寺内大吉 (original) (raw)

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寺内 大吉
1962年
誕生 (1921-10-06) 1921年10月6日日本の旗 東京都
死没 (2008-09-06) 2008年9月6日(86歳没)
職業 小説家
言語 日本語
国籍 日本の旗 日本
ジャンル 歴史小説
主な受賞歴 オール新人杯(1956年)直木三十五賞(1961年)毎日出版文化賞(1983年)
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寺内 大吉(てらうち だいきち、1921年10月6日 - 2008年9月6日)は、作家スポーツライター浄土宗僧侶。本名は成田 有恒(なりた ゆうこう)。

東京府荏原郡世田谷村(現在の世田谷区)生まれ。生家は浄土宗の大吉寺である。東京府立第六中学校(現東京都立新宿高等学校)卒業後、1945年大正大学宗教学部卒業。大学在学中から富沢有為男の下へ出入りして文学を学び始めると共に、生家である大吉寺の住職となる。

1955年に「逢春門」で第47回サンデー毎日大衆文芸賞、翌1956年には「黒い旅路」で第8回オール新人杯受賞。この頃に記者として取材に訪れた司馬遼太郎と知り合い、1957年には彼らと同人誌「近代説話」を創刊、1961年には同誌に掲載した「はぐれ念仏」で第44回直木三十五賞受賞。その後1983年には長編『念仏ひじり三国志』で第37回毎日出版文化賞受賞。関西文芸界の世話役として知られるようになる。

世間には『なまぐさ坊主作家』として知られるようになり、やがて小説を執筆する傍ら、スポーツ番組の解説者としてテレビに出演していたが、公の場に姿を現すときには必ずベレー帽をかぶっていたことから、いつしかベレー帽が寺内のトレードマークとなった。

また浄土宗僧侶としても数々の役職をこなし、1991年から2001年までは浄土宗宗務総長を務め、同時に学校法人浄土宗教育資団(現・学校法人佛教教育学園、佛教大学などを運営)の理事長も務める。宗務総長在任期は宗派内の知恩院派(京都)と増上寺派(関東)との融和につとめた。2001年からは増上寺第87代法主となる。

2008年9月6日午後5時12分、心不全のため東京都文京区の病院にて遷化。86歳没[1]。密葬は増上寺で執り行われた。法名は「天蓮社大僧正超誉上人英阿大吉有恒大和尚」。

作家としてだけではなくスポーツ評論家としても活躍しており、TBSキックボクシング中継(「YKKアワー キックボクシング中継」等)及び特別競輪決勝戦中継の解説者としてテレビに出演するなど、野球ボクシング競輪など多岐に亘る評論活動も行っていた経歴がある。1973年に放送された『ウルトラマンタロウ』(TBS系)の第2話「その時ウルトラの母は」・第3話「ウルトラの母はいつまでも」にボクシングジムの会長役として出演し、オープニングには、「特別出演」と記載されていた。

競輪は師匠にあたる富沢有為男に教えられたもので、富沢が福島県在住であったため度々現地を訪れ近隣の競輪場に足を運んだことから、会津(共に当時)の競輪場に愛着を持つようになる。やがて論客および評論家として、競輪の作品やエッセイを執筆するだけでなく選手のニックネームの名づけ人としても有名になった。また長らく南関東自転車競技会に「世話人」として名を連ね、毎年抽選で選ばれたファンと共に、日本競輪学校への日帰り旅行に同行するなどして、一般のファンとの直接対話にも努めていた。往時を知るファンや選手からは「(競輪)和尚」と呼ばれている。

競輪界では生前の功績を讃えるため、2008年より毎年12月に行われるKEIRINグランプリシリーズのS級戦を寺内大吉記念杯として開催している[2]。これは過去に立川競輪場で開催されていた同じ直木賞作家の阿佐田哲也杯を受け継いだ「冠杯」である。

初期はスポーツ小説やギャンブル小説など世俗的な作品を中心に執筆していたが、後年は仏教関係の入門書や小説が作品の中心となっていた。

いくつかの作品が原作として映画化やドラマ化されており、そのうち『競輪上人随聞記』は1963年に『競輪上人行状記』として西村昭五郎監督で、短篇『すぷりんたあ』(スポーツ文学全集収録)は、1968年に『セックス・チェック 第二の性』として増村保造監督で、それぞれ映画化されている。

しかし作家としての作品の多くは、僧侶としての知識を活かし、また独自の哲学や宗教観を強く反映したものが多い。その中でも『化城の昭和史』は、満州事変あるいは五・一五事件二・二六事件から始まる昭和初期以降の軍部独裁やそれに関連した様々な事象に対して、石原莞爾北一輝らの日蓮主義者がどのように関知したかを中心に、ゾルゲ事件刑死することとなる尾崎秀実に扮した主人公の視点から描いた、宗教関連小説の代表作ともいえる。

なおペンネームの由来は、「大吉寺内 成田有恒様」宛の郵便物を受け取った時、大吉と寺内を引っくり返すというアイデアから生まれたものである。

  1. ^ “寺内大吉氏が死去 直木賞作家で増上寺法主”. 共同通信. (2008年9月7日). https://web.archive.org/web/20080907214349/http://www.47news.jp/CN/200809/CN2008090601000606.html 2014年4月24日閲覧。
  2. ^ 寺内大吉記念杯施行のお知らせ 競輪ホームページ 2008年11月5日配信
第44回直木三十五賞
1930年代 - 1950年代(第1回 - 第42回)1930年代 第1回 川口松太郎鶴八鶴次郎』『風流深川唄』『明治一代女』 第2回 鷲尾雨工『吉野朝太平記』他 第3回 海音寺潮五郎『天正女合戦』『武道傳來記』 第4回 木々高太郎『人生の阿呆』他 第5回 該当作品なし 第6回 井伏鱒二ジョン萬次郎漂流記』他 第7回 橘外男『ナリン殿下への回想』 第8回 大池唯雄『兜首』『秋田口の兄弟』 第9回 該当作品なし 第10回 該当作品なし 1940年代 第11回 堤千代『小指』他/河内仙介『軍事郵便』 第12回 村上元三『上総風土記』他 第13回 木村荘十『雲南守備兵』 第14回 該当作品なし 第15回 該当作品なし 第16回 田岡典夫『強情いちご』他/神崎武雄『寛容』他 第17回 山本周五郎『日本婦道記』(受賞辞退) 第18回 森荘已池『山畠』『蛾と笹舟』 第19回 岡田誠三『ニューギニヤ山岳戦』 第20回 該当作品なし 第21回 富田常雄『面』『刺青』他 第22回 山田克郎『海の廃園』 1950年代 第23回 今日出海『天皇の帽子』/小山いと子『執行猶予』 第24回 檀一雄『長恨歌』『真説石川五右衛門』 第25回 源氏鶏太『英語屋さん』『颱風さん』『御苦労さん』 第26回 久生十蘭『鈴木主水』/柴田錬三郎『イエスの裔』 第27回 藤原審爾『罪な女』他 第28回 立野信之『叛乱』 第29回 該当作品なし 第30回 該当作品なし 第31回 有馬頼義『終身未決囚』 第32回 梅崎春生『ボロ家の春秋』/戸川幸夫『高安犬物語』 第33回 該当作品なし 第34回 新田次郎『強力伝』/邱永漢『香港』 第35回 南條範夫燈台鬼』/今官一『壁の花』 第36回 今東光『お吟さま』/穂積驚『勝烏』 第37回 江崎誠致『ルソンの谷間』 第38回 該当作品なし 第39回 山崎豊子花のれん』/榛葉英治『赤い雪』 第40回 城山三郎『総会屋錦城』/多岐川恭『落ちる』 第41回 渡辺喜恵子『馬淵川』/平岩弓枝『鏨師』 第42回 司馬遼太郎梟の城』/戸板康二『團十郎切腹事件』他
1960年代 - 1970年代(第43回 - 第82回)1960年代 第43回 池波正太郎『錯乱』 第44回 寺内大吉『はぐれ念仏』/黒岩重吾『背徳のメス』 第45回 水上勉雁の寺』 第46回 伊藤桂一『螢の河』 第47回 杉森久英『天才と狂人の間』 第48回 山口瞳江分利満氏の優雅な生活』/杉本苑子『孤愁の岸』 第49回 佐藤得二『女のいくさ』 第50回 安藤鶴夫『巷談本牧亭』/和田芳恵『塵の中』 第51回 該当作品なし 第52回 永井路子炎環』/安西篤子『張少子の話』 第53回 藤井重夫『虹』 第54回 新橋遊吉『八百長』/千葉治平『虜愁記』 第55回 立原正秋『白い罌粟』 第56回 五木寛之蒼ざめた馬を見よ』 第57回 生島治郎『追いつめる』 第58回 野坂昭如アメリカひじき』『火垂るの墓』/三好徹『聖少女』 第59回 該当作品なし 第60回 陳舜臣『青玉獅子香炉』/早乙女貢『僑人の檻』 第61回 佐藤愛子『戦いすんで日が暮れて』 第62回 該当作品なし 1970年代 第63回 結城昌治『軍旗はためく下に』/渡辺淳一『光と影』 第64回 豊田穣『長良川』 第65回 該当作品なし 第66回 該当作品なし 第67回 綱淵謙錠『斬』/井上ひさし『手鎖心中』 第68回 該当作品なし 第69回 長部日出雄『津軽世去れ節』『津軽じょんから節』/藤沢周平『暗殺の年輪』 第70回 該当作品なし 第71回 藤本義一『鬼の詩』 第72回 半村良『雨やどり』/井出孫六『アトラス伝説』 第73回 該当作品なし 第74回 佐木隆三復讐するは我にあり』 第75回 該当作品なし 第76回 三好京三子育てごっこ』 第77回 該当作品なし 第78回 該当作品なし 第79回 津本陽『深重の海』/色川武大『離婚』 第80回 宮尾登美子一絃の琴』/有明夏夫『大浪花諸人往来』 第81回 田中小実昌『浪曲師朝日丸の話』『ミミのこと』/阿刀田高『ナポレオン狂』 第82回 該当作品なし
1980年代 - 1990年代(第83回 - 第122回)1980年代 第83回 向田邦子『花の名前』『かわうそ』『犬小屋』/志茂田景樹『黄色い牙』 第84回 中村正䡄『元首の謀叛』 第85回 青島幸男人間万事塞翁が丙午』 第86回 つかこうへい蒲田行進曲』/光岡明『機雷』 第87回 深田祐介『炎熱商人』/村松友視時代屋の女房』 第88回 該当作品なし 第89回 胡桃沢耕史黒パン俘虜記』 第90回 神吉拓郎『私生活』/高橋治『秘伝』 第91回 連城三紀彦『恋文』/難波利三『てんのじ村』 第92回 該当作品なし 第93回 山口洋子『演歌の虫』『老梅』 第94回 森田誠吾『魚河岸ものがたり』/林真理子『最終便に間に合えば』『京都まで』 第95回 皆川博子『恋紅』 第96回 逢坂剛カディスの赤い星』/常盤新平『遠いアメリカ』 第97回 白石一郎『海狼伝』/山田詠美『ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー』 第98回 阿部牧郎『それぞれの終楽章』 第99回 西木正明『凍れる瞳』『端島の女』/景山民夫遠い海から来たCOO』 第100回 杉本章子『東京新大橋雨中図』/藤堂志津子『熟れてゆく夏』 第101回 ねじめ正一高円寺純情商店街』/笹倉明『遠い国からの殺人者』 第102回 星川清司『小伝抄』/原尞私が殺した少女』 1990年代 第103回 泡坂妻夫『蔭桔梗』 第104回 古川薫『漂泊者のアリア』 第105回 宮城谷昌光『夏姫春秋』/芦原すなお青春デンデケデケデケ』 第106回 高橋義夫『狼奉行』/高橋克彦『緋い記憶』 第107回 伊集院静『受け月』 第108回 出久根達郎『佃島ふたり書房』 第109回 髙村薫マークスの山』/北原亞以子『恋忘れ草』 第110回 佐藤雅美『恵比寿屋喜兵衛手控え』/大沢在昌新宿鮫 無間人形』 第111回 中村彰彦『二つの山河』/海老沢泰久『帰郷』 第112回 該当作品なし 第113回 赤瀬川隼『白球残映』 第114回 小池真理子』/藤原伊織テロリストのパラソル』 第115回 乃南アサ凍える牙』 第116回 坂東眞砂子『山妣』 第117回 篠田節子『女たちのジハード』/浅田次郎鉄道員(ぽっぽや)』 第118回 該当作品なし 第119回 車谷長吉赤目四十八瀧心中未遂』 第120回 宮部みゆき理由』 第121回 佐藤賢一王妃の離婚』/桐野夏生『柔らかな頬』 第122回 なかにし礼長崎ぶらぶら節
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