「マスコミたらい回し」とは?(その96)奈良高槻妊婦搬送問題で報道被害 奈良県立医大産婦人科教室への研修希望者が辞退 ただでさえ人手不足の産科に打撃 - 天漢日乗 (original) (raw)
これから書くことは、信頼できる人物から寄せられた情報に基づく。
今回の
奈良高槻妊婦搬送問題での行き過ぎたマスコミの奈良県立医大産婦人科教室叩き
が原因となって
研修予定者が辞退を決めた
という。
産科医不足は深刻
と、マスコミは報道する一方で、
医師を悪者に仕立てるために過剰な奈良県立医大産婦人科教室叩き
をこの何日か続けた。その様子を見て
これから研修を予定していた若手医師が辞退した
のだ。
産科医療について、間違った方向での報道が過熱した結果がこれだ。
日本の産科医の52%が50歳以上だ。若手医師は産科を選ばなくなっているから、このままでいくと
もう2、3年で日本のあちこちに産科崩壊地域が拡がる
と言われている。少なくとも
奈良県立医大産婦人科教室クラスの三次救急担当病院へのアクセスが非常に難しくなる地域が出現する
のは間違いない。
昨日、サイト上で公表された奈良県立医大産婦人科教室の8/28-29の当直の詳しい状況を見ても分かるとおり、産科は慢性的に人が足りない。特に奈良では
大淀病院産婦死亡事例での毎日新聞が第一報で誤報を垂れ流し、メディアスクラムが起きた
結果、
この3月に奈良県南部の産科の最後の砦であった大淀病院産科が閉鎖
されただけでなく、近隣地域でも産科の閉鎖・縮小が相次いでいる。
産経新聞より。
奈良県 産科医72人減少やまず 昨年75人、初めて実数把握
8月31日17時12分配信 産経新聞奈良県橿原市の妊婦(38)の受け入れ病院探しが難航し、死産した問題で、同県内の産科医の実数は今年4月現在でわずか72人で、前年よりさらに3人減少していたことが31日、わかった。同県では、県の審議会の指摘を受けて、昨年初めて産科医の実数調査を急遽(きゅうきょ)実施。県は「産科医不足が問題とされたのは、ここ最近の話」としているが、昨年8月には分娩(ぶんべん)中に意識不明となった妊婦が19病院に転院を断られ、後日死亡する問題も起きており、産科医療に対する認識の甘さも改めて浮かんだ。
県によると、実数調査の必要性を指摘したのは、妊婦も含めた救急医療について討議する専門のワーキンググループ。少子化問題がクローズアップされる中、合計特殊出生率が全国最低レベルという同県の状況を改善しようと、県の医療審議会が医療関係者など外部委員を交えて平成17年3月に発足させた。
その議論の過程で、同県内では産科医不足が深刻化していることが話題となったが、県では産科医の実数を把握できていないことが判明。外部委員から「数も把握していないというのはどうか」といった指摘も受けて、県は18年、初めて県内の医療機関に対し、アンケート形式で実数調査をした。
その結果、18年4月現在の産科医数を75人と確認。県ではそれまで、厚生労働省が2年ごとに行う年次推移調査の都道府県別データを掌握していたが、同調査からは産科医と婦人科医の合計数しか分からないといい、直近の数値となる16年は計94人で、県独自の18年の実数調査とは約20人の開きがあった。
県医務課は「産科医不足が問題とされたのは最近の話で、それまで県も産科医の数を調査していなかった。実数の少なさにショックを受けた」としている。
さらに、今年4月時点の実数調査では72人に減少しており、産科医不足に歯止めがかかっていない現状が裏付けられた。
同県では、重症妊婦を治療する核施設となる「総合周産期母子医療センター」の整備も、無停電装置の容量不足判明で厚生労働省が期限とする来年3月末までには間に合わないなど、産科医療に対する対策が後手に回っている。今回の問題も、県の認識の甘さを示しているといえそうだ。
産科医不足が進んでいるところに、
若手が研修を辞退する
のだから、
奈良県の産科医はどんどん不足する
ことになる。
奈良県立医大に研修医が来ない、ということは、産科医療を支える若手医師が育たなくなる、ということと同義だ。
その原因を作ったのが
奈良県立医大の産科を悪者に仕立てたメディアスクラム
である。
マスコミは
奈良県の産科医療の悪化に明らかに影響を与えた
ことに、目をつぶるつもりか。これが
報道被害
でなかったら、一体何なのか。
奈良県立医大に空きベッドがあった、などという報道をしていた
新聞各紙とNHKおよび民放各局
は、
ただでさえ志望者が少なく、研修医を集めるのに苦労をしている奈良県立医大産婦人科教室への報道被害
について、どう答えるつもりか。それとも
自分たちのせいではない
とあくまでシラを切るのか。特にテレビの影響は大きい。わたしが実見しただけでも
フジテレビの「とくダネ!」とNHKの「ニュースウォッチ9」
は、
奈良県立医大を犯人に仕立て上げる映像作り
をしていた。
視聴率狙いのあざとい番組作りによって
産婦人科を志そうとしていた、若手医師の進路を阻み、少なくとも一人の未来の産婦人科医を永遠に失った事実
に、どう責任を取るつもりか。
中でも
NHK「ニュースウォッチ9」
は、NHKとしては
随一の報道番組
の位置づけであり、社会的信用が高い番組だ。その番組が8/30の放送で
奈良県立医大産婦人科教室を責め立てた
のだから、奈良県立医大産婦人科教室に与えたインパクトには、計り知れないものがある。
一方、辞退した若手医師についてだが、たった一人であっても、影響は大きい。
一人の医師の養成には最低でも10年かかるのだ。その医師が、その10年の間に扱うお産は年間100件を超え、場合によっては200件になる。つまり
一人の医師が産科に進まなかった
だけで、
1000人〜2000人の「未来の母親」が、掛かるべき産科の医師を失った
ことになるのだ。そして、受け入れる側の奈良県立医大産婦人科教室では、当然、研修医をシフトに入れて、産婦人科の運営を考えていたはずで、それが白紙に戻ったことになる。予定していた医師が一人減るわけで、これが奈良県立医大産婦人科教室の過重労働をさらに悪化させることは間違いない。
つまり
奈良県立医大産婦人科教室の医療スタッフの労働状況を更に悪化させ、「お産難民」を増やす
のが
奈良県立医大産婦人科教室と日本の未来の母親となるべき女性が被った今回の報道被害
なのである。
この被害は、決して小さくない。