第34回MPC音楽賞授賞式|ミュージック・ペンクラブ・ジャパン MPCJ (original) (raw)

写真 本日はありがとうございます。何よりもこの賞は私と同じ書き手の方が選んでくださったということで大変嬉しいですし、栄誉なことだと思います。これからもなるべく嫌わられないように、感じよく生きていこうと思った次第です(会場から笑い)。あとがきを読んで頂いた方はご存じですが、この本(現代音楽史)を書いた2020年に私は一年間アメリカに行くはずでした。それがコロナ禍で最初の半年間日本に留まることになり、(今回の受賞作の『現代音楽史』は)その折に書きました。中央公論の小野さんと松室さんが編集を担当してくださりました。その後の半年はアメリカで過ごしたのですが、その時に今回(ポピュラー部門で)受賞されている大和田俊之さんが、同じ大学の近くのアパートにおられました。彼は家族で来ていて、私は一人だったものですから、何よりアメリカで月に一度、彼の家で美味しいものを食べさせてもらうのが、唯一の喜びでした。この本を書いた後も私はいろいろとやっていて、今新しい本がだいたい8割がた書けており、たぶん5月中旬に脱稿して夏過ぎには刊行される予定です。モーツァルトからワーグナー、ドビュッシー、日本の現代音楽までの大変面白い本ですので、出来たらまた来年もよろしくお願いいたします(笑い)。今回はまことにありがとうございました。

写真 この度は栄誉ある賞をいただきありがとうございました。まさか檀上でご挨拶するとは思っていなかったものですから少々戸惑っております。私自身音楽をたくさん聴いていますが、現代音楽はそれほど親しんでいるわけではないので果たして自分に担当できるか心配でしたが、現代音楽を知らない人でもとても面白く読めますし、歴史に関心があるとより興味を持っていただけるはずです。今日ではユーチューブなどで様々な音源を聴くことができます。作曲家の興味深い音楽を実際に聴ける。現代音楽の面白さや可能性が感じられる本になりましたので、一人でも多くの方にこの本を読んでいただけたらと思っております。どうもありがとうございました。

●功労賞

濱田 滋郎(音楽評論家)

フラメンコ歌手 濱田 吾愛様(故 濱田 滋郎氏ご息女)

写真 ただいま表彰されました濱田滋郎の娘の濱田吾愛と申します。この度の受賞のことを知り、おそらく天国の父も微笑んでいることと思います。音楽を文章にするということは、私より皆さまの方が本当によくご存じだと思います。先ほどフラメンコ歌手とご紹介いただきましたが、私自身も音楽ライターとして活動していた時期があり、その過程でその難しさを実感し、そしてまた醍醐味も味わってまいりました。父はまさに最後の日まで執筆を続け、途中の原稿もたくさんありました。ご同席の皆さまにもご面倒をおかけしたのではないかと思いますが、最後の日まで執筆の情熱を失わないまま、天国に旅立って行ったと思いますので本日の受賞は本当にありがたく、天国の糧にさせていただいていると思います。2020年のちょうどコロナ禍が始まる直前に私と父の二人でスペイン旅行をいたしました。その時にクラシック・ギターを好まれる方ならばご存じのアンドレス・セゴビアの生地リナレスを旅し、そこで二人で四葉のクローバーを探しました。その時の想い出を父はスペイン語の詩に綴っており、それが日記の中にひっそりと記されていました。私がそれに節をつけましたので、ここでご披露させていただければと思います。
濱田氏が歌う。
Busqué el trebol de cuatro hojas
En un parque de Linares
Pero encontrarlo no pude
Buen recuerdo pa llevarte

四つ葉のクローバー探したよ
リナレスの公園で
だけど見つからなかったよ
よいお土産と思うたに

本日は本当にありがとうございました。

■ポピュラー部門

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●最優秀作品賞

山田参助とG.C.R.管絃楽団『大土蔵録音 2020』

プロデューサー 保利 透様

写真 この度は大変名誉な賞を我々の作品にいただけるということで、感謝と感激にたえません。戦前の録音風景の再現ということで、大土蔵録音は10年の試行錯誤を経まして、企画段階から協力していただいた演奏者やスタッフの皆さん、彼らの力が集結したレコード芸術だと思っております。この場をお借りしまして、演奏者を始め、関わった方々に感謝を述べるとともに、この賞は全員が受賞したものと思っておりますので、皆に成り代わりまして、厚く御礼を申し上げます。
CD発売後に瀬川昌久さんからお電話がありまして、とても褒めていただきました。「次は女性ヴォーカルも聴きたいのでぜひ」とお言葉をいただきまして、早速次を収録したのですけれども、瀬川先生は昨年末にお亡くなりになってしまいまして、それは叶わないこととなってしまいました。このような大変名誉な賞をいただいたのも、瀬川さんの我々への日頃からの叱咤激励と共に、天国の瀬川さんからのプレゼントなのではと思っております。
戦前の録音作業は現代のマルチ録音と違いまして、あとで修正ができないわけですから、限られた選択をせねばならないという事例もありまして、それはまるで当時の録音ディレクターの追体験をしているかのようでした。先人たちの飽くなき探究心、そして苦労のおかげでテクノロジーの進化があったんだと改めて感じました。 この受賞を励みに、レコード文化をテーマとした企画を進めていきたいと思いますので、皆様どうぞご指導ご鞭撻のほどどうぞよろしくお願い申し上げます。今日は本当にありがとうございました。

歌手 山田 参助様

写真 山田参助と申します。この度は素晴らしい賞をいただきまして、誠にありがとうございます。私たちの作ったCDが現代における戦前音楽への向き合い方、聞かれ方、演奏され方の新しい提案の一つとして皆様に楽しんでいただけること、新しい提案の一つとして、皆様に受け止めていただけることを誠に喜ばしく思っております。誠にありがとうございました。

音楽監督 青木 研様

写真 音楽監督の青木と申します。私は戦前の音楽が好きでこの世界に入り、非常に楽しくやらせていただきましたが、まさか賞とかは全く考えていなかったので、本当にびっくりして、ちゃんと聞いていただいている方がいるんだなと思いまして、とても嬉しく思いました。また作りたいと思います。どうもありがとうございました。

●イベント企画賞

フジロック(主催:スマッシュ)と
スーパーソニック(主催:クリエイティブマンプロダクション)

㈱スマッシュ 代表取締役社長 小川 大八様

写真 このような歴史のある賞を頂きまして驚きと光栄を感じております。思い起こせば昨年の夏、延期されたオリンピックの後、全国に感染拡大が広がりまして、多くの野外音楽フェスティバルが中止になりました。幸いにもフジロックは新潟県、開催地である湯沢町に強く支えられて無事に開催することが出来ました。ただ開催にあたって多くの批判を受けました。同様に多くの賛同も受けました。主催者、出演者、スタッフ、関係者、皆が大きな葛藤を抱いたことも事実です。でもこうやって時が経って、このような賞を頂けることは救われる思いが致します。
フジロックは今年も苗場スキー場で開催致します。本日新人賞を受賞された角野さんにも出演して頂きます。まだまだコロナとの闘いは続きますが、周りの環境は少しずつ良くなっていると思います。この受賞を励みにして今後とも精進していきたいと思います。本日はありがとうございました。

㈱クリエイティブマンプロダクション 代表取締役社長 清水 直樹様

写真 歴史ある賞を頂き、光栄に思います。弊社クリエイティブマンが主催するサマーソニックは2000年から続いていまして、2019年に20周年を迎え、30万人を擁し、そこで一度、オリンピック・イヤーが翌年ということで休みになり、今回受賞させて頂いたスーパーソニックはコロナ禍に於いての特別な1回だけのフェスティバルという事で開催致しました。弊社だけでなくスマッシュさんもそうですが、洋楽プロモーターはここ2年以上、海外アーティスを全然呼べず、音楽界のJ-LODという支援策にも入れてもらえず、当初、本当にみな苦労していました。ですので、そういったプロモーターが集まって、老舗のウドーさんとかキョードー東京さんなど、全てにお声がけをしまして、10社でIPAJ(International Promoters Alliance Japan)という新しい団体を作って、皆で音楽業界のために闘い、J-LODの支援策にも入り、半年~1年間途絶えていた海外アーティスの来日が幕開けになるという重要なことを背負いながらスーパーソニックを昨年実施しまして、感染者もなく終わることが出来ました。
これを励みにして、今年からサマーソニックもまた新しくスタートします。海外からはたぶん40~50アーティストを呼んでの開催となると思います。これを機にまた洋楽プロモーターが一丸となって、海外のアーティストと日本のアーティストの橋渡しを含めて音楽業界のために頑張っていきたいと思います。今回は本当にありがとうございました。

●新人賞

角野隼斗(ピアニスト)

角野 隼斗様

写真 この度はこのような栄誉ある賞を頂きまして光栄に思っております。本当にありがとうございます。僕は1995年生まれで、ゼット世代とかミレニアル世代とかの間ぐらいらしいのですが、幼い頃からインターネットがごく当たり前にあった世代で、中学の頃からネットに向き合うのがごく普通の時代でした。元々は3歳の頃からクラシックで育っているわけですが、今のYou Tubeの発想にしても、クラシックをずっと聞きながらも、ジャンルにとらわれない自分のアイディアをYou Tubeや色々な所で出す活動を行ったり、色々な方々とのコラボレーションを行ったりしていて、そういった活動が、今回のポピュラー部門での受賞ということで評価して頂けたのは嬉しい限りです。
新人賞と言う言葉通り、まだまだ新人で学ぶことは沢山あると思っておりますし、音楽人生は始まったばかりですので、これから色々なことを吸収、勉強して次の世代に向けて、自分の世代が今の時代に何ができるかということを考えつつ、精進していきたいと思っております。この度はまことにありがとうございました。

●著作出版物賞

大和田俊之著『アメリカ音楽の新しい地図』(筑摩書房)

大和田 俊之様

写真 この度は栄誉ある賞を頂きましてありがとうございます。ちょうどこの本の最後の2章に携わっていた2020年に、10年ぶりのサバティカルでアメリカ、ハーバード大学に籍を置いていました。コロナ禍で大学の建物に入ることもできず、リアルに人と会えたのは同じ時期にいらした沼野さん(クラシック研究評論・出版部門で今回受賞された沼野雄司氏)ぐらいで、クラシック音楽がご専門の沼野さんにはヒップホップやBTSなど軽薄な音楽の話にずいぶん付き合って頂きました。
この本自体はトランプ大統領の当選を受けて、現代アメリカの音楽シーンを描写したものです。最後の章はパンデミックとアメリカ社会をテーマにしようと思い、100年前、1918年のスペイン風邪流行時にアメリカの音楽業界がどのように反応したかを調べて書きました。大学の図書館には入れないので、ラップトップの小さい画面を通して1918年の新聞や定期刊行物をひたすらデータベースで読むという毎日でした。その中で、自動演奏ピアノの売れ行きが良くなったり、「パンデミックでコンサートに足を運べなくても自動演奏ピアノさえあれば良質な音楽に触れられる」といった当時の広告などを発見したのですが、コロナ禍で実際のキャンパスを訪れることなくリモートでこうした記事に触れられたのも、何か100年前の人々の行動を反復しているような気分になりました。
この本を担当された山本充さんとは20年来の付き合いで、初めて会ったとき僕は大学院生で、山本さんは青土社の雑誌『ユリイカ』の編集者でした。その後、山本さんは編集長となり、一時代を築かれるのですが、その後も何度も声をかけていただき、『ユリイカ』に寄稿する機会を得ました。本当はそのときに1冊本を出すべきだったのですが、私の怠惰ゆえにタイミングを逃してしまい・・。こうして漸く一緒に本を作ることができて、しかも賞までいただき、本当に嬉しく思います。本日は誠にありがとうございました。

㈱筑摩書房第一編集室 山本 充様

写真 この度は栄えある賞を頂きましてどうもありがとうございます。この本の舞台裏を少しお話すると、2016年のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプが当選するという衝撃から、これは歴史的事件になるというので、今後のアメリカ音楽について大和田さんに解説して頂こうということから始まりました。何故かというと、大和田さんが2011年に出された前著である「アメリカ音楽史」において、擬装をキーワードに、白人が黒人の模倣をしてショウを行うミンストレル・ショウから発展を遂げていくという、アメリカ音楽史のダイナミックな見取り図を提示していまして、最後のところでは、今後移民として増え続けるラティーノ達によるラテン系がせり出してくるのではないかと書かれていました。それでその流れを遮るように、メキシコ国境に壁を作るとか、これ以上移民を入れないとか言い出す大統領が出てきて、この構図が果たしてどうなるのかという事が大和田さんに書いて欲しかったところです。
それでwebちくまと言う媒体で連載が始まったのですが、第1回ではテイラー・スウィフトを取り上げ、複雑な政治力学や音楽表現、メディアとの絡みを理路整然と説かれていて、この連載は著作になると思いました。そして、その予感は裏切られなかったのですが、誤算がありまして、論説にせよ注釈にせよ、言いたいことの密度が高くて徐々に連載のペースは落ちていき、4回目くらいからは毎月の連載が維持できなくなっていって、最終回の二つ前のカーディー・Bの回から、ひとつ前のBTSの回までは1年も空いてしまい、原稿を待っていた記憶があります。
あとはトランプ大統領が交代して、更にもうひとつの誤算とも言えるコロナ禍が、別の意味でアメリカ音楽に多大な影響を与えたということもありました。但し、その二つの誤算も、それがあったからこそBTSがアメリカを席巻していくという潮流をリアルタイムで捕まえることも出来ましたし、先ほど大和田さんがおっしゃられた最終章での、コロナ禍と100年前のアメリカ音楽の歴史的変化を記録することも出来ました。これらがあったからこそ、全く望外であった今回の受賞に至ったのだと考えております。
また現在、アメリカだけでなく世界全体を揺るがすような歴史的な事態が起こっています。大和田さんには更に新しい音楽地図を書いて頂ければと思っておりますが、その時にはなるべく定期的に原稿を頂ければと思っております。本日は本当にどうもありがとうございました。

●功労賞

村上“ポンタ”秀一

村上 ひとみ様(故 村上“ポンタ”秀一氏夫人)

写真 功労賞をいただきありがとうございます。今日ここに来たのは、村上が音楽を大好きだということを多分褒めていただいたのかなと思って、それならば村上も喜んで受けていいよって言っているのかなと思って、ここに参りました。
今まで村上が一緒に音楽をやってきた演奏者の皆さん、本当に数多くお世話になったスタッフの方々、音楽を聴いてくださったたくさんの皆さん、本当に感謝しております。これからもジャンルを問わず、素晴らしい音楽が世界にいっぱいありますように心から望んでおります。それを本当に心なく聴けるような世の中になったらいいなと本当に思っております。皆さんのお力も多分、それには反映できるのではないかと思うので、音楽の力を見せてください。よろしくお願いいたします。ありがとうございました。

■オーディオ部門

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●技術開発部門

プレシジョンSA-CDトランスポートDP-1000、
プレシジョンMDSDディジタル プロセッサーDC—1000

アキュフェーズ株式会社 代表取締役社長 鈴木 雅臣様

写真 このたびは大変栄誉ある賞をいただき、ありがとうございました。この賞はほんとうにうれしいです。
数ある素晴しいオーディオ製品の中から弊社製品を選んでいただいた、ミュージック・ペンクラブ・ジャパンの会員のみなさまに深く感謝いたします。
弊社は今年2022年に創立50周年を迎えます。今回賞をいただいたスーパーオーディオCDプレーヤーシステムのDP-1000+DC-1000は、創立50周年のアニバーサリーモデルにあたります。
一般的なCDプレーヤーは一つの筐体にまとめられていますが、この製品は違っています。
ディスクからデジタル信号を読み出すトランスポート部で一筐体、そこから信号を受け取りアナログ音楽信号に変換するコンバーター部で一筐体の、二筐体でシステムを構成するという、たいへん贅沢な構えになっています。
この製品のルーツは、1986年に発売した弊社のCDプレーヤーシステムの初代機のDP-80+DC81にさかのぼります。現在の製品のラインアップには一体型構成のいわゆるCD/SACDプレーヤー三機種がありますが、フラグシップモデルは初代機から現在にいたるまで、ずっとセパレート型というたいへんぜいたくな構成を採用しています。
今回賞をいただいたDP-1000+DC1000は八代目にあたります。創立から50年の間に培ったアナログ技術とデジタル技術を集大成した製品といえます。
DP-1000+DC1000によって音楽の新たな感動が得られることと確信しております。
あらためまして、このたびはありがとうございました。