法社会学における「労働」というテーマ - hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳) (original) (raw)

たまたま日本法社会学会というホームページを見つけて、その中の「法社会学会学術大会の歩み」というのをみていくと、法社会学で「労働」というテーマが結構論じられていた時代もあったことが分かります。

まず、1947年~1964年

http://wwwsoc.nii.ac.jp/hosha/tabidati/tabidati_04.html

>一九四八(昭和二三)年度一二月一一日 東京大学 [研究報告] 土建労働の構造 川島 武宜 日本における労働関係の特質 磯田 進 コシキ島の家族関係 舟橋 諄一 家父長権の成立過程と神授的権威 戒能 通孝

4つの報告のうち、2つが労働問題です。

磯田報告は、以前本ブログで紹介したこれですね。

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/post-b8cd.html(磯田進「日本の労働関係の特質-法社会学的研究」@『東洋文化』)

>一九五〇(昭和二五)年度秋季一〇月三一日 大阪大学 [研究報告] モンテスキューの法社会学について 長谷川正安 改正労組法とその施行の実態 野村 平爾 犯罪社会学の問題 平野 龍一 中国法史学の構想~~「封建」とフューダリズム 仁井田 陞 裁判の法社会学的考察 戒能 通孝

野村氏はれっきとした労働法学者ですが、改正労組法の施行実態というのが立派に法社会学のテーマになっていたのですね。

>一九五一(昭和二六)年度春季四月三〇日 慶應義塾大学 [研究報告] 明治末期の二、三の立法と裁判 中村吉三郎 漁業労働関係の法社会学的考察 川島 武宜=潮見 俊隆=渡辺 洋三 ソヴィエト社会における都市と農村~~婚姻と家産の問題に関連して 福島 正夫

漁業労働というのは、これはどうも直接雇用労働関係ではなさそうですが。

>一九五二(昭和二七)年度春季四月二五日 日本大学 [研究報告] 戸籍法の前近代的形態 山主 政幸 労働ボスの法社会学的考察 内山 尚三 [討論] 学問の自由と大学の自治 上原 専禄、尾高 朝雄 裁判 平野義太郎、戒能 通孝

労働ボスというのは、まさに労務供給請負業者のことで、こういう世界もちゃんと法社会学の研究対象であったわけです。

>一九五三(昭和二八)年度春季四月三〇日 中央大学 [研究報告] 造船業における臨時工 後藤 清 積雪山村の民主化 新田 隆信 [シンポジウム] 調査の目的と方法 戒能 通孝、磯野 誠一

これも、ガチに労働法の中心テーマをガチに労働法学者が報告してます。

>一九五三(昭和二八)年度秋季一一月一日 京都大学 [研究報告] 山林労働における庄屋制について~~特に村落構造と関連して 神谷 力 学生の住所に関する自治庁通達について 唄 孝一 [シンポジウム] 立法(その一) 民主立法の要件と諸問題 小林 直樹、千葉 正士

山林労働と庄屋制・・・。ううむ。

このあと、こういう実態を明らかにするような労働の法社会学的研究てのは見えなくなりますね。

このあたり、いろいろと考えるところです。

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