アウトバーストしたはくちょう座V404星に多重のX線リング (original) (raw)
先月15日にアウトバーストがとらえられたブラックホール連星「はくちょう座V404星」を天文衛星「スウィフト」がX線で観測し、射撃の的のように見える多重リングを写し出した。複数の塵の層で反射したX線が見えているものだ。
【2015年7月10日 NASA】
ブラックホールと太陽のような恒星との連星系「はくちょう座V404星」のアウトバースト(突発的な増光)がとらえられたのは先月15日のことだ(参照:アストロアーツニュース「ブラックホール連星はくちょう座V404星がアウトバースト」)。以来、世界中で様々な望遠鏡を用いて、このブラックホール連星の観測が続けられている。
最初にこのアウトバーストを検出したのはNASAの天文衛星「スウィフト」だが、2週間後に再びスウィフトがX線観測を行ったところ、満月の3分の1にも及ぶ大きさに広がる多重のリングがとらえられた。6月30日、7月2日、4日に撮影された画像から作成された動画では、リングが拡張しながら次第に暗くなっていく様子がわかる。
月の大きさと、6月30日にとらえられたX線リングの大きさの比較(提供:(左)NASA's Scientific Visualization Studio、(右)Andrew Beardmore (Univ. of Leicester); NASA/Swift
X線のリングが広がっていく様子(提供:Andrew Beardmore (Univ. of Leicester) and NASA/Swift)
このリングはX線のエコー(こだま)によるものだ。ブラックホールがフレアを起こして放射されたX線の一部は、塵の層で反射して地球に届くが、反射したX線は真っ直ぐに届くX線よりも遅れて地球へと到達する。その時間の遅れがエコーとして、リングが広がっていくように観測される(つまり、塵の層そのものが広がっているのではない)。また、リングのもととなったフレアは1回だけだが、X線を反射した塵の層が地球から4000~7000光年の間に複数あるため、リングが多重に見えている。
リングの変化を継続して観測することで、通常は見ることができないこのブラックホール連星系方向の星間ダスト(塵)について研究できる。