2018-08-10 (original) (raw)
「貯蓄から投資へ」と言われ続けて数十年。
未だに日本では「投資は怖い」と貯金だけする人が多い一方、
人生一発逆転を狙って高レバレッジをかけたり、ものすごくボラティリティ(=価格変動幅)の高い商品に投機する人もいます。
定年後に退職金を(大手証券、大手銀行や郵便局、大手保険会社みたいな、ものすごーく信頼できるっぽく見えて実はそうでもない)金融機関のバカげた商品につぎこんで失ってしまう高齢者もいれば、
働き盛りの多忙な会社員や医師などが「それ、どう考えても詐欺でしょ?」みたいな不動産投資話に騙されて自己破産の憂き目にあったりもする。
「なにもしなくても毎月○万円ずつ儲かります!」なんて営業トークを、医学部に入れる学力のある人が信じてしまう「信じられない!」世の中。
いったい、なんなん?
とくに「不動産投資」を「不労所得」などと呼ぶのは、その時点で詐欺です。
不動産投資はかなりめんどくさい「事業」だし、とってるリスクも会社員の比ではありません。
そしてなにより不思議なのは、「ごく普通の投資」をしてる人が、日本では少なすぎると思えること。
「普通の投資」とは、
・働き始めると同時に少額で始め、
・収入がなくなる年齢まで何十年単位で、
・レバレッジはかけずに、節税制度を利用しながら、
・分散投資とドルコスト平均法の原則に則り、
・生活のゆとりや老後の資産形成を目的として行う
投資のことです。
若い人の中には、「投資はお金のある人がやるもの。まだ資産もなく収入も低い自分には関係ない」と思ってる人がいますが、それは間違いです。
まとまったお金が手に入った時に「人生で初めての投資」なんてしたら、高い確率で資産を失います。
そんなことするから詐欺られる(or カモられる)んです。
そうではなく、収入がまだ低い時から投資を始め、投資について身を以て学ぶことで金融リテラシーを習得するのが大切。
★★★
また、「若い時ほどリスクを取り、定年が近づけばリスクを減らす」のが、普通の投資の基本です。
20代、30代など若い頃には比較的リスクの高い(=リターンも高い可能性がある)商品に投資し、50代後半から60代になれば、少しずつ取るリスクを減らし、銀行預金の比率を上げていく。
で、定年退職の(仕事を辞める)タイミングでは、大半のリスク商品を貯金にシフトする、
というように、年齢に応じてリスクを減らしていくんです。
なぜなら、若い時と高齢になってからでは、とっていいリスクの量が異なるからです。
それなのに!
若い時は貯金しかせず、50代とかになってから「老後の資金が足りない!」と慌てて株や不動産を買い始めるのは、まったくもって「異常な」投資スタイルです。
また、若い人が「儲かった」商品があっても、高齢の親に勧めるのはNGです。30代の子世代と、60代の親世代では、とってもいいリスクの量が異なるのですから。
★★★
以下は、「普通の投資」って具体的にどうすればいいのか、まったくわからないという超初心者のために
今日はお勧めの始め方を書いておきます。なお、言うまでもなく投資は自己責任です。
1)就職したら最初の給与から投資を始める
できるだけ早く学び始めたほうがいいので、投資は最初の給与(すでに働いてるなら“次の給与”)から始めましょう。
額はいくらでもいいですが、原則として「貯めるお金の半分を貯金・半分を投資」にします。
月に1万円を貯めるなら「 5000円を貯金、5000円を投資」です。ボーナスで 10万円貯められるなら、5万円を貯金、5万円が投資。
なお、私は「給与の何割を貯めろ」などと勧める気はありません。
若くて収入は低いけど、やりたいことがたくさんあるなら全額使ってしまっても問題ないです。
ここで書いているのはあくまで「お金を貯めるなら、半分は貯蓄ではなく投資に」ってことです。
2)ネット証券に口座を開く
投資を始める準備として、ネット証券に口座を開きましょう。
どこがお勧めとかありません。
証券会社が潰れても投資商品は信託財産として分別管理されてるので、証券会社の信用力は気にしなくてもよく、普通に数年以上トラブルなく営業してる会社だったらどこでもオッケー。
細かく言えば画面の見やすさや手数料率に違いもあるんですが、初心者には比較自体が難しいので気にしなくていいです。
唯一確認した方がいいのは、毎月、銀行口座から証券会社の口座にお金を移す時の入金手数料がかからないようにすること。
銀行側で無料にできる場合もあるし、系列銀行から系列(提携)証券への入金で無料など、いろんな方法があります。
ので、自分の銀行口座と提携してるネット証券をえらびましょう。
毎月の自動入金制度が使えたらさらに便利ですね。
口座は特定口座。税金が源泉徴収される便利な口座です。
追記)基本はそれ(特定口座)でいいのですが、2024年の1月から、NISAが大幅拡充される「新NISA制度」が始まります。
これにより、(年間の投資額が360万円以下の)大半の人にとっては、株式や投資信託の値上がり益がほぼ非課税になります。
これはめっちゃお得なので、これから口座を開くという人はぜひ「NISA口座」を開設しましょう。
※NISA口座では、投機的な商品(長期投資に向かない商品)は購入できなくなっているので、そういう意味でも初心者には安心です。
なお、NISA口座開設の手続きはけっこう面倒なので、早めに開設するのをお勧めします。
あと、証券会社の口座を開くとき「メールアドレスに投資情報(営業)メールを送っていいか?」という設定だけは、「送ってくるな!」に変更しておくこと。
コレを外しておかないと、営業メールが大量に送られてきてまじウザいです。
3)投資商品をひとつ決める
最初の 1年は、投資する商品はひとつでいいです。一年間それに毎月同じ額を投資します。
投資が初めての人へのお勧めは「先進国の株式指標に連動する ETF」です。
「アメリカのナスダック市場に連動する ETF」とか「日本の TOPIXに連動する ETF」みたいなやつね。欧州株やドイツ株、先進国の株式全体に投資するのもあります。
途上国は(経済成長率は高いのですが)株式市場のルールが突然変わったり、為替が急落したりもするので、初めての人は避けましょう。
債券や商品(コモディティ)、不動産(REIT)も、どういう時に上がりどういう時に下がるのか、初心者にはわかりにくい。
「債券のほうが株より安全」とも言われますが、初心者で金利や為替と債券価格の関係が理解できてる人、いないでしょ。株のほうが圧倒的にわかりやすいです。
株式系の ETFには「環境にやさしい会社に投資」とか「小型株に投資」みたく、投資対象を絞った商品もあります。
が、初めての投資なら、比較的大きな範囲(東証の株とか、アメリカのS&Pやナスダックなど)に投資(連動)するものを選びましょう。
なお、ETFとインデックスファンド(パッシブ運用投資信託)は、運用方針はほぼ同じ。
なので、そっちでもいいです。
(ETFのほうがリアルタイムで売買できてわかりやすいけど、購入できる最少単位の額がやや高いかも。その他の内容的にはあまり変わりません)
4)ログインは月 1回、メンテは年 1回
投資には事前勉強を含め時間がかかる。自分は仕事が忙しすぎて投資をする時間がないという人がいますが、
「普通の投資」にはたいして時間はかかりません。
「もうかってるかどうか」など、頻繁にチェックする必要はまったくないんです。
月に 1回、給料日にでもログインして、淡々と毎月同じ額を同じ商品に投資するだけ。
下がってると投資する額を減らしたくなるし、上がってると増やしたくなりますが、そーゆーことは絶対にしないよーに。
その気持ちと戦うのが「短期売買で儲けるためではなく、長期的に資産を形成するための、普通の投資を学ぶ」ってことなんです。
だから 1年はどんだけ大暴落してても変わらず同じ額を投資します。
積み立てNISAなど、自動的に毎月、定額投資してくれるプログラムもありますが、投資の勉強という意味では、それとは別に月に 1回はログインし、画面を確認して喜んだり悲しんだりすることをお勧めします。
「あちゃー」とか言いながら同じ額を、「うひょひょー」とか言いながら同じ額を、毎月、淡々と投資する。
あとで書きますが、それによって自分の気持ちがどう揺れるかを自覚すること自体が大きな学びになるので。
そして年に一回は、投資対象と投資額を(変えるなり変えないなり)意識的に判断しましょう。
今年は月に 1万円だったけど、来年は 1万 5千円にするとか、今年は TOPIX連動 ETFに投資してたけど、来年から増やす 5000円はナスダック連動にするとか。
基本、これまで投資してきたものは同じ額を同じように投資し続け、増加する分を新たな商品に投資するのがいいと思います。
★★★
以上。これだけです。
とりあえずこれを数年続け、下記について自分の言葉で説明できるようになったら、初心者卒業です。
・分散投資とはなにか
・ドルコスト平均法とはなにか
・信用リスクと流動性リスクと価格変動リスクとインフレリスクと金融機関リスクの違い
その後は投資の本でも読んで自分で勉強し、
・口座を NISAや iDeCo にしたほうがいいか、
・投資対象を個別株やアクティブ投資の投信にするか、など検討してください。
こういうステップをふまずに、いきなり仮想通貨とか FXとか外貨預金(特に高金利な途上国通貨)、不動産関連商品などにお金を投入するのは、投資ではなく投機です。
誤解の無いように。
私は投機が悪いといってるわけではありません。単に「それは普通の投資とは違う」と言ってるだけです。
それと、最初から「大好きなこの会社の株に賭ける!」とかいって個別株を買うのも、「賭け=投機」ならいいけど、「普通の投資=資産形成」としてはお勧めしません。
個別株って業績予想をしたり、優待がもらえたり株主総会に行けたり、おもしろい部分ももちろんあります。
でも、ナスダック全社がいっせいに倒産することはありえませんが、どんなに絶好調な会社でも突然の倒産(or 株価暴落)はありえます。
個別株を買うのは、投資資金がある程度の額となり、個別株でポートフォリオが組めるようになったときか、もしくは、財務分析や株価チェックに一定の時間がさける環境になったときにしましょう。
「いや、私は一生、貯金だけでいい。投資なんてしない」って?
本当にそれがいちばん得だと思います?
私が「普通の投資」を勧めるのは、資産形成のためだけではありません。
投資をすると以下のようなメリットもあるんです。
1)社会と市場について学べ、視野が拡がる
たとえばアメリカの株式指標に投資してると、トランプ大統領の発言や、フェイスブック問題、貿易戦争の影響など、様々な経済の動きについて興味がでてきます。
マーケット感覚が身につく上に、経済や政治の勉強にもなる。視野を広げ、社会の動きについて学ぶ方法としてすごくいい。
将来、個別株への投資を始めれば、決算書の読み方など、財務分析の力もつくはず。
2)自分の投資性格が理解できる
儲かってると「もっと儲けよう」と欲をだして信用取引に手をだしたり(=レバレッジをかけたり)、
損してると「もういやだ!」と落ち込んで、月一回のログイン&継続投資をしなくなったり、
損を取り返そうと焦って追加投資(ナンピンっていいます)しちゃう性格かどうか、どれくらい損切りができない(非合理な)性格なのか、なども含め、自分の投資適性や投資に関する傾向を「理解・自覚すること」ができる。
そうなると、おかしな詐欺話にひっかからなくなり、銀行や郵便局が強力にプッシュしてくる高手数料・高リスクな商品の勧誘に負けなくなります。
つまり、将来、お金で失敗する確率が大幅に減らせる。
加えて自分の投資適性を知れば、人生全体にも役に立ちます。
だって投資で損切りできない性格だとわかれば、
「そうか、オレは損切りが怖いがために“長年かけて取得した資格職業”から離れられず、こうしていつまでも人生を無駄にしてるんだな」と自覚できたりするから。
3)リスクをとることの意味がわかる
人生には、投資以外でもたくさんの「リスクをとる機会」が現れます。
転職、結婚、離婚、出産、海外移住、病気になったときの治療方針などなど。
人生でリスクをいっさいとらずに生きていける人なんてほとんどいないはず。
人生を歩んでいくために不可欠な「自分が望む物を手に入れるためにリスクを取って決断し、その結果が良くても悪くても自己責任として冷静に受け入れる」という態度が、投資によってものすごく実践的に身につく。
だから私は「みんなもっと普通の投資をすべき」と言ってるわけ。
たとえまったくお金に困ってなくて、資産形成の必要性がぜんぜんなくても、こんな大きな学びの機会に手をつけないなんて、ほんとにもったいないから。
これから社会人になる人、なったばかりだという人で、まだ投資を始めてない人、ぜひ上記を参考にして「普通の投資」を始めてみてね。
「普通の投資」は自分を知り、社会の動きを学び、人生を豊かにするのに役立つ、ってか、ほとんど「働く」ことと同じくらい、いろんなことを深く学べるプロセスでもあるんだから。
※下記は投資の本ではありません。これからの世の中を生き抜くための根源的な力=市場というものの本質を理解するための本です。