7th HopeのBlog〜五線紙のすみっこ〜 (original) (raw)

はじめに

この記事はこちらの記事の続編です:

7th-hope.hatenablog.com

今回は「Silent Blue Rose」という曲の構成やメロ・歌詞の背景などについて

シンプル路線

前回このブログで紹介した「星あかりのパヴァーヌ」という曲と同様、この曲も比較的シンプルな編成で音数少なめです

以前の記事でも触れたローズのSCARBEE MARK Ⅰ をメインにシンセハープのアルペジオを重ね、要所にベル系やナイロン弦のギター、2サビからスチール弦のギターが加わり間奏〜Dメロでストリングス(+ベースとドラム&パーカション類)…といった感じ
この他、奥でほんのりパッド系が鳴っているのですがこれを除くと持続系の音色が少なく、そのかわりハモリ以外のバックコーラスを比較的多めに入れています

BPMは86とややゆったりめ
3分半くらいの尺に収めたかったのですがBPM90だと少々せわしない感じでイメージと違ったので86に落ち着きました

展開に関して
2番Aメロをラップパートにすることは構想段階から決めていました
ラストで1番のAメロを再び繰り返しますがこれは、ラスサビで盛り上げて終わる曲調ではないなというのに加え、1番Aメロが自分自身けっこう気に入り、しかし2Aがラップだと1回しか出てこない…ということからこうしました

こぼれ話というか余談

その1番Aメロについて

歌い出し部分のメロ譜はこんな感じ↑ A♭キーで最初4小節の進行は

| ⅣM9 | #Ⅴdim7 | Ⅴm6 | ⅣM7 | 〜 (1)

となっています

「ニケとリリエンタール」という私の過去作がAメロ・サビともこれに近い

| Ⅵm7 | #Ⅴdim7 | Ⅴm6 | ⅣM7 〜 (2)

で始まるのですが今回も当初の仮組み段階では同じ進行が候補にありました
しかしマイナートニックで始まるのはイメージに合わずなかなか良いメロが乗らなかったこともあり、そして重視したかったのは #Ⅴdim7 から Ⅴm6 へ進む部分の色合いだったので先頭をⅥm7と構成音が近いⅣM9に変えました

ところでこれは余談ですが
上記(2)は3小節目までボサノヴァの有名曲 How Insensitive(作曲:Antônio Carlos Jobim)冒頭の進行と同じです(How Insensitiveでは4小節目も半音下降が続きⅡ9/#Ⅳ ≒ #Ⅳm7-5 となる)
まぁこの進行は #Ⅴdim7 → Ⅴm6と進む部分がもっとも特徴的であって、ⅣM7 が通常くるところを#Ⅳm7-5 で代用するのはよくあること

そんなわけで(どんなわけだ?)私は以前から Ⅵm7 → #Ⅴdim7 → Ⅴm6〜 という進行をHow Insensitive進行とひそかに呼んでいるのですが一般的な呼び方ではありません多分…まぁ名前は本質ではないのでどうでも良いのですが

さらに余談ですが
少し前ビリー・ジョエルが来日して盛り上がっていた頃に見かけたサッカリン様のYouTube動画
【ビリー・ジョエル】オネスティのコード進行がヤバ過ぎる、、【徹底解説!】
で、オネスティのブリッジ部分(I can find a lover〜 のところ)がまさにHow Insensitive進行であることに気づきました(こちらの動画では2小節目を Ⅲ/#Ⅴ と表記していますが Ⅲ7(♭9)/#Ⅴ と解釈すれば #Ⅴdim7 と等価)
なのでオネスティ・ブリッジ進行と呼んでも良いのかもしれませんが名前は本質ではな…(以下同文

実はオネスティはとても想い出深い曲で(高校のとき音楽の授業で「各自好きな曲をグループ演奏する」という3学期の課題で演奏した)にもかかわらずこの動画を拝見するまで気付いてませんでした…まぁその時はドラムを担当したのであまり意識してなかったということで
…以上(余談長すぎ)

歌詞のキーフレーズ

2番サビが以下の歌詞で始まるのですが

As you keep doing you regardless of
what others say, or whatever happens
I should realize the future lies within

(君はブレない、他人がなんと言おうと 何が起きようとも
だから僕は悟るべきだ 未来は自分の中にこそあると)

1行目の "〜 keep doing someone regardless of 〜" というのが「(君は)ブレない,揺るがない」という意味を表していて、自らの意思で去っていく「君」の揺るがない強さを描写しています
"regardless of 〜" が「〜には関わらず、〜と関係なく」という意味であるため全体でこのような意味合いになるのですが、実際にはしばしば "of 〜" の部分なしで使われることもあります

KPOPグループ aespa の "Life's Too Short" という曲が、歌詞自体、メロへの歌詞の乗せ方、そして英詞の歌い回し等も含めて私はとても好きなのですが、この曲では

I'm doing me regardless
And I don't care what you say about it

と一人称で芯の強さを表現しています
ここから着想を得てブレない「君」を表す上記の歌詞が生まれました

www.youtube.com

歌詞を確認するにはこちらのLyric Videoが良いかも→ aespa 에스파 'Life's Too Short (English Ver.)' Lyric Video

ところで「Silent Blue Rose」において離れていってしまう「君」に関して、1番のBメロ(日本語部分)に以下の歌詞があります:

君が纏う空気に惹かれて
その風に帆を張ろうと決めた

この描写からは親しい間柄というよりは手が届かないような遠い存在のようにも思えますが、歌詞ではあまり状況を限定せず、様々な解釈が可能な幅を持たせたほうが良いと考えあえてこのようにしました

おわりに

「Silent Blue Rose」という曲の制作にまつわるさまざまな背景について記しました
最後までお付き合いいただきありがとうございます

楽曲リンク

YouTube

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ニコニコ動画

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ピアプロ

piapro.jp

この楽曲に関する記事はこちら:

7th-hope.hatenablog.com

Silent Blue Rose by 7th Hope

In misty blue rose field with silence
Fluttering your white dress you’re fading away
While nothing has ever convinced me at all
Wish I could stop the clock now

君が纏う空気に惹かれて
その風に帆を張ろうと決めた
あの日からの記憶ひとつずつ数えて
思い返す何度も

So why you leaving so, so soon
as if it’s been destinated
while my hands are still in the pocket
Now never comes tomorrow with you anymore
for some reason that I can never find

Your voice and your eyes and your face and your words
all the things about you have still occupied a deep part of my heart

Vivid memories I can never forget
So many episodes I can't hold them all
Rolling emotions
I can barely contain myself now

窓の向こうは 銀色の雨
去り行く姿さえも愛しく
僕が知らないところで世界は回る
感情すべて置き去りに

As you keep doing you regardless of
what others say, or whatever happens
I should realize the future lies within
Now never comes tomorrow with you anymore
and that reason you left should be in yourself

遠ざかる背中 揺れる髪に願う
幸せであるように

As you keep doing you regardless of
what others say, or whatever happens
I should realize the future lies within
Now never comes tomorrow with you anymore
and that reason you left should be in yourself

In misty blue rose field with silence
Fluttering your white dress you’re fading away
While nothing has ever convinced me at all
Wish I could stop the clock now

はじめに

久しく更新をサボっていたのですが最近投稿した「Silent Blue Rose」という楽曲について書きます

この楽曲について

制作の経緯

今回の楽曲の前に投稿したのは(ブログで紹介できてませんが)3月末の「平行線クレプスキュール」というピアノバラードだったので5ヶ月ほどあいてしまいました

その間ニコニコ動画不正アクセスのためサービス停止となっていましたが7月に入り8月上旬からサービス再開とのアナウンスが出て…
再開したら何か投稿しなくては!と7月下旬くらいに制作に取り掛かりました(遅!)[*]

[*]その間まったくサボってたわけではなく、他に作りたい曲もあって細々と作業はしてました(言い訳)

制作当初なんとなく英語・日本語半々くらいの歌詞をイメージしてたのですが、お盆頃に後述のSynthesizer VのGUMIさんを導入したところ思っていた以上に英語の発音が素晴らしかったこともあり、結果的に英語:日本語=7:3くらいで英語多めとなりました

その後8月末に楽曲が完成しハタと「動画どうしよう?」…これが9/1(日)の朝…朝といっても休日は朝寝坊なのでほぼ昼近く

ニコニコのサービス再開に伴い「ぼかえり2024夏」という投稿祭が開催されてるのは知ってたものの期間を確認したら9/2(月)23:59まで

9/2(月)23:59まで!!! ( ̄▽ ̄);;;

…間に合うかな?月曜は朝から仕事だから実質今日しか…まぁできるだけやってみるかぁ

というわけでその日は

とまぁそんな感じでした

Synthesizer V のGUMIさん

さてここから記事タイトルにあるSynthesizer VのGUMIさんについてです

Synthesizer Vは今年始め頃に花隈千冬さんを使い始めたばかりでまだ歴は浅く、今回の曲も当初は英語部分も千冬さんで進めてましたがSynthesizer VのGUMIさん(正式には「Synthesizer V AI Megpoid」)が昨年末の発売当初から気になっていて使ってみたいと思っていました

元々VOCALOIDのGUMIさんは英語ライブラリも持っていて、英語の発音がミクさんと比べても良い印象だったので今作の制作がそこそこ進んできた8/16深夜にSynthesizer VのGUMIさん(DL版)をポチってインストール

そして英語パートのトラックをGUMIさんに替えてみたところ良いんですよコレが

何が良いかって

ちゃんと英語らしく聞こえる(私の感覚ですが)

具体的にはRとLがまずまず区別されている…たぶんライブラリを構成する音素自体が良いのだと思います

この曲は歌い出しの歌詞が

In misty blue rose field with silence
Fluttering your white dress you’re fading away

と偶然ですがLとRが何度も出てくるフレーズになっていることもあってそう感じました

↓導入翌日8/17の深夜にX(Twitter)に投稿したときの画像
1番Aメロの4〜6小節目あたりの部分です

それからこれはGUMIさんに限らずなのですが
Synthesizer Vにはピッチモードの中に通常の歌唱の他にラップモードというのがあってこれを選ぶとラップ特有のピッチ遷移を自動的に付与してくれます

これだけで完璧にイメージどおりのラップが完成するわけではないのでさらに作り込みは必要ですが、ラップモードではトーンとイントネーションという2つのパラメータで各ノートに対して基準となる音程と音程が変化する度合いとを調整できます

ラップといえど音程感がないわけではなく、とはいえ完全にメロディーにピッチを合わせるわけでもなくそのあたりはケースバイケースなのでイメージに合うよう調整していくわけですが、ゼロから(つまり通常の歌唱モードから)調整していくよりは遥かに効率的です

↓ラップパートの編集画面
右側のピッチモードでラップを選び(ノートがピンク色に変わる)イントネーションとトーンを調整する
画面下のパラメータパネルでラップイントネーションを選ぶとピッチ変化を確認できる

なお念のためですが
千冬さんもしっかり英語パート歌ってくれてます(今作でもハモリパートは主メロと担当を入れ替えてますし)
今回の楽曲のイメージに合うのが(英語パートに関しては)GUMIさんだった、ということです

楽曲リンク

YouTube

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ニコニコ動画

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ピアプロ

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歌詞

7th-hope.hatenablog.com

おわりに

今回は「Silent Blue Rose」という楽曲の制作の経緯とSynthesizer VのGUMIさんについて記しました

長くなりましたので楽曲の構成や歌詞の背景については別記事であらためて記載します
ここまでお付き合いいただきありがとうございました

余談ですが今作では嬉しいことにピアプロでコメントをいただきました
書いてくださった方ありがとうございます

はじめに

この記事は2024年1月19〜21日にかけて開催されたゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜についてのごく個人的な振り返りです(ツイプラのイベントページはこちら↓)

twipla.jp

私自身も星あかりのパヴァーヌという楽曲でこの投稿祭に参加しましたがこの楽曲については下記の記事にいろいろ書いたのでここでは触れません

7th-hope.hatenablog.com

ゆっくり限定ではない

この投稿祭はBPM135以下の速すぎない曲を投稿し合うというイベントでした
すなわちゆっくりな曲限定ということではなく、スローテンポ〜ミドルテンポまでかなり間口の広いレギュレーション
この点はイベントのTwitterアカウント名が @middleslowvoca であるところにも現れています

総じてハイクオリティ

「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」のタグがついた動画をニコニコ動画YouTubeで確認したところそれぞれ約240曲、約40曲ありました(重複あり; YouTubeではタグをつけてない人もいそうなので実際の投稿数はもっと多いかもしれません)

今回はイベント期間中おもにニコニコ動画を中心に巡回しまして全曲ではないですが9割がた視聴した印象としては「良いな」と思える楽曲が多かったです

BPM=135以下でテーマは夜」という適度に緩いレギュレーションが絶妙に功を奏した結果、各制作者が存分に個性を発揮した作品が集まり、かつ頑張れば全曲視聴も十分可能な規模となった…そんな印象です

個性的で多彩な作品が集まったのはジャンルに関する縛りがないのも大きそうです
スロー〜ミドルテンポ限定とはいえバラード等の壮大な曲が多いということもなく、むしろさまざまなアイデアを3分程度の尺に上手にまとめ上げた作品も目立ちました

これまで接点のなかった方の楽曲も聴けたし自分の楽曲にもまずまず反応いただけたので率直に参加してよかったと思いました
イベントを主催してくださった皆さんにはとても感謝しています

界隈の傾向

自作曲を制作して動画サイトに投稿するようになって8年近く経つのですがここ数年おもにニコニコ動画において「○○祭」のような投稿祭が頻繁に行われるようになった印象があります…ちゃんと調べたわけではなく印象ですが

また、VOCALOIDおよびその他合成音声を使ったオリジナル作品の投稿数自体も近年かなり増えています
これは単なる印象ではなく実際、

・2012年頃をピークに一旦低下し2017年頃に下げ止まり
・その後は再び上昇に転じ2020年には2012年を超え、2022年では2012年の2倍以上

との調査結果があります(出典↓ lefthorseさん)

その一方でニコニコ動画の有料会員数は以前より減少していて[*]「楽曲の投稿数は増えるのにリスナーは減っている」という供給過多の傾向が年々高まっているというのが界隈の共通認識としてあると思います

[*]そもそもボカロ曲はとっくにニコニコ動画の主要コンテンツではないという話もありますが

要するに(楽曲が圧倒的に魅力的な才能溢れるごく一部の人を除いては)

作品を発表してもリスナーが広がらない、まだ聴いてもらったことがない人に届かない

という傾向が強まる一方、という状況です

このような状況の中でイベントと無関係に単発で投稿したところで注目されることは難しいため、少しでも新しい人に聴いてもらう手段のひとつとして投稿祭が活発化しているのでしょう

イベントに参加するということ

私自身は、ボカコレはじめ数々のイベントにどんどん参加するのは時間的にも制作能力的にも難しいのですが、一方でイベント等と関係なく完全マイペースで地道に活動するだけでは刺激も進歩もないかなぁとも…元来怠け者なので目標や締め切りがないとなかなか進まないですし

なのでよさそうかなと思えるイベントには可能な範囲で参加しつつ作品のクオリティや制作ノウハウを向上していければと考えています

作り手同士で互いに仲間内で聴いて(さらには社交辞令のようにコメントし合って)何になる?

とか

(作り手でない)真のリスナー層に届けることことが重要

といった指摘は一理ありますがそれらは別に今に始まったことでもなく
私もかつてはバンド活動をしてライブハウスに出演させてもらっていましたが見ず知らずのバンドのライブにお金を払ってきてくれるお客さんがそうそういるはずもなく、駆け出しのうちは知り合いのバンド仲間同士での手売りが主体というかほとんどなわけで

ボカコレで上位にランクインするのが目標、そのために相互リスインも頑張る!
というのもそれが励みになるのなら全然否定しませんし
一方でイベントからは距離を置いて地道に活動するのが性に合うという人にとってはそれがベストなのでしょう

業務としてやっているわけではないので最適解は人それぞれです
その人にとって最もモチベーションを保てるやり方が正解であって他人がとやかく言うことではないのかなぁと…考え方の違いを受け入れる寛容さを持ちたいなぁと思っています

個人的ピックアップ

最後に、ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜に投稿された楽曲の中でとくに印象に残った曲を12曲挙げます(順不同; だいたい私が聴いた順 ≒ニコニコの投稿順)

他にも良い作品はたくさんあってイベント期間中そこそこ紹介ツイートも流しましたがすべて挙げると膨大になるので断腸の思いで厳選した12曲

あくまで私にとって印象に残ったものなので私の好みが目一杯反映された選曲です

(1) 寒い夜 / 江戸川リバ子さん

サウンドのコンセプトが明確で穏やかな心地よい楽曲、チープな音色も効果的
BPM=90

(2) LOOP UP / vuefloor & mayoiさん

ギターやスネア/クラップのタイム感が絶妙、揺らぎつつキレがある感じ
BPM=86

(3) アナタノナニカ / TAiYAKiさん

めまぐるしく展開しつつも統一感ある、これだけアイデア詰め込んで2分台
BPM=120

(4) Rのヒトリゴトあじあさん

ブラスの裏メロとか後半の展開とか好きです
BPM=100

(5) 遺作になってもかまわない / 織部リョウさん

ストレートな主張をありのまま表現しつつ楽曲として昇華できてて素晴らしい
BPM=85

(6) anemome / 橘レイさん

切なくも美しい作品、2コーラス目の演出も効果的
BPM=80

(7) まもなく、 / アカヨウチュウさん

イデアが素晴らしいのに加えてサウンドも良い
BPM=95

(8) おとぎ話のように / Tokage 100%さん

やや強引かと思える展開でこれでもかと攻めつつ絶妙に心地よい不思議
BPM=92

(9) やさしさにつつまれてくれ / おあがりさん

ファンクのレトロなグルーヴ感をベースとしつつ現代的なアプローチで意表突く
BPM=100

(10) 水底にて / obayoheiさん

水底をイメージしたサウンドが綺麗、繊細なアレンジが光る
BPM=74

(11) この痛みと、都合のいい嘘に / ロップさん

音の質感が生々しく歌詞&メロともに心に響く
BPM=79

(12) Insanity Soundscape / 早坂タカアキさん

サウンドの組み立て・構成・展開あらゆる面にセンス感じる
BPM=80

はじめに

この記事はこちらの記事の続編です:

7th-hope.hatenablog.com

今回は「星あかりのパヴァーヌ」という曲のサウンド面について

構想段階

この曲の制作に取り掛かったのはたしか11月の後半でした
「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」の2ヶ月前くらいですね

構想段階で考えたのは「コンパクトな曲にしよう(いろんな意味で)」という点でした
目を引くような派手さはないけれどなんとなく印象に残るような曲
小品」というとちょっとかっこ良すぎかもですがそんなものを目指して…という感じ

なのであまりあれこれと要素を詰め込まない方向で
楽曲の形式としては当初「A - B - A」のいわゆる小三部形式をイメージしていました(後述のように結果的にやや違った形になりましたが)

トラック少なめ

まず「コンパクトな曲」ということで音数が少なめ&編成もシンプルなのでトラック数が少ないです

ドラム&パーカッション類で約10トラックの他はベース1トラック、ナイロン弦のアコギ1トラック、ピアノパッド3トラック、ハープ1トラックにボーカル・ハモリ各1トラック[*]

以上で全てなので私の普段の曲に比べるとかなり少ないです…1/3くらい?

しかしトラックが少なければミックスは楽かと思いきやそうでもなく…
音数が少ないぶん細かい粗が気になりやすくてけっこういろいろ調整しました(まとめ切れたかというと怪しいですが)

[*]これら以外にグループトラックやエフェクトのセンド等は普通にあります

構成

構想段階では「A - B - A」の小三部形式をイメージしていましたが実際には

「A - B - A' - C」

という形になりました[†]

「A」と「A'」はコード進行ほぼ同じでメロも後ろ半分がほぼ同じ
また「C」は「A」および「A'」後半の進行と同じでメロとリズムに変化をつけたものなので「A''」と呼んでも良いようなもの
…なので小三部形式ではないものの_それに近い感じではあるかな_と

[†]細かく言うと1番では「A」と「B」の間に間奏が入りますが進行は「A」と同じでリズムを少し変えたもの(2番は「A」なしで間奏のあとすぐ「B」)

1番の「B」〜「A’」〜「C」までのメロ譜は下のとおり
この範囲にだいたい全ての要素が含まれます

テンポはBPM=90のミドルテンポで一定ですが単調になりすぎないよう「A」「A’」と「B」「C」とでビート感に変化をつけ

アレンジはシンプルに抑え、演出に相当する要素は「B」→「A’」の変わり目でアクセントとして変拍子のブレイクを入れ、そのあとハープを重ねたりしたくらい

といったところです

ゆっくりというよりは

この曲のBPMは上述のとおり90ですが私の感覚では特別ゆっくりというよりかは

「ちょうど心地よいくらい」

のテンポだと漠然と思っていました

私の他の曲と比べてどうなのか?ふと気になったので、昨年3月に配信リリースしたアルバム「カラフル・シンジケート」の収録曲10曲のBPMを確認して今作とともにBPM順に並べてみたらこうなりました↓
(先頭の数字がBPM, カッコ内はアルバムの曲順です)

88 PGF〜妄想彼女はフレンチトーストの夢を見た (8)
90 星あかりのパヴァーヌ
92 クラウドナインの高度 (4)
94 スノードロップと明日への歌(英語ver.)(3)

115 ニケとリリエンタール (1)
118 帷子ノ辻で乗り換えて (6)
126 餞のロンド (7)

140 クロワッサンの想い出 (10)

170 虹とバーガンディー (2)
176 Almost Green (5)
178 環状線とレモネードの魔法 (9)

BPM=88〜94に「星あかりのパヴァーヌ」を含む4曲が集中しています
「ちょうど心地よい」組です

一方、BPM=170〜178というかなり速いテンポの曲も3曲ありますが…
これら3曲はいずれも途中いわゆる「半テン」(=半分のテンポになること)するところがけっこうあります
半テン部分についてはBPM=85〜89ということになるので「半テンしたときちょうど心地よいテンポの曲」であるようです、特に意識していませんでしたが

おわりに

「星あかりのパヴァーヌ」という楽曲について今回はおもにサウンド面の背景を記しました
最後まで読んでいただきありがとうございます

楽曲リンク

YouTube

youtu.be

ニコニコ動画

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ピアプロ

piapro.jp

はじめに

長らく更新していなかったのですが久しぶりに

最近投稿した「**星あかりのパヴァーヌ**」という楽曲について書いていきます

この楽曲について

ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜 参加曲

昨年つまり2023年のたしか秋頃のこと
Twitter (X)のTLで「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」という投稿祭が2024年1月に開催されることを知りまして...(告知は6月に出ていたらしいですが気づいてなかった)

ツイプラのイベントページ↓に記載のとおり、BPM135以下の速すぎない曲を投稿し合うというお祭りです

twipla.jp

ところでこの「ゆっくりボカロ曲投稿祭」今回2回目で前回は2022年12月初旬に開催されたのですがそのときは制作が間に合わず参加できなかったのです

その間に合わなかった曲はこちら↓の「餞のロンド」という曲(2022年12月31日投稿)

【初音ミク】餞のロンド【オリジナル曲】 / Pyxis Rondo (feat. Hatsune Miku) - YouTube
【初音ミク】餞のロンド【オリジナル曲】 - ニコニコ動画

ということもあって今回こそは参加しよう!と決意したのでした

そうしてできたのが今作「星あかりのパヴァーヌ
なお各サイトの動画説明文にも記載のとおりBPMは90です

歌詞 〜AIとの関わりについてほんのり触れてみた

「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」は上述のBPMに関する規定に加え曲のテーマが夜であることが必須事項となっています

そこで歌詞は冬の夜の海をイメージした描写から始まります

夜の海の色素を吸い上げたかのごとく

空は藍より深く

天上の星は瑠璃色の水面を照らす

冬の海の匂いがする

ただこの「冬の夜の海」というイメージは表層的なものであって実は

「_AIとの向き合い方を自分なりに整理してみた_」

というのがこの曲の真のテーマです

この2年ほどの間にStable DiffusionやChatGPTに代表されるAIが発展して様々な創作分野にもインパクトを及ぼすようになってきました

仕事や日常生活の中で私もこれらのAIに触れる機会がありますが、それ以前に私自身、本業では長らく機械学習の研究開発に携わり、また博士論文のテーマは統計的言語モデルに関する研究だった…というくらいにはこの分野に関わってきましたので

とそんなこともあり一度AIとの関わりについてふんわりとでも形にしておきたいなと思ったのでした

とはいえ現時点のAIは精巧なツールに過ぎないと思っていて(意識や意志は持たないですし)…なので殊更に畏れたり礼賛したりするつもりもなければ批判するつもりもなくてただそういうものとして受け止めれば良いのかなと思っています

なのでAIに対して特に強い主義主張がこめられているというわけではないです

ちなみに歌詞の中では「言葉の淵」とか「論理の渦」などのフレーズがAIのメタファーとなっています

言葉の淵から繰り出される

答えのようなものが放つ違和感の正体を

ねぇあなたは何て呼ぶのだろう?

論理の渦の向こう側で

今あなたは何が見えてるの?

神は細部に宿る

神は細部に宿る」という言葉があります

由来は定かではないようなのですが「細部までこだわり抜くことによって神が命を宿したかのごとく完成度が高まる(逆に細部をおろそかにしてはいけない)」という意味で使われます

実用品であれ創作物であれ、大筋では良いものであっても細部の粗が気になると価値が下がってしまうし、創作物の場合は作品にのめり込む気がなくなってしまうものです

どこかで消費されたはずの何かを

謎解きのようにかき集め

適当に折り合いつけてみたところで

そこに神は宿るのだろうか

AIどうこうとは必ずしも関係ないですが作品として世に出すからには誰に気づかれるわけでなくても細かいところまで気を配って完成度を高めたいと常づね思っています

タイトル

これも動画説明文に記載していますが、間奏のメロはラヴェルピアノ曲「**亡き王女のためのパヴァーヌ**」のフレーズを引用しています

穏やかで美しい曲で以前からいつか作品に引用したいと思っていたのが今回実現し、そういったこともあり「**星あかりのパヴァーヌ**」という曲名にしました

パヴァーヌ」という言葉自体は歌詞の内容と特に関連があるわけではないのでぶっちゃけ「星あかりの夜」とかでも良かったのですが…(^^);
ちょっと何だろう?と思う言葉が曲名に入っていたほうが印象に残って良いかなという思いもありこのタイトルにしました

楽曲リンク

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ニコニコ動画

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ピアプロ

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歌詞

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おわりに

今回は「星あかりのパヴァーヌ」という曲が生まれた背景やテーマ・歌詞について紹介しました
サウンド面については別記事であらためて書く予定です

またこの楽曲が参加している「ゆっくりボカロ曲投稿祭2024夜」についての感想も後日書こうと思っています