極東ブログ (original) (raw)

コロンブスはユダヤ人だったという説はよく知られており、その根拠にはいくつかの傍証が存在する。Gensparkに聞いてみたら、しれっとそんな記事をまとめてくれたりもする。だが、この手の話は大抵、ある程度の傍証があっても、そこから先に進むことは難しい。しかし、私は少し迂闊だった。コロンブスほどの歴史人物なら、DNAがわかるかもしれない。そのDNAから新たな事実が判明すれば、さらなる証拠を提供する可能性がある。そして、実際にそれが明らかになった、らしい。

DNA検査で明らかになったコロンブスの出自
クリストファー・コロンブスの出自については、これまではイタリアのジェノヴァ出身だとされてきた。しかし、DNA研究により、この伝統的な説が覆される可能性がRTVEによって報道された。RTVEのドキュメンタリー『コロンADN、彼の真の起源』では、コロンブスがスペイン系ユダヤ人であった可能性が高いとされている。このドキュメンタリーでは、コロンブスの出自に関する25の仮説(ジェノヴァ出身説、ガリシア出身説、カタルーニャ出身説、セファルディム説など)を検証し、最終的にDNA分析を通じてその謎に迫った。
なんと、この研究には22年もの歳月が費やされたそうだ。グラナダ大学の法医学者ホセ・アントニオ・ロレンテ教授が中心となって、まるで探偵小説のように一つずつ仮説を検証していったのだから、根気のいる仕事だったに違いない。
DNA検査の元になるのは、遺骨だ。これがまず問題だった。コロンブスの遺骨がどこに埋葬されているのかについては、100年以上にわたり論争が続いてきた。セビリア大聖堂にあるのか、それともドミニカ共和国にあるのかという議論の焦点を、ロレンテ教授が解決したという。DNA分析を用いて、コロンブスの遺骨がセビリア大聖堂に埋葬されていることが確認され、ドミニカ共和国にあるとされていた遺骨に関する論争にとりあえず終止符を打った。
コロンブスの息子であるヘルナンド・コロンの遺骨も分析され、父子関係がDNAを通じて確認された。この研究により、コロンブスのY染色体とミトコンドリアDNAにセファルディム(スペイン系ユダヤ人)の血統に関連する特徴が見つかり、地中海西部に住んでいたユダヤ人の遺伝的要素と一致していることが明らかとなった。つまり、コロンブスはユダヤ人だった。

コロンブスの出自と家族関係の秘密
コロンブスは生前、自身の出自についてほとんど語らなかったことが記録されている。これは、15世紀スペインにおけるユダヤ人迫害から逃れるため、自らのルーツを隠す必要があったためだと考えられる。当時、ユダヤ人はキリスト教に改宗しない限り厳しい迫害を受けており、コロンブスもその迫害を避けるために表向きはキリスト教徒として振る舞わざるを得なかった。面白いことに、DNA分析の結果、コロンブスとディエゴの関係は実際には兄弟ではなく、遠い親戚だったことが明らかになった。5親等ほど離れた親戚だったらしい。これってつまり、コロンブスは家族関係までも偽っていたということか。

資金調達とユダヤ人ネットワーク
コロンブスは、アメリカ大陸への航海を実現するためにユダヤ人ネットワークを活用していた。航海の資金を集める過程で、彼はユダヤ人や改宗ユダヤ人(コンベルソ)から支援を受けた。スペイン王室の高官であったルイス・デ・サンタアンヘルをはじめ、ユダヤ人の高官や金融関係者が財政的支援を行った。また、ドキュメンタリーによれば、ユダヤ系資産家であったアンドレス・カブレラが航海に関する資金調達を手助けしたことがわかっている。
さらに興味深いのは、コロンブスがメディナセリ公爵と数年間一緒に暮らしていたという事実だ。この公爵もユダヤ人を支援していたとされている。まるで、ユダヤ人の秘密結社が新大陸発見の裏で糸を引いていたかのようだ。

地中海西部のユダヤ人コミュニティ
DNA分析の結果、コロンブスの起源が地中海西部に限定されることも明らかになった。ロレンテ教授によれば、「地理的位置:西地中海。この全ての地域」がコロンブスの出身地の候補となるという。
当時、イベリア半島には約20万人のユダヤ人が住んでいたのに対し、イタリア半島全体でも1万から1万5千人程度しかいなかったそうだ。ジェノヴァに至っては、12世紀にユダヤ人を追放していて、コロンブスの時代にはユダヤ人コミュニティが存在しなかったらしい。言語的証拠も、この説を支持している。コロンブスの残した多くの手紙はすべてカスティーリャ語(現代スペイン語の前身)で書かれており、イタリア語の影響は一切見られない。さらに、ジェノヴァの銀行とのやり取りさえもカスティーリャ語で行われていたことが確認されている。ジェノヴァ出身説はかなり厳しくなりそうだ。
カタルーニャの研究者フランセスク・アルバルダネルは、コロンブスがバレンシア出身の絹織物職人の家族に生まれたという説を唱えている。ユダヤ人コミュニティでは絹織物職人が多かったそうだ。新大陸発見の裏に「絹の道」ならぬ「絹のネットワーク」があったのかもしれない。
さて、話をまとめると、コロンブスは恐らくスペインのどこかで生まれたユダヤ人で、迫害を避けるために出自を隠し、ユダヤ人ネットワークを駆使して新大陸発見にこぎつけた...というのが最新の学説らしい。これで歴史の教科書が書き換わるか。たぶん、しばらくはないだろう問題はコロンブスの出自というだけではない。どうやら私たちは、この時代の全体を描き直す必要があるのかもしれないのだ。