夏目漱石 幻の原稿でた! 新潮 2013年 02月号 (original) (raw)

2013/01/10

夏目漱石の幻の原稿が発見されたようです。

「満州日日新聞」に載ったもの。

「ぜこー」こと中村是公が南満州鉄道の総裁で(1)、

「金ちゃん」呼ばわりしていた夏目漱石(本名、夏目金之助)を

満州に呼び出した旅行がきっかけです。

発見された新聞記事は、

日本に帰ってきたら

伊藤博文が暗殺されてびっくり。

総裁「ぜこー」が暗殺現場に一緒にいて、

撃たれた伊藤博文を抱えていたと聞いて

またまたびっくり、

という記事です。

ちょっと

本題から外れてしまいますが、

夏目漱石の人間関係については

こちらの本がすごいおすすめ(1)。

夏目漱石の作品が大好きな人はもちろん

あまり良く知らない人でも

夏目漱石本人に萌えてしまうのが(1)です。

ついに4巻で完結していますが

これを機会につよくプッシュしておきます。

大変面白い作品です。

(2)も大変素晴らしい作品です。

愛蔵版は夏目漱石だけですが、

全5部で、森鴎外、石川啄木を始めとして

明治の時代を本当に上手く描いている作品です。

さて、

朝日がこの記事を書くとこんな感じ。


漱石、伊藤博文暗殺に強い驚き 全集未収録の寄稿発見
朝日新聞デジタル 2013年1月7日5時39分

http://www.asahi.com/culture/update/0107/TKY201301060438.html
【白石明彦】夏目漱石が伊藤博文の暗殺を知った時の驚きを、旧満州(中国東北部)の「満州日日新聞」に寄稿した文章を作家の黒川創さんが見つけた。「漱石全集」(岩波書店版)に未収録で、研究者にも知られていなかった。

寄稿文を取りこんだ黒川さんの小説「暗殺者たち」が7日発売の「新潮」2月号に掲載される。

漱石は1909年9~10月に旧満州と朝鮮を旅行した。寄稿は「韓満所感」の題で11月5、6日、上下2回に分けて満州日日新聞に掲載された。分量は400字詰め原稿用紙にして計7枚。伊藤は漱石が帰国した後の10月26日、旧満州のハルビン駅で朝鮮の独立運動家安重根(アンジュングン)に銃撃された。


実際に発見された「満州日日新聞」記事の

内容はこんな感じです。


夏目漱石「韓満所感」(抜粋)
MSN産経ニュース 2013.1.7 14:10
http://sankei.jp.msn.com/life/news/130107/art13010714130007-n1.htm

■夏目漱石「韓満所感」(抜粋)

「昨夜久し振りに寸(すん)閑(かん)を偸(ぬす)んで満洲日日へ何か消息を書かうと思ひ立つて、筆を執りながら二三行認(したた)め出すと、伊藤公が哈(は)爾(る)浜(ぴん)で狙撃されたと云ふ号外が来た。哈爾浜は余がつい先達て見物(けぶ)に行つた所で、公の狙撃されたと云ふプラツトフオームは、現に一ケ月前(ぜん)に余の靴の裏を押し付けた所だから、希有(けう)の兇(きょう)変(へん)と云ふ事実以外に、場所の連想からくる強い刺激を頭に受けた」

「満韓を経過して第一に得た楽天観は在外の日本人がみな元気よく働いてゐると云ふ事であつた」

「歴遊の際もう一つ感じた事は、余は幸にして日本人に生れたと云ふ自覚を得た事である。内地に跼(きょく)蹐(せき)してゐる間は、日本人程(ほど)憐(あわ)れな国民は世界中にたんとあるまいといふ考に始終圧迫されてならなかつたが、満洲から朝鮮へ渡つて、わが同胞が文明事業の各方面に活躍して大いに優越者となつてゐる状態を目撃して、日本人も甚だ頼(たの)母(も)しい人種だとの印象を深く頭の中に刻みつけられた

同時に、余は支那人や朝鮮人に生れなくつて、まあ善かつたと思つた。彼等を眼前に置いて勝者の意気込を以て事に当るわが同胞は、真に運命の寵(ちょう)児(じ)と云はねばならぬ」(※原文の旧字体は新字体に変更し、ふりがなは一部にとどめた)


幻の原稿を含んだ小説はこちら。

私は思わず雑誌を買いました。

クリックするとAmazonに飛びます。

7ページからの

「暗殺者たち」の中に夏目漱石の随筆は

掲載されております。

序文はこのようになっております。

「演題は「ドストエフスキーと大逆事件」だが、

この作家は、夏目漱石、そして安寿根について話しだす」

(黒川創「暗殺者たち」序文より)

そして作家がサンクトペテルブルグ大学日本語科の

学生に講義をするという形で

話は進んでいきます。

本文中の「満州日日新聞」は

横向きで新聞そのままコピーの

旧字体なので読みずらいです。

その後、小説は安重根、そして

幸徳秋水らの大逆事件に話はつながっていきます。

小説となっておりますが

まるで講義録のようです。

新聞記事に非常に類似する内容なので

あまり小説として手を加えていない印象です。

産経がかくとこんな記事になります。


夏目漱石「幸にして日本人に生れた」
2013.1.9 03:06 [産経抄]
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130109/plc13010903060006-n1.htm

明治41(1908)年に書かれた夏目漱石の『三四郎』の小川三四郎は上京する列車で「広田先生」と出会う。駅で西洋人夫婦を見かけた広田は「御互は憐(あわ)れだなあ」と、つぶやく。「こんな顔をして…日露戦争に勝って、一等国になっても駄目ですね」とも言う。

▼三四郎は「これからは日本も段々発展するでしょう」と反論するが「亡(ほろ)びるね」と切って捨てる。「漱石は後の大戦の結果を読んでいた」として、自虐的史観の持ち主がしばしば引用する場面だ。「日露戦争に反対した平和主義者」だという「極論」もある。

▼しかしその1年後の明治42年に漱石が広田と逆の考えを書いた随筆が見つかった。昨日も少し触れた「満洲日日新聞」に掲載の「韓満所感」である。漱石はこの年の9月から約1カ月半満州や朝鮮を旅行する。その印象を記したものだ。

▼それによると、日本の内地で跼蹐(きょくせき)(肩身狭く暮らす)している間は「日本人程憐れな国民は世界中にたんとあるまい」と考えていた。だが満州や朝鮮で「文明事業の各方面に活躍」しているのを見て「日本人も甚(はなは)だ頼母(たのも)しい人種だ」との印象を刻みつけられた。そんなふうに書く。

▼日露戦争から4年ほど後のことだ。多くの日本人が新天地で、日本のためだけでなく当地の発展のためにも必死で働いていた。その姿に漱石は素直に自虐的日本人観を捨てたと見ていい。「幸にして日本人に生れたと云う自覚を得た」と胸を張ってもいる。

▼そんな在外の日本人たちも戦後「植民地主義の先兵」とされてしまった。いまだにそのフィルターを通してしか歴史を見られない人たちも多い。それに比べ、時代が違うとはいえ文豪の視線は確かなものに思えるのだ。



漱石の全集未収録随筆を発掘 作家の黒川創さんが小説に
MSN産経ニュース 2013.1.7 14:02

http://sankei.jp.msn.com/life/news/130107/art13010714090006-n1.htm

文豪、夏目漱石(1867~1916年)が新聞に寄稿した全集未収録の随筆が見つかったことが6日、分かった。初代韓国統監を務めた伊藤博文の暗殺などに触れた内容で、研究者は「初めて見る貴重な資料だ」と評価している。作家の黒川創(そう)さん(51)が国立国会図書館などから発掘した。7日発売の文芸誌「新潮」2月号に、随筆の執筆背景などを盛り込んだ黒川さんの小説「暗殺者たち」の一部として全文掲載される。

随筆は「韓満所感」と題し、明治42(1909)年11月5、6日付「満洲日日新聞」に2回掲載された。1面トップの扱いで、計約2800字の分量がある。同紙は、日露戦争後に日本の租借地となった満州(現在の中国東北部)の大連で発行されていた邦字新聞。新潮社によると、随筆は全集や単行本には収録されておらず、約100年間忘れられた作品になっていた。

伊藤博文暗殺の報に接した驚きに始まり、満州や朝鮮で活躍する日本人に頼もしい印象を受けたことが記されている。漱石は同年9~10月、親友の満鉄総裁、中村是公の招きで満州・朝鮮各地を旅行していた。

黒川さんは平成22年、韓国開催のシンポジウムに参加した際、伊藤を暗殺した安重根に関する現地の資料集に随筆の一部が収録されているのを発見。国会図書館所蔵の満洲日日新聞のマイクロフィルムで全体を確認した。黒川さんは「政治など天下国家の問題を正面から論じることを避ける態度が明らかで、漱石の低(てい)徊(かい)趣味(俗事を避け、余裕を持って人生を眺める態度)がよく出ている」と話す。

東北大付属図書館の「漱石文庫」の研究に関わってきた仁平道明・和洋女子大教授(国文学)は「漱石のアジア観を考える時に重要な意味を持つ部分もあり、貴重な資料だ」と今回の発見に注目しており、「漱石全集」を刊行する岩波書店も「全集改訂時にぜひ収録したい」と話している。


未だに非常に人気の高い夏目漱石。

わたしも全集を読破して、

つい先日もまた文庫版の全集を買ってしまいました(3)。

全集を手に入れづらい森鴎外とは大違い。

プロアマ問わず、

日本国中の夏目漱石ファンが

注目する幻の原稿発掘と

なりました。

ご参考になりましたら幸いです。

(1)先生と僕 ―夏目漱石を囲む人々

ああ、ついに完結しちゃいましたね。

4巻は最初のページにちょっとびっくりしちゃいますけど、

そんなシーンは続きません。

クリックするとAmazonに飛びます。

記事でも出てきた「ぜこー」の男っぷりは相変わらず。

私はこのマンガで夏目漱石の人間関係の認識が

180度変わってしまいました。

良い意味でね(笑)。

みんな、夏目漱石先生のこと好きすぎ。

(2)もうひとつはこれ。

夏目漱石その人を語るにはこのマンガは欠かすことが出来ません。

愛蔵版で、大きくなって、しかもカラー化されております。

買う前までは、

「同じ本買うなんてなんてバカだろう」

と思いながら買いましたが、

中を見てみて、大正解でした。

私が持っていたのはこちら。1987年版。

文庫版も出ていますが、

個人的には愛蔵版をお勧め致します。

そして、以前のバージョンを持っている方でも

愛蔵版は興味があれば持っていて絶対に損はない!

そう断言できます(…ですよね、ちょっと弱気)。

(3)文庫版夏目漱石全集

本当は岩波のハードカバーのが欲しいところです。

でも、置くスペースないし。

なぜか私の家には

「こころ」だけでも三冊あります。

実家にも二,三冊あるはず。

なんでだ?

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