評論家の目で見る手塚治虫!『手塚治虫―未来からの使者』が書くまんがの神様の素顔 (original) (raw)
手塚治虫のまんがとその背後にある深いメッセージに迫る『**手塚治虫―未来からの使者**』は、手塚ファンはもちろん、手塚治虫に初めて触れる人にもおすすめの一冊です。この本は、まんが評論家・石子順氏が手塚治虫と直接交流し、多くの資料や対談から得た情報をもとに執筆されています。手塚治虫の生涯や作品に込められた愛と平和の思いが、子どもにもわかりやすく、また大人にも深い感動を与える内容です。
手塚治虫の作品をすでに読んでいるファンにとっても、満足できる内容になっています。
書籍紹介
この本をおすすめしたい人
この本は、手塚治虫のファンはもちろんのこと、手塚治虫に興味を持ち始めた方、日本のアニメやまんがの歴史に興味がある方にもおすすめです。また、読書感想文の題材としても最適で、対象年齢は小学生4、5年生となっていますが中学生や高校生が題材にしても問題のない内容となっています。
手塚治虫とは?
日本を代表する漫画家・アニメーション作家で、「マンガの神様」と称される。代表作に『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『火の鳥』などがあり、映画的手法を用いた独自のまんがスタイルで知られる。社会問題や人間の倫理をテーマにした作品も多く、まんが・アニメの発展に多大な影響を与えた。
書籍概要
著者について
本書の著者である石子順(いしこ じゅん)は、1967年に手塚治虫と出会って以来、彼の作品とその創作過程に関する研究を続けてきた漫画・映画評論家です。石子氏は、手塚治虫との交流を通じて得た知識や体験をもとに、彼の人となりや創作の裏側を描き出しています。彼の著作は、単なる事実の羅列にとどまらず、手塚治虫の人間的な魅力や、まんがに対する深い情熱を伝えるものとなっています。
特徴
『手塚治虫―未来からの使者』の最大の特徴は、子ども向けに書かれているにもかかわらず、非常に深い内容を持っていることです。手塚治虫の生涯を追いながら、彼が抱えていた内面の葛藤や、作品全体に込められたテーマを分かりやすく解説しているため、子どもから大人まで幅広い層の読者が楽しめる内容となっています。
また、手塚治虫が描いた多くの作品の背景や、彼が直面した困難、成功の裏にあった努力や挑戦についても触れられており、読者に彼の偉大さを再認識させる構成となっています。
印象に残ったエピソード
本書では、手塚治虫の少年時代からプロの漫画家としての活躍まで、彼の人生のさまざまな場面が紹介されています。
大阪府立池田師範付属小学時代
- 教育の特徴: 治少年(※本名は手塚治)の通った小学校では、生徒の自主性を大切にし、個性を伸ばす教育が行われていた。
- いじめへの対応: 治少年は、小学時代にいじめを受けましたが、自分がいじめられる理由を考え、対策を講じました。家にいじめっ子を招いて漫画を読ませる「まんが外交」を行うのです。それでいじめが一時的に収まりました。しかし、漫画を読み終わったころにはいじめが再開してしまい、さらに新たな手段を考えることになります。
大阪府立北野中学校時代
- 美術の先生との出会い: 美術の岡島吉郎先生は、手塚治に絵の勉強の重要性を教えました。これにより、漫画を自由に描くためには多くの苦労が必要であることを治少年は知ることになります。
- 戦争の影響: 戦時中、治少年が好きな漫画を描くことや昆虫の研究を続けようとすると、周囲から「非国民」と見なされました。戦争は彼から好きなことを奪い、多くの人命も奪いました。級友も戦争の犠牲となったのだそうです。
- 医者へのあこがれ: 治少年は戦地には行きませんでしたが、この時代が作ったさまざまな要因で両腕を失う危機に直面しました。医者がそれを救ったことに感動し、「どうせ兵隊にとられるなら、医者になって人命を救いたい」と考え、中学卒業後に医学の道を目指すようになります。
大阪大学附属医学専門部時代
- 漫画家デビュー: 医学を学びながら、漫画家としてもデビューしました。子ども新聞で四コマ漫画の連載が始まり、戦争が終わった喜びをコメントで表現しました。
- 医者にならなかった理由: なぜ医者にならなかったのかについての対談が、本書で紹介されています。
「マングワノ セカイニモ ヘイワガキマシタヨ(略)ミナサンニ オオクリシマセウ」
引用元:78ページより
※『紙の砦』に収録されている作品(「がちゃぼい一代記」「紙の砦」「トキワ荘物語」)は、今回紹介した『手塚治虫―未来からの使者』内で複数、引用されています。一緒に買っておくといいかもしれません。
漫画家としての活躍
- 代表作の創作秘話: 『ジャングル大帝』『**鉄腕アトム』『リボンの騎士**』の創作エピソードが丁寧に紹介されています。
- 1980年代の活動: 1980年代は自身の先祖で医者の手塚良庵を描いた『**陽だまりの樹』や、二人のドイツ系少年を主人公にした『アドルフに告ぐ**』と、歴史を振り返る大作に取り組みました。その時期の対談エピソードも含まれています。
「まんがをかくのにまんがばかり読んでいたのではいけません。もっと本を読んだり、映画を見たり勉強をして、いまのまんがよりよいものをかいてください」
引用元:105ページより
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石子氏によるおすすめ10選!
この本の巻末には「読んでほしい作品」が理由つきで紹介されています。その作品を紹介します。理由については、ぜひ本の方で確認してみてください。
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他の手塚治虫の伝記
この本も含む手塚治虫の伝記本を3冊比較しました。参考にしてみてください。読書感想文を書くコツも書きましたので読書感想文を書く予定の人は、是非読んでみてください!こちらからどうぞ!
[エッセイ]私と手塚治虫~手塚治虫の伝記を読んで
感想エッセイを書きました。こちら(note)からお読みいただけます。
まとめ
この本は、子ども向けですが手塚治虫と交流があったまんが評論家・石子氏によるしっかりとした評論文です。特に楽しめるのは、すでに手塚作品に親しんでいる人かもしれません。
もちろん、手塚作品への入り口としても優れた役割を果たしている書籍です。