講道館杯全日本柔道体重別選手権大会 (original) (raw)

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講道館杯全日本柔道体重別選手権大会(こうどうかんはいぜんにほんじゅうどうたいじゅうべつせんしゅけんたいかい)は、毎年11月頃に開催される体重別柔道日本一を決定する大会である。一般に、略して講道館杯と呼ばれる事が多い。

同じく体重別で行われる全日本選抜柔道体重別選手権大会や体重無差別のみで行われる全日本柔道選手権大会と共に日本国内におけるビッグタイトルの1つであり、本大会の結果から冬季ヨーロッパ国際大会の出場メンバーが選出・決定される。

小松製作所が特別協賛を務める。

1976年より実施されてきた「国際試合強化選手選考会」が1985年に「講道館杯全国柔道体重別選手権大会」に改められ、1996年に当項目名となった。

女子は1979年に「全日本女子柔道強化選手選考会」として開始されて、1995年には「全国女子柔道体重別選手権大会」と名称が変更され、2003年からは別途開催されていた女子の体重別選手権が男子の講道館杯と統合されることになり、同時開催となった(但し女子は初日、男子は2日目と男女別々の日に開催されていたが、2010年より初日、2日目ともに男女同時に開催されることになった)[1]

2020年10月開催の今大会は、新型コロナウイルスの影響により、4月から延期になっていた選抜体重別を兼ねる大会とになった[2]。なお、大会前日に選手全員に対してスマートアンプ法でコロナ検査を行ったところ、全員陰性の結果を得られた[3]。なお、当大会の60 kg級決勝での誤審騒動がきっかけとなり、2021年の大会よりカラー柔道衣が導入されることになった[4]

「<#2020年大会の誤審騒動>」も参照

2021年11月に開催予定だった今大会は新型コロナウイルスの影響で、2022年1月に甲府での平日開催に延期された[5]。しかし、大会2日前になって新型コロナウイルスの影響で選手の欠場が相次いだため、選考の公平性が確保できないと判断されて中止になった[6]。2022年5月には1月に中止となった講道館杯の代替大会として、全日本強化選手選考会が講道館で開催された[7]

[[icon]](/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%82%A4%E3%83%AB:Wiki%5Fletter%5Fw%5Fcropped.svg) この節の加筆が望まれています。 主に: 変更年 (2020年10月)

かつては講道館柔道試合審判規定で実施されていたが、のちに国際柔道連盟試合審判規定で実施されている。

決勝のみNHK BS1で放送。過去にはフジテレビCSで放送されたことがあった。

新型コロナウイルス感染症流行下でおこなわれた、2020年大会の60 kg級決勝では誤審騒動が起きた。この試合は解説が木村昌彦NHK-BSでテレビ生放送されていた[8][9]国士舘大学小西誠志郎センコー米村克麻が対戦すると、米村が隅返で先に技ありを先取。その後、袈裟固で小西が抑え込むも、電光表示板の担当者が抑え込んでいる選手を米村と勘違いしたために10秒経過した時点でブザーが鳴ってしまい、主審が小西による一本を宣告した。しかし、小西による抑え込みは8秒で米村から遠い脚が下から近い脚が上から絡まって解けていたとビデオ判定で判断されて技ありは認められなかった。主審は一本は取り消し、抑え込みの「解けた」も宣告した[10]。これに対して国士館大学監督の吉永慎也が猛抗議して試合が5分ほど中断されると、小西が上で抑え込みが解けた状態から「よし」で再開され[10]、すぐに脚を抜いてまた抑え込むがここでも8秒で解けたため[8]、結果として小西は技ありを取れず、先に取った技ありを守り切った米村が優勝することとなった[11]。講道館ルールでは上から脚を掛けても抑込技は解けたとならないが、この大会の国際柔道連盟ルールでは解けたとなる[12]。また、書籍『柔道のルールと審判法』や資料『国際柔道連盟試合審判規定変更点について2020年1月13日より有効』ではこのルールについて説明している箇所では下から挟んでる場合と上から挟んでいる場合の図を載せているが、この大会当時、全日本柔道連盟(全柔連)のサイトからダウンロードできた資料『2018年~2020年 国際柔道連盟試合審判規定』(日本語版)では受から遠い脚が上から近い脚が下から挟んでいる図を2枚載せていた[12][13][14][15]。両選手にビデオ判定の裁定について説明はなく、再開から一時、掲示板に小西に技あり1とも表記されたため混乱は続いた[16]。この混乱に対して審判委員長の大迫明伸は、柔道は相撲などと違って、審判団の裁定に対して選手に説明するルールになっていない。そのため、当事者にとって不明瞭な進行になるなど、「色んな残念なことが一度に重なってこのようなことになってしまった」と釈明した。なお、小西はこの件について次のようにコメントした。「(審判から)何も説明がなくて、試合中ずっと不安だった」「(先に)ポイントを取られたことは事実。悔しいけど、審判に(ポイントが)ないと言われたら、ない。(負けを)受け止めて、また一からやり直したい」[11][17]

その後に審判委員会、強化委員会、大会事業委員会、アスリート委員会の4委員会が試合を改めて検証した結果、中断後に小西が抑え込みを再開した際にカウントするのが3秒遅く始められていたため実際は11秒抑え込んでおり、この時点で小西に技ありが付与されるべきで、ポイントで並んだ両者はその後延長戦に入るべきだったが、すでに時間が経過しており、再試合は難しいとした。そのため全柔連は、「大会運営上の誤謬を認め、決勝戦の勝敗がついていなかったものとし、特例的かつ限定的に遡って両者優勝とすることで4委員会の意見が一致した」との報告を受け入れて、両者を優勝とすることに決めた。専務理事の中里壮也は「日本最高峰の柔道大会の運営に不備があり、選手や関係者にご迷惑をおかけし、多くの柔道ファンの方々に混乱を招く事態となり、心よりお詫び申し上げます」と陳謝した。また、4委員会はカラー柔道衣の導入、審議後の場内アナウンス制度の導入も提言した[18][19]。また、11月20日、全柔連はYouTubeの全柔連TVチャンネルで、小西の最初の抑込は時計係からは選手の腰の色紐が見えづらかった、カウントの開始が4秒遅れた、副審と審判委員はタイマー表示9秒の段階で「解けた」に気付いたがインカムで指示する前にブザーが鳴ってしまった、抑込開始からブザーまで14秒経っていたため主審と選手には20秒で一本の印象を与えた可能性がある、8秒ではなく7秒で解けていたと判断したことを明らかにした。さらには主審・副審と審判委員の合議では解けた後「待て」相当の時間が経過したと判断し「はじめ」とした、審判委員長を加えた合議で選手が立ち上がったあと寝技から再開できる規定はないが「はじめ」からでは小西に不利益が生じるとし第21条「規定に定められていない事態」を適用し解けた体勢から再開するとした、主審にビデオを見せて正しく再開できるようにしたが小西の首の抱え方が不十分であった、との見解を明らかにした。4委員会は、開始線の設置、国際柔道連盟ルール理解の徹底、タイマー操作の精度向上とリカバリープランの策定も提言したことを明らかにした[10]。11月29日現在、全柔連のサイトからダウンロードできる国際柔道連盟試合審判規定は下から脚を挟む図が2枚掲載されたままである[20]

全日本柔道連盟は12月3日、オンライン理事会を開き、12月13日の東京オリンピック66 kg級代表者決定戦である阿部一二三丸山城志郎2021年全日本選抜柔道体重別選手権大会、講道館杯でカラー柔道衣を導入することを承認した。全日本選手権と皇后盃全日本女子選手権は従来通り、白道着のみで行われる。[21][4]

  1. ^ 「講道館杯全日本柔道体重別選手権大会」近代柔道 ベースボール・マガジン社、2011年1月号、87頁
  2. ^ 66キロ級代表選考は12月で調整 丸山と阿部一、GS東京で―柔道男子 時事通信 2020年7月2日
  3. ^ コロナ検査は選手全員陰性 山下会長「貴重な財産、経験に」―講道館杯柔道 時事通信 2020年11月1日
  4. ^ a b 青の柔道着導入を承認 選抜体重別と講道館杯―全柔連 時事通信 2017年12月3日
  5. ^ 講道館杯、来年1月に延期 柔道 時事通信 2021年9月14日
  6. ^ 柔道・講道館杯、大会2日前に中止決定 コロナ欠場急増で代表選考公平性「困難」 デイリースポーツ 2022年1月15日
  7. ^ 田嶋ら優勝 柔道男子強化選手選考会 時事通信 2022年5月8日
  8. ^ a b 「テレビ生放送中の60kg級決勝で前代未聞のトラブル発生」『近代柔道』第42巻第12号、ベースボール・マガジン社、2020年11月20日、22頁。
  9. ^NHK 番組表”. NHK (2020年10月31日). 2020年11月5日閲覧。
  10. ^ a b c YouTube全柔連TVチャンネル (20 November 2020). 【経緯説明】2020年度講道館杯60㎏級決勝戦における混乱について. YouTube (VOD). 全日本柔道連盟. 2020年11月29日閲覧。
  11. ^ a b 柔道“不可解裁定”で大混乱…審判長がミスを陳謝「残念なこと重なった」生中継で失態 デイリースポーツ 2020年10月31日
  12. ^ a b 小俣幸嗣、松井勲、尾形敬史『詳解 柔道のルールと審判法 2004年度版』大修館書店(原著2004-8-20)、147頁。ISBN 4-469-26560-8
  13. ^ 渡辺崇 (2020年1月13日). “国際柔道連盟試合審判規定変更点について2020年1月13日より有効”. 全日本柔道連盟. p. 10. 2020年11月3日閲覧。
  14. ^ 全日本柔道連盟. “2018年〜2020年国際柔道連盟試合審判規定” (PDF). 全日本柔道連盟. p. 28. 2019年3月1日閲覧。
  15. ^ 全日本柔道連盟. “2018年〜2020年国際柔道連盟試合審判規定” (PDF). 全日本柔道連盟. p. 28. 2020年11月1日閲覧。
  16. ^ 末継智章「時計係ミス、主審間違い気づかず…混乱の初V「気まずい」米村 柔道講道館杯」『西日本スポーツ西日本新聞社、日本・福岡市、2020年11月1日。2020年11月6日閲覧。
  17. ^ 審判団の操作ミス重なり大混乱 審判委員長は陳謝も判定ミスは否定 柔道講道館杯 スポーツニッポン 2020年10月31日
  18. ^ 柔道・講道館杯の不可解裁定、ミス認め両者優勝 無効の抑え込みは「技あり」と結論 デイリースポーツ 2020年11月20日
  19. ^ 誤審混乱で全柔連謝罪「心よりおわび」再発防止策も 日刊スポーツ 2020年11月20日
  20. ^ 全日本柔道連盟. “2018年〜2020年国際柔道連盟試合審判規定” (PDF). 全日本柔道連盟. p. 28. 2020年11月29日閲覧。
  21. ^【柔道】「丸山城志郎 VS 阿部一二三」もブルー柔道着を導入 講道館杯の誤審騒動で再発防止へ”. 東スポWeb. 東京スポーツ (2020年12月3日). 2020年12月6日閲覧。