渚にて: 人類最後の日 (創元推理文庫 616-1) | ネビル シュート, 井上 勇 |本 | 通販 | Amazon (original) (raw)

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上位レビュー、対象国: 日本

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2023年1月25日に日本でレビュー済み

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本の状態もよく、迅速に届けてくれました。
古本なので、表は多少シミなどありますが、中の活字の部分は本当にキレイです。満足してます。

2019年12月25日に日本でレビュー済み

"『だれもこの戦争を止められなかったの?』『どうかな。。人間の愚かな行為は、だれにも止められないときがあるものだろうな。』"1957年発刊、映画化作品も有名な本書は、第三次世界大戦後に生き残った人類に忍び寄る滅亡を静かに描いたオールタイムSFの傑作。

個人的には随分と昔に映画を先に観た記憶がおぼろげにあったのですが、すっかり内容を忘れていた事もあり手にとってみました。

そんなT・S・エリオットの詩からタイトルが引用された本書は、突発的に発生した第三次世界大戦により北半球は高放射線を撒き散らすコバルト爆弾で全滅(言及されませんが、日本はもちろん。。)偶然、深海潜行中で生き残った米原子力潜水艦が寄港したオーストラリアを主な舞台として、残りの日々が描かれるのですが。前半に関しては危機的な状況にも関わらず【平穏な日常が淡々と描かれていて】ちょっと驚きました。(とは言え、案外そんなものかもしれませんが)

ただ、それを踏まえた上での、灯火のような希望も潰えて、いよいよ放射線が南半球へ到達。登場人物たちが、それぞれに人としての尊厳を保った上で【同じように淡々と死を受け入れていく】後半の描写には、些か理想的かもしれませんが、引き込まれました。あとがきではありませんが、放射線以外にも様々な地球滅亡の危機を抱えてしまっている現在、果たして自分が同じ状況になったら?と考えさせられます。

定まった運命を受け入れる物語。オールタイムSF好きな人にオススメ。

2019年2月12日に日本でレビュー済み

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主要な登場人物以外にも、ほとんどの人々が運命の日まで整然と大人の対応を続けていることに感銘を受けた。実際には自ら破綻してしまう人も多いであろうが。明かなる死を間近に見つめ続け、生きてきたことに感謝し続けること、人生にとって最も重要なことではないでしょうか。

3人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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2018年1月13日に日本でレビュー済み

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ずいぶんと前の、作品なのに、今、現在に起こり得る、内容に、考えさせられました。
人間の、浅はかさから、起きてしまった、取り返しのつかない、げんしょうに、どうする事もできず、、、、も、それぞれの、生き方があり、、、も、何か、複雑な、思いで読み終わり、しばらく、頭から離れませんでした。
そんな、日が来ないでほしい。

2005年5月21日に日本でレビュー済み

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この小説の初めから終わりまで、放射能は南へ南へと少しづつ広がっていき、登場人物はみな、ゆっくりと終末に近づいていきます。希望や解決策が大々的に登場することもなければ、パニックや自暴自棄となった人々がセンセーショナルに描かれることもありません。
ただただ、ゆっくりと、ゆっくりと。
淡々とした文調から受けるえもいわれぬ感覚が少しづつ蓄積されて、いつのまにか衝撃的な読後感になっています。
現在において、国家間戦争としての全面核戦争の脅威こそ減りましたが、長期的には環境問題やウィルスの脅威、ヒトによるものとしてはテロリズムにおける無限の可能性の拡がりという形で、人類全体に係る終末の可能性は決して低減してはいません。
小説としての見事さはもちろんのこと、終末小説としても、この小説の価値は全く衰えていないと感じました。(それはそれで哀しいことではありますが・・・)

18人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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2006年6月12日に日本でレビュー済み

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少々昔の作品なので、ソ連が出てきます。

中ソ、米国、アルバニア・・・・いろいろ重なって戦争になり、短期間に4700発余りの核兵器が使われ、北半球は早い時期に死滅したと考えられている。潜水艦のスコープから覗く海沿いの街々は、たいして破壊されてもいず、花も木もそのままなのに、人影がない。今や南半球にも放射能が着々と広がり続けている頃の、オーストラリア南部の街・メルボルン付近の人々の日常とその胸中が描かれています。

米国海軍の生き残りの潜水艦と実直な33歳の潜水艦長、赤ん坊のいるオーストラリア海軍人とその妻の若夫婦、未婚の20代の牧場主の娘と家族、その親戚の科学者の青年、元陸軍中将でお酒好きの伯父さん、それぞれの家族たち。米海軍の人々が米国に残してきた(そして今はきっと死んでいる)家族たち。

人間はいつか必ず死ぬけれど、普段は意識していない。でも今、世界の終わりがメルボルンにも確実に目前に迫ってくる。あと数ヵ月。何もかも早く繰り上げて、準備をしなければ・・・・。

人生をこんな風に美しく、優しく、立派に終えられるでしょうか? 終えられるといいなと思います。こんなことが起きたらえらいことですけどね(話の中に日本は出てこないが、もう終わってるんだろう)。

設定は古いし、訳文も古風な言葉遣いですが(1960年代ゆえ)、しかし21世紀に読んでも楽しめる・・・楽しめると言ったら何ですが、読み甲斐のある物語です。

世界地図を手元に用意しつつ読むといいと思います。

オーストラリア、タスマニア、パプアニューギニア、南北アメリカなどの地名が登場します。

18人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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2006年8月8日に日本でレビュー済み

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それぐらい心を動かされたので、月並みな評価の言葉など口に出るはずもありません。アメリカ海軍の唯一の生き残り「スコーピオン号」のクルー、オーストラリア海軍の士官達、科学者、そしてメルボルンの街の人々・・・さまざまな葛藤にさらされたさまざまな立場の登場人物達が、話の筋が進むにつれ洗われたように清らかになってゆくこの様は何か。なまじ未来への不安など無い方が人は正しく生きられるとでも言うのか。迫り来る放射能を忘れたかのような人々の無邪気なにぎわい、そして静かに滅びてゆくメルボルンをあとに、最後の航海に旅立つ、最後のアメリカ人達・・・美しい物語だが、はかなく滅びるものに美しさを感じるのは、希望に生きたい私たちとしてはあくまでもただの物語であって欲しい。自分の生き様すら思わず振り返ってしまうほど心に迫る小説。そんなものを、あろうことか八月初旬に目にしてしまうとは・・・

25人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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2013年5月6日に日本でレビュー済み

中ソ戦争が拡大した第三次世界大戦により、北半球は、核により壊滅してしまった。放射能は、徐々に世界を覆いつくしていく。核の難を逃れたオーストラリアの人々にも、最後の日へのカウントダウンが始まった ・・・

リチャード・マシスン『終わりの日』は、破滅を目前としたとき、人々の暴徒と化していく姿が鮮烈だった。本作品は、『終わりの日』と随分、様相が違う。人々は、普段と変わらない日々を送ろうとしているのだ。タイムリミットが近づいていることに気づきながら、世界が永遠に続くがごとく振舞う。

オーストラリア海軍将校ピーターとメアリー夫妻、アメリカ人の潜水艦艦長ドワイト、ピーター夫妻の友人モイラ、科学者ジョンを通して、滅びていく世界が映し出されていく。

美しい花々を咲かせるため、庭の手入れに余念がないメアリー。故国が壊滅していることを知っていても、妻子のためにプレゼントを探すドワイト。タイピストを目指し学校に通い始めるモイラ。美しい花々を咲かせるため、庭の手入れに余念がないメアリー。

明日がないことを理解しているにもかかわらず、明日を夢見ざるを得ない。挿入されるエピソードの中に垣間見えるのは、人々のギリギリの精神状態だ。

しかし、自暴自棄になるでもなく、狂気にかられるでもない。徐々に変化していく暮らしぶりに、粛々として従う人々。現実逃避というより、諦念の境地だろうか。ゆえに、悲愴さが一層、際立ってくる。

本作品には、運命に抵抗する人々は一切登場しない。徐々に放射能に蝕まれ、静かに命が消えていくのを待つのみだ。そこには、儚くも美しい人間の尊厳を感じる。なるほど、文学としてもつうじる名作である。

3人のお客様がこれが役に立ったと考えています

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