ソウル・フラワー・ユニオン (3/4) - 音楽ナタリー 特集・インタビュー (original) (raw)
伊丹英子のお囃子がときにソウル・フラワー・ユニオンに必要になる
──今回ヒデ坊(=伊丹英子)がレコーディングに参加してるのは、2曲だけ?
ヒデ坊は沖縄に住んでいて、東京や大阪に来るのは、モノノケ・サミットのツアーのときくらいしか機会がないから、そのときに。「ダンスは機会均等」とか、ヒデ坊のお囃子が絶対に必要な曲に、ダビングで入れる形になる。データで送ってもどうせ放置されるし(笑)、ひさびさに来た大阪や東京でゆっくりしようなんて気分のところを、首根っこ捕まえて魂花神社(プライベートスタジオ)に連行する、という感じやね(笑)。彼女のお囃子がときにソウル・フラワー・ユニオンに必要になるんやね。
──でも10月の辺野古で、ヒデ坊がソウル・フラワー・ユニオンで演奏してるのをひさびさに見たら、独特なものを感じて。震災のときもヒデ坊がモノノケを作るきっかけになったし、辺野古もまずヒデ坊がかかわって、ソウル・フラワーを呼ぶという図式があるでしょう。だからレコーディングに参加してるのは2曲だけなんだけど、ソウル・フラワーにとっての彼女の大きさを感じる。
黒幕? ゴッドファーザー。児玉誉士夫とか(笑)。
──その辺が面白い。中川がボスじゃなくて、黒幕がいるというのが。
人生の中で叱ってくれる女性が必要というか(笑)。いらんいらん!(笑) まあヒデ坊はまさにソウル・フラワーやな。耳の音響外傷のこともあって、ソウル・フラワー・ユニオンの普段のライブに参加し続けるのは難しいけど。彼女はメスカリン・ドライヴの初期の頃、パンクのファンジンのインタビューとかでもすでに「バンドじゃなくても良かってん。集団で何かをするのが私は好きやねん。祭り起こしたりとか」って言ってた。それをずっと続けてるよね。神戸とか辺野古とか、「現場で歌う」という強烈な宿題をいつも与えてくれる。神戸のときは、自分も震度5くらいの揺れを体験してるから、初めの1週間くらいは俺も被災者の側に立ってるような見方やってんね。でもそこでいきなり「民謡歌いに行かへん? 避難所の老人は、絶対娯楽が必要になる時期が来るから」って言い出した。30歳前後のロックミュージシャンで「なんでそんなことがわかったん?」って、今から思うと不思議でしょうがないけどね。彼女の独特な感性やと思うけど。そっからはもう必死で三線の練習。とてつもない宿題を与えてくれて、結果的に俺やメンバーに大きなものをくれる。彼女からすると「ソウル・フラワーが私を伸ばしてくれる」って言い方もするけどね。そういう関係。それが2006年の5月頃、夜中に電話してきて「ほんまムカツク。辺野古で祭りやらへん?」って言われて「キター!」。メスカリン・ドライヴ結成するで!みたいな話と一緒。最初は「どう思う?」って言われたけど、「これは沖縄の問題じゃなくて日本の問題やな」って話をして「やろう、やろう!」となった。
今回の辺野古も震災の神戸と同じ、一生もんの出会いがあった
──それで彼女は「Peace Music Festa!」の実行委員になって。
実行委員の中心は、ヒデ坊と(知花)竜海の2人。2007年の2回目から中心になり始めた。しかも今回の「Peace Music Festa!」は、完全にウチナーンチュ(沖縄人)主導。「やっと目指してるもんになってきた」ってヒデ坊も言ってた。出演者は基本的に、ウチナーンチュの若い子が主導で決めていった。その中で、中川五郎さんと直枝(政広)君はTwitterで「辺野古行きたい」ってつぶやいてて。あの2人はハナから「出演できなくても手伝いでもいいから自腹で参加したい」みたいなことを言ってくれてて。俺も橋渡しをしたり。
──出演者もスタッフも、みんな自分で交通費を捻出して駆けつけたんだよね。
(七尾)旅人君とか三宅(洋平)君とか五郎さんは、自ら沖縄ツアーも組んでたし。だからもう詳細な説明をしなくても済む人たち。そういう素晴らしさもあったよね。THA BLUE HERBのBOSS (THE MC)君もそうやった。初めから説明せんでもわかってくれてる。ブログでも辺野古のことを書いてて、ジャンルは違うけど、彼の素晴らしさはリリックからも文章からもビンビン来る。みんな、完全に自立してるミュージシャンばかりやね。あと、普段米兵の前で演奏してるハードロックのバンドがけっこう出てて面白かったよ。垣根を越えてやる、ということ。「反基地」ということはもちろんあるけど、「推進」も「反対」も乗りこえて、音楽でもろもろを突破する祭りにしよう、というのがあった。実際、会場には、地元の人たちや「基地推進派」といわれる人たちまで、雑多な顔が揃った祭りになった。だから出演者にもスタッフにも、本質的な意味での「成功! ここから始まる!」っていう高揚があったんよね。
──トリがサルサバンドだったよね。
KACHIMBA DX、俺も大ファン。素晴らしいよ。メンバーは普天間でラテンバーをやってる。彼らは「Peace Music Festa!」に毎回出てて、実はちょっと俺のラテンブーム再燃のきっかけでもあるんよね。こないだ彼らには「ソウル・フラワーの新譜にラテンぽい曲が入り込んできてるのは、自分らのせいやで!」って話をした(笑)。
──「Peace Music Festa!」とのかかわりが、結果的には新作の音楽性にも影響を与えていたんだ!
震災1周年のイベントをやった神戸の長田神社の「つづらおりの宴」に来てくれた人たちとの「一生もん」と言える独特な高揚を、俺は思い出した。そういうことが今回も辺野古で起こったよ。いろんなミュージシャンがブログやTwitterで、今回のことを思い思いに書いてる。やっぱりそうやってんね、と改めて思ってるところやね。「一生もん」の出会いがあった。
──ソウル・フラワー・ユニオンを脱退した河村が、初日にモノノケ・サミットの一員としてステージに立ち、2日目はオーディエンスとしてユニオンを見ていたのも印象的だった。ソウル・フラワーって、そういうかかわりを生み出す独特な場のパワーがあるんだよね。
ユニオンの演奏が終わった後、河村が楽屋に言いにきたよ。「初めてソウル・フラワー・ユニオンを観た(笑)。俺はすごいバンドにいたんやな」って。俺は「ようやくわかったか」って言ったけど(笑)。
CD収録曲
- パンサラッサ
- ホップ・ステップ・肉離れ
- ダンスは機会均等
- 死ぬまで生きろ ! [2010 ALBUM MIX]
- 死んだあのコ
- 再生の鐘が鳴る
- アクア・ヴィテ [2010 ALBUM MIX]
- 道々の者
- 太陽がいっぱい
- パンゲア
- 千の名前を持つ女
- スモッグの底
- ルーシーの子どもたち [2010 ALBUM MIX]
- 続・死ぬまで生きろ!
- 移動遊園地の夜
パンゲア [Trailer]
ニューアルバム「キャンプ・パンゲア」発売記念ツアー
- 2010年12月4日(土)
愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:JAILHOUSE - 2010年12月5日(日)
大阪府 BIGCAT
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:GREENS - 2010年12月7日(火)
福岡県 福岡 DRUM Be-1
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:BEA - 2010年12月11日(土)
東京都 赤坂BLITZ
OPEN 18:00 / START 19:00
問い合わせ:SOGO TOKYO
ニューアルバム「キャンプ・パンゲア」発売記念地方巡業 ~アコースティック編~
出演:ソウル・フラワー・アコースティック・パルチザン(中川敬・リクオ・高木克)
- 2011年1月12日(水)
滋賀県 酒遊館 - 2011年1月14日(金)
愛媛県 松山ブエナビスタ - 2011年1月16日(日)
兵庫県 加古川ギャラリー&サロン日本堂 - 2011年1月19日(水)
神奈川県 藤沢虎丸座 - 2011年1月20日(木)
東京都 吉祥寺弁天湯