ゴールダイレクテッドデザインとは: DESIGN IT! w/LOVE (original) (raw)

ゴールダイレクテッドデザインとは、アラン・クーパーが提唱するインタラクションデザインの方法です。適切にデザインされた振る舞いを通じてユーザーのゴールを達成できるようにすることが、ゴールダイレクテッドデザインの目標になります。

クーパーはゴールダイレクテッドデザインをよりよく理解するのに必要なことは、

の2点だとしています。

ユーザーのゴールについては、先にクーパーの言葉を引用した「ユーザーの3つのゴール」というエントリーを書きましたが、ほかにもクーパーはこんな風にも書いています。

多くのデザイナは、デザインの目標はいつも覚えやすいインターフェイスを作ることだと思っている。覚えやすさは重要なガイドラインだが、実際には、ブレンダ・ロールがいっているように、デザインの目標はコンテキスト次第で変わる。

アラン・クーパー『About Face 3 インタラクションデザインの極意』

クーパーが例に出しているのは自動電話交換システムの例で、この製品を使う人は一定の時間内に何本の電話を処理したかで給与が決まったりするため、デザインに求められるものの優先度は覚えやすさよりもスループットの速さになるだろうと言っています。そりゃ、そうですよね。そっちのほうが製品を使う人のゴールに合致してますから。

このような形で明確にしたゴールがいかにインタラクションデザインにヒントを与えるのかは、クーパーが提唱するゴールダイレクテッドデザインプロセスのなかに埋め込まれています。

ゴールダイレクテッドデザインプロセス

クーパーが提唱するゴールダイレクテッドデザインプロセスも、ほかのUCDプロセス(もちろん僕が『ペルソナ作って、それからどうするの?』で提案したプロセスも含め)と同様に、ユーザー調査と最終的な形態のデザインのあいだの隙間をどう埋めるかを具体的に提示しています。ユーザー調査のデータをもとにデザイナーが行う作業をブラックボックスのなかに押し込めてしまうのではなく、具体的な作業を明示したプロセスの形でどんな作業手順でユーザー調査で得たデータから最終的な形態のデザインにつなげていくのかを示しています。

具体的には、ゴールダイレクテッドデザインプロセスは以下のようになっています。

大枠では、僕が『ペルソナ作って、それからどうするの?』で提示したユーザー中心のデザインプロセスと大きく変わりません。僕の方のプロセスではユーザー調査の結果を対象者ごと個別に分析する行動モデル分析の過程や、プロトタイピングやユーザーテストの過程が入っていますが、基本的な考え方は、このゴールダイレクテッドデザインプロセスと大きく違いはありません。ユーザーのゴールを知り、ユーザー像および製品側のインタラクションの双方およびそのまわりの環境をモデリングすることで、どういったインタラクションをデザインすれば、ユーザーにとって最適なものになるかを考えるという点では、UCDの手法はcontextual designなども含めておなじ発想に立っていると考えてよいでしょう。

このプロセスで参考になるなと思ったのは、シナリオを「コンテキストシナリオ」「キーパス・シナリオ」「チェックシナリオ」の3つに分けているところ。これは複雑なシステムをデザインする際には非常に有効です。特にチェックシナリオという発想はいままでの僕にはなかったので、これからは有効に使っていこうと思います。

それにしても、クーパーの『About Face 3 インタラクションデザインの極意』は気になるところをピックアップして読んでますが、これはインタラクションデザインを考える上では、一番参考になる本かなと思います。高いですけど、ちゃんと学びたい人はこれだけは買ったほうがいいでしょう。
UCDの全体像は僕の本を読んで理解してもらいつつ、僕の本では内容が薄くなっている「詳細デザイン」の部分はこれを参考にしていただくとよいと思います。

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