ふるえる、ふえる。 (original) (raw)

『地球星人』
村田 沙耶香
新潮社(2021)

なんという作品を読んでしまったんだ…
と呆然とする。
そんな読後感でした。

生き延びるためには、世界が求める役目を果たさなければならない。

働き、産み育てる、部品。

いっそ何も不思議に思わないくらい、洗脳されきってたら、楽なのに。

あまり表には出さないかもしれませんが、この感覚がわかる人は結構いるんじゃないかな、と思います。

みんな大人だから、見えないフリ、知らないフリをしているだけなのかもしれません。

繁殖ではなく伝染、という表現がものすごく好きでした。私の中では「共振する」という言葉が出てきました。

ふるえる、と、ふえる。

おもしろくて新しい感覚を持った人がふえると、素敵。

この日、私の身体は全部、私のものになった。
窓の外では、雪が降り始めていた。部屋の中の蠟燭の光を反射して、白く光る粉が、宇宙から舞い降りている。
私は蚕の鱗粉を思った。無数の蚕が部屋から飛び立って、鱗粉を撒き散らしながら飛んでいく光景を想った。
真っ黒な空から落ちてくる雪は、地面を真っ白に染め上げていった。雪は外の生き物の気配を覆い尽くし、蠟燭が揺れる部屋で、私たちの食事の音だけが、途切れることなく続いていた。

奇妙さと美しさが共存しているような。
最初はそんな感じがしました。

いま一度読んでみると、「無数の蚕が部屋から飛び立って、鱗粉を撒き散らしながら飛んでいく光景を想った。」は「思った」ではなく、「想った」なんですね。

蚕って、飛べませんよね?
飛べはしないけど、飛んでいって欲しい。
だから、「想った」なのかなあ、と。

もう少し蚕に着目して読み直したら、また新しい発見がありそうだなあ、と思います。

いまはちょっとお腹いっぱいなので、少し期間をおいて。笑

これも読みたいな。