理的で使い勝手がいい商品を開発すれば一人勝ちじゃん!」と考える人がイノベーションを起こし、世界シェアを獲得できる。

— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2016年3月17日

これ、前者の発想は「問題は解決出来ない」という前提にたってるという意味で「敗北主義」と呼ばれます。少なくともビジネスに関わる人は後者の発想を身に付けないと価値提供はできない。

— ちきりん (@InsideCHIKIRIN) 2016年3月17日

<関連エントリ>
これはびっくり! → 東海道新幹線のトイレのミラクル!

http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+personal/ http://d.hatena.ne.jp/Chikirin+shop/