alcideshirata’s blog (original) (raw)

〜構成〜
1.問題と結論

2.今回の考察に至る背景

3.遺伝子の固定

3-1.特徴の固定化度合い

3-2.健全性

4.累代表記に求める機能

5.各交配パターンの各世代での遺伝子の多様性の評価方法

5-1同腹繰り返しパターン

5-2同腹→戻し→同腹→戻し→同腹パターン

5-3同腹→同腹2ペア→いとこ→同腹2ペア→いとこのパターン

5-4各交配パターンの各世代での遺伝子の多様性の評価

6.累代表記の方法提案

7.今回の考察で得られた情報のまとめ

以上の構成で以下につづります。結論を先に書きますので、時間がある人、興味がある人だけ最後まで読んでください。

1.問題と結論

問題:全兄弟間(同腹)ではない交配を背景に持つ場合の累代表記をどうすべきか。
結論:以下とすべき。
・(CB)FNとその娘(CB)F(N+1)でかけて得た個体を(CB)F(N+2)とする。
・WDどうしでも同腹でも父娘でもない組み合わせでかけて得た個体をCBF1とする。
・(CB)FNとその娘CBF1でかけて得た個体をCBF2とする。

2.今回の考察に至る背景
前項に挙げた累代表記について、今回考えるきっかけとなったのはとあるツイートである。この図のように、インラインいとこで交配させて得た個体の累代をF4とすべきかCBF1とすべきかという問題提起があった。
今回の考察をする前からした後を通じて変わらず、私はCBF1とすべきという立場である。考察前の段階でも直感的に、同腹交配繰り返しよりもインラインいとこ交配のほうが圧倒的に血が薄いと考えていた。しかし本当にそうであるか、またそのようであるとしても、同腹繰り返しとインラインいとこでどれほどの血の濃さの乖離があるのかを把握せずに声を大にして意見を述べることははばかられると考え今回の考察に至った。

3.遺伝子の固定
前項で血の濃さという言葉を使った。議論するにおいては、結論の是非に深くかかわるであろう言葉について、それを行う前に厳密に定義をすり合わせる必要がある。

ここで、私の考える昆虫の累代飼育においての血の濃さを重要視する理由を述べる。

大きく分けて二つの要素があると考える。
ひとつに、特徴の固定化度合いと、ふたつに、健全性である。
そして今回の考察ではこの二つの要素の大小を、すなわち血の濃淡とする。

3-1.特徴の固定化度合い
特徴の固定化度合いを考えるために、以下を例示する。
実験動物というものがある。例えば製薬という産業の中では生物実験を要するのだが、その際に人間を使用するよりも前の段階で、マウスやモルモットなどの小型の哺乳類を用いて実験をすることが多い。成分の種類や量に応じた作用副作用の発現の傾向を観察する目的であることが多いと考えられる。そこでは、実験に用いる生体には、均一さが求められる。薬が効きにくい個体と効きやすい個体が混ざっている可能性があるような個体たちを使って実験していては、そのデータが有意であるとするために必要な試行回数が多くなってしまうからである。
どの個体をとっても同じような寿命、耐性、身長体重であるほうがよい。
こういった問題をどう解決しているのかというと、近交系を用いることである。
近交系とは、近親交配を繰り返すことによって得られる系統である。
カニズムは後述の計算を参照することでわかる。
とにかく、近親交配を繰り返すことにより、その一族がみな限りなく似た遺伝子の個体になっていくのである。
父も母も息子も娘もみな同じような寿命、耐性、身長体重を示すようになっていく。

昆虫飼育に話を戻すと、このような近交系を昆虫で作成する場合でも同様な効果が得られると考えらる。実際に多くの飼育者が、めいめいの血統(系統)で大型化する傾向、特定の形状の固定、相撲の強さなどを得るために近交系の作出に明け暮れている。

これらの状況下では、上記の目的がどの程度達成されているかがやはり一番の問題である。

前提知識がない場合は各々で調べてもらうことになるが、遺伝子の固定をしたい場合には、ホモ接合をする必要がある。(二倍体において。そのほかについては私には知識がないため問題外とする)

人間の血液型で例えるならば、A型血統、B型血統、O型血統は理論上作成可能であるが、AB型血統は作成できない。
AA*AAの場合、子は必ずAAとなり血液型はA型となるが、血液型AB型はABの遺伝子の組でしか発現せず、AB*ABの場合、AAにもBBにもなりえるからである。
以上のように、ヘテロ接合は固定できない。

これに加えてここで大事となるのは、同じホモ接合でなければいけないという点である。例えば人間の血液型であれば、偶然に兄AA、妹BBになっていても意味がないのである。このケースは偶然にホモ接合になっているだけであって、兄妹ともにAAのホモ接合をしていなければ血液型の固定は当然されない。

これらのことから、血統において遺伝子の固定されている度合いというのは、どれだけの割合で同じホモ接合を期待できるかであると言える。

3-2.健全性
健全性とは以下のものであると考える。
近交系においてほとんどの場合課題となるのが、系統全体の健康状態と生殖機能である。
前号では特徴の固定においての遺伝子の固定の重要性を述べた。しかし、本号にて考える健全性の保存においては遺伝子の固定が悪影響をもたらすことが多い。
顕性遺伝と劣性遺伝というものがある。過去においては優性遺伝と劣性遺伝という言葉が用いられてきた。
健康や生殖機能を成長の時期は問わずとしてもいずれ損なうことが先天的に確定してしまうような遺伝子が存在していることは個々の直感に反さないと思われる。
こういった遺伝子を致死遺伝子と言う。
致死遺伝子のうち、こと近交系で問題となるのは潜性のものである。
顕性のものについては近交系であるからといって特別に問題となるものではないと考えている。その遺伝子によって死亡する前に生殖機能を獲得する可能性が一定以上あるような致死遺伝子であれば影響する可能性もあるが、これまでの飼育の経験や知見からすればそのような顕性致死遺伝子を疑わせるようなふるまいをする系統はないかあるいは少ないと考える。

系統の共通祖先となった個体が、潜性致死遺伝子を保因していると仮定すると、その遺伝子を欠かずして遺伝子の固定化が進んだ場合、その系統は全体的に平均寿命が短くなると考えられる。
なお、平均寿命と、発生から生殖能力を獲得するまでに要する期間の関係次第で大小は変化するが、いずれにしても悪影響は免れず、こと昆虫の累代においては生産性を著しく欠くこととなる。

健全性を損なわないような遺伝子のみを作為的に固定する技術がないとして、以下とする。
血統においての健全性というのは、どれだけ遺伝子の多様性を保存できているかであると言える。

4.累代表記に求める機能
前項で述べた二つの要素はまさに相反するものである。人間の寿命を無視するのであれば膨大な試行回数と期間を経ることによって両立させることができるかもしれないが、現状それを誰も目指していないし、私もそうである。

このことからして、生体を流通させる過程においては、それぞれの個体がこれらの二つの要素をどのようなバランスで有しているかの情報が本来不可欠である。

しかしながら、生体の写真などの情報からこれらを演繹する方法は確立されていないし、私はできるものではないと考えている。

これらを推定するために生体に付加する情報のうち、現状で最も有用であると考えられるのは累代表記である。累代表記によって先述の血の濃淡が一定類推できるからである。

これまでのことを総括して私は以下のように考える。

「累代表記とは、血の濃淡すなわち系統内の遺伝子の多様性の多寡を表すための指標であり、その系統がどれだけの被飼育歴を持つかといったこととは無関係である。」

5.各交配パターンの各世代での遺伝子の多様性の評価方法

各交配パターンにおいて実際にどの程度の速度で遺伝子の多様性が失われていくのか計算する。それらの計算結果を比較することで、各パターンで世代をそろえて比較した際の遺伝子の多様性の差を示す。

今回、図示の3パターンを考える。

同腹交配を4回繰り返すパターン。

同腹家系図

同腹交配で得た子を用いて戻し交配をし、そこで得た子らでの同腹交配で得た子を用いて戻し交配をするパターン。

戻し家系図

同腹交配で得た子4匹で2ペアを作り、それぞれから得た子でいとこ交配をし、そこで得た子4匹で2ペアを作り、それぞれ同腹交配をするパターン。

いとこ家系図

以下の方法で評価する。

特定の遺伝子座について各世代の(各)ペアでもつ4つの遺伝子中に存在する遺伝子の種類数の期待値を血の薄さとする。

なお、この計算パートでは、簡単のために同腹ではない交配の場合でも統一して累代をFN→F(N+1)の方式で表記する。

例.WD♂AB*WD♀CDから得たF1個体の取りうる遺伝子の組のパターンとその確率は以下である。
AC=AD=BC=BD=1/4
F1同腹のペアで交配したとき、ペアでABCDの遺伝子4種を保因している(AC+BDなど)確率は1/4、3種のみを保因している(AC+ADなど)確率は1/2、2種のみを保因している(AC+ACなど)確率は1/4である。
よってF1ペアで保因している遺伝子の種数の期待値は4/4+3/2+2/4=3となる。WDペアからF1ペアにかけて期待値は1減少しており、血が濃くなったと言える。

5-1同腹繰り返しパターン

同腹繰り返しパターンの計算方法
各世代がとる遺伝子パターン(以下セットとする)について、遺伝子の重複の仕方だけを考えれば良い。例えばF1がAC+ADになった時とAC+BCになった時や、AA+ABになった時とBB+BCになった時を区別する必要が無い。最低限の区別をした場合以下の7セットに分類できる。それぞれのセットについて交配した時、次世代ではそれぞれ一定の確率で特定のセットに分裂するか、分裂せずに全量が別の1セットに変換される。
各セットが次世代に残すセットと確率は以下である。

ペア→次世代同腹ペア確率表
Aセット(AB+CD)
→Aセット:1/4
→Bセット:1/2
→Eセット:1/4

Bセット(AB+AC)
→Bセット:3/8
→Cセット:1/8
→Dセット:1/4
→Eセット:3/16
→Gセット:1/16

Cセット(AA+BC)
→Bセット:1/2
→Eセット:1/2

Dセット(AA+AB)
→Dセット:1/2
→Eセット:1/4
→Gセット:1/4

Eセット(AB+AB)
→Dセット:1/2
→Eセット:1/4
→Fセット:1/8
→Gセット:1/8

Fセット(AA+BB)
→Eセット:1

Gセット(AA+AA)
→Gセット:1

①WDペア→F1
→Aセット:1/4
→Bセット:1/2
→Eセット:1/4
期待値:4/4+3/2+2/4=3

②F1→F2
→Aセット:1/16
→Bセット:1/8+3/16=5/16
→Cセット:1/16
→Dセット:1/8+1/8=1/4
→Eセット:1/16+3/32+1/16=7/32
→Fセット:1/32
→Gセット:1/32+1/32=1/16
期待値:4/16+15/16+3/16+2/4+14/32+2/32+1/16=39/16≒2.44

③F2→F3
→Aセット:1/64
→Bセット:1/32+15/128+1/32=23/128
→Cセット:5/128
→Dセット:5/64+1/8+7/64=5/16
→Eセット:1/64+15/256+1/32+1/16+7/128+1/32=65/256
→Fセット:7/256
→Gセット:5/256+1/16+7/256+1/16=11/64
期待値:4/64+69/128+15/128+10/16+130/256+14/256+11/64=133/64≒2.08

④F3→F4
→Aセット:1/256
→Bセット:1/128+69/1024+5/256=97/1024
→Cセット:23/1024
→Dセット:23/512+5/32+65/512=21/64
→Eセット:1/256+69/2048+5/256+5/64+65/1024+7/256=463/2048
→Fセット:65/2048
→Gセット:23/2048+5/64+65/2048+11/64=75/256
期待値:4/256+291/1024+69/1024+42/64+926/2048+130/2048+75/256=469/256≒1.83

⑤F4→F5
→Aセット:1/1024
→Bセット:1/512+291/8192+23/2048=399/8192
→Cセット:97/8192
→Dセット:97/4096+21/128+463/4096=77/256
→Eセット:1/1024+291/16384+23/2048+21/256+463/8192+65/2048=3281/16384
→Fセット:463/16384
→Gセット:97/16384+21/256+463/16384+75/256=419/1024
期待値:4/1024+1197/8192+291/8192+154/256+6562/16384+926/16384+419/1024=1693/1024≒1.65

⑥同腹繰り返しパターンの期待値の遷移
4→3→39/16≒2.44→133/64≒2.08→469/256≒1.83→1693/1024≒1.65

5-2同腹→戻し→同腹→戻し→同腹パターン

戻しのパターンも同腹と殆ど同じ要領での計算となる。
ペアから戻しの組を作成する場合の確率表も加えて使用することになる。

ペア→戻し確率表
Aセット(AB+CD)
→Bセット:1

Bセット(AB+AC)
→Bセット:1/2
→Dセット:1/4
→Eセット:1/4

Cセット(AA+BC)
→Bセット:1/2
→Dセット:1/2

Dセット(AA+AB)
→Dセット:1/2
→Eセット:1/4
→Gセット:1/4

Eセット(AB+AB)
→Dセット:1/2
→Eセット:1/2

Fセット(AA+BB)
→Dセット:1

Gセット(AA+AA)
→Gセット:1

①WDペア→F1
→Aセット:1/4
→Bセット:1/2
→Eセット:1/4
期待値:4/4+3/2+2/4=3

②F1→F1+F2
→Bセット:1/4+1/4=1/2
→Dセット:1/8+1/8=1/4
→Eセット:1/8+1/8=1/4
期待値:3/2+2/4+2/4=2.5

③F1+F2→F3
→Bセット:3/16
→Cセット:1/16
→Dセット:1/8+1/8+1/8=3/8
→Eセット:3/32+1/16+1/16=7/32
→Fセット:1/32
→Gセット:1/32+1/16+1/32=1/8
期待値:9/16+3/16+6/8+14/32+2/32+1/8=17/8≒2.13

④F3→F3+F4
→Bセット:3/32+1/32=1/8
→Dセット:3/64+1/32+3/16+7/64+1/32=13/32
→Eセット:3/64+3/32+7/64=1/4
→Gセット:3/32+1/8=7/32
期待値:3/8+26/32+2/4+7/32=61/32≒1.91

⑤F3+F4→F5
→Bセット:3/64
→Cセット:1/64
→Dセット:1/32+13/64+1/8=23/64
→Eセット:3/128+13/128+1/16=3/16
→Fセット:1/32
→Gセット:1/128+13/128+1/32+7/32=23/64
期待値:9/64+3/64+46/64+6/16+2/32+23/64=109/64≒1.70

⑥同腹→戻し繰り返しパターンの期待値の遷移
4→3→2.5→17/8≒2.13→61/32≒1.91→109/64≒1.70

5-3同腹→同腹2ペア→いとこ→同腹2ペア→いとこのパターン

いとこのパターンではこれまでの二つと少し計算の雰囲気が変わる。
F1ペアからF2個体を4頭得て、それを2ペアに分けていくとき、当然F2個体それぞれの持っている一対の遺伝子座は左右ともに、F1ペアの合計4つの遺伝子座に保因していた各遺伝子の割合をそのまま確率として引き継ぐ。
例えばF1ペアがAA+ABであれば、F2個体は各遺伝子座にAを3/4の確率、Bを1/4の確率で保因することになる。これは二つのF2ペアから1頭ずつF3をとるときにも同じことがいえるため、F3個体でも期待値としてAを3/4個、Bを1/4個保因することになる。

つまりFNのセットから直接F(N+2)個体の遺伝子の組と確率が計算できる。また、FNのセットで保因している各遺伝子の個数のみに依存してF(N+2)のセットが決定されるため、FNセットもF(N+2)セットもA~Gの7セットに分類する必要はなく、A,BorC,D,EorF,Gの5グループへの分類でよい。

ペア→2ペア→いとこ確率表
Aセット(A=B=C=D=1/4)
→Aセット:(3/4)*(1/2)*(1/4)=3/32
→BorCセット:(3/4)*(1/2)+(1/4)*(3/4)*(1/2)*2=9/16
→Dセット:(1/4)*( (1/4)*(3/4)*2)*2=3/16
→EorFセット:(3/4)*(1/8)+(1/4)*(3/16)=9/64
→Gセット:(1/4)*(1/16)=1/64

BorCセット(A=1/2,B=C=1/4)→(AA=AB=AC=1/4,BB=CC=1/16,BC=1/8)
→BorCセット:(1/2)*(1/4)+(1/2)*(1/8)*2+(1/4)*(1/8)*2+(1/2)*(1/16)*2=3/8
→Dセット:(1/4)*(1/2)*2+(1/8)*(3/8)*2=11/32
→EorFセット:(1/2)*(1/4)+(1/8)*(1/8)+(1/4)*(1/8)*2+(1/8)*(1/16)=27/128
→Gセット:(1/4)*(1/4)+(1/8)*(1/16)=9/128

Dセット(A=3/4,B=1/4)→(AA=9/16,AB=3/8,BB=1/16)
→Dセット:15/32
→EorFセット:27/128
→Gセット:41/128

EorFセット(A=B=1/2)→(AA=BB=1/4,AB=1/2)
→Dセット:1/2
→EorFセット:3/8
→Gセット:1/8

Gセット(A=1)→(AA=1)
→Gセット:1

①F1→F2*2ペア→F3ペア
→Aセット:3/128
→BorCセット:9/64+3/16=21/64
→Dセット:3/64+11/64+1/8=11/32
→EorFセット:9/256+27/256+3/32=15/64
→Gセット1/256+9/256+1/32=9/128
期待値:(12+126+88+60+9)/128=295/128≒2.30

②F3→F4*2ペア→F5ペア
→Aセット:9/4096
→BorCセット:27/2048+63/512=279/2048
→Dセット:9/2048+231/2048+165/1024+15/128=405/1024
→EorFセット:27/8192+567/8192+297/4096+45/512=477/2048
→Gセット:3/8192+189/8192+451/4096+15/512+9/128=955/4096
期待値:(36+1674+3240+1908+955)/4096=7813/4096

5-4各交配パターンの各世代での遺伝子の多様性の評価

5-1から5-3にかけて、3パターンの家系図における遺伝子の固定の過程を計算した。ここではそれらにどの程度の差があるかに着目して評価していく。

全兄弟となるペアの場合を、(CB)FN♂*(CB)FN♀→(CB)F(N+1)とする。
全兄弟の掛け合わせのパターンを基準として評価する。

そのために、全兄弟での遺伝子の固定の過程を変数x(累代をFNとし、N=xとする)の何らかの関数f(x)でフィッティングする。

どのような関数にフィッティングするかが問題となる。

xy平面にf(x)を描写した際、下に凸でy=1を漸近線とし、それ以外の漸近線が存在しないことは自明であり、この段階でy=1+g(x), lim[x→∞] g(x)=0,g(x)は単調減少であるとわかる。さらに直感的にも、これまでのデータからもg(x)の微分関数 g'(x)が単調増加であることも自明である。これらの条件から
g(x)=a*b^( (x+c)^d)
a,b,c,d∋ℝ とする。

同腹パターンの期待値(累代をFx、Fxにおける遺伝子の種数の期待値をyとして)

x=1 y=3
x=2 y=39/16=2.4375
x=3 y=133/64=2.078125
x=4 y=469/256=1.83203125
x=5 y=1693/1024=1.6533203125

これを
f(a,b,c,d,x)=1+a*b^( (x+c)^d)
a,b,c,d∋ℝ
のプロットであるとして、gnuplotでフィッティングしたa,b,c,dが下記である。
a=4.745206431860928
b=0.5237555033380531
c=0.5581143491813882
d=0.6530692534725611

念のため検算もした。

フィッティングした関数のグラフ

こちらの関数のグラフはこうであった。イメージ通りの形となった。

このグラフは同腹交配の繰り返しによって遺伝子が欠落していく過程を、これまでの離散のプロットから、連続した関数への変換を行ったものとなる。
(余談だが、x=0の場合はプロットとして使用する必要はないと考えたため使用しなかったのだが、f(0)=4.05030982965となったため、不要ではあるものの0≦x<1の範囲でも一定の精度があることも確認できた。
)

実際には累代の数字が少数になることはないが、同腹繰り返し以外のパターンの各世代の遺伝子種数の期待値pをこの関数の値に代入することで、それが同腹繰り返しに換算した場合のR世代目(Rは実数)であるととらえることができる。これはxy平面上でy=pの直線とf(x)の交点のx座標を求めることと同値である。

f(x)をxについて解いたものが下記である。
x=( (log((y-1)/a) )/logb)^(1/d)-c
=( (log( (1.6533203125-1)/4.745206431860928) )/log0.5237555033380531)^(1/0.6530692534725611)-0.5581143491813882

yに代入する値とその時上記の式によるxの値の組はこれらである。

同腹→戻し繰り返しパターンの期待値
F1ペア:y=3,x≒1(グラフ上省略)
F1+F2:y=2.5,x≒1.86→同腹のF1.86相当
F3ペア:y=17/8,x≒2.85→同腹のF2.85相当
F3+F4:y=61/32,x≒3.66→同腹のF3.66相当
F5ペア:y=109/64,x≒4.69F4.69相当

戻し換算

同腹→同腹2ペア→いとこ→同腹2ペア→いとこのパターンの期待値
F1ペア:y=3,x≒1(グラフ上省略)
F3ペア:y=295/128,x≒2.32→同腹のF2.32相当
F5ペア:y=7813/4096,x≒3.65→同腹のF3.65相当

いとこ換算

上記の結果となった。
戻し交配は、同腹交配とそこまで大きな差はなく、いとこ交配は同腹とかなりの差があることが分かった。特にいとこの場合は、5世代目でも同腹でいうところの4世代目よりも遺伝子の固定がされていない。

6.累代表記の方法提案
前項までで、同腹交配と戻し交配では大きな差がないこと、同腹交配と戻し交配のふたつに比べていとこ交配は遺伝子の固定の効果が著しく薄いことが分かった。

そこで私の思う妥当な累代表記方法を提案する。

・(CB)FN同腹ペアでかけて得た個体を(CB)F(N+1)とする。
・(CB)FN♂とその娘(CB)F(N+1)♀でかけて得た個体を(CB)F(N+2)とする。
・WDどうしでも同腹でも父娘でもない組み合わせでかけて得た個体をCBF1とする。
・(CB)FN♂とその娘CBF1♀でかけて得た個体をCBF2とする。

これらのルールで記述することで、同腹交配と戻し交配のみの家系図であれば、(W)FN個体はWDからの、CBFN個体は家系図において直近のCBF1にとっての親にあたるペアからの、遺伝子固定の進捗をある程度推定できる。

以下は普及させることが限りなく難しいと思われるため、語るだけの理想になるが、これらも加えることでより累代表記から血の濃さを類推する制度をあげられると考える。

戻し交配についてはかっこ書きを追加する。
例えばF1+F2で交配したF3の場合、F3(1+2)と表記する。

同腹でも戻しでもない組み合わせの場合、両親の累代を表記する。
例えば同腹F1ペア→F2ペア*2→F3ペア→CBF1同腹の場合
CBF1(F3*2)
ただし、これだけでは親のF3ペアがインラインなのか別系統なのか区別できない。
さらに詳細に書く場合、
CBF1(F3インラインいとこ)や、
CBF1←F3*2←F2*4←F1*2などとして表記したり、いっそのこと家系図を画像として添付するなどの方法が考えられる。

しかし飼育界隈全体でそろえていくことは限りなく不可能に近いためやはり初めに挙げた4点のルールまでを普及させるべきだとの結論に至った。

7.今回の考察で得られた情報のまとめ
・同腹交配の繰り返しでは以下のように遺伝子が固定されていく。
x=1 y=3
x=2 y=39/16
x=3 y=133/64
x=4 y=469/256
x=5 y=1693/1024

・上記を連続する関数に近似する式
f(a,b,c,d,x)=y=1+a*b^( (x+c)^d)
a=4.745206431860928
b=0.5237555033380531
c=0.5581143491813882
d=0.6530692534725611

(半兄弟パターンも途中まで計算しておりましたが、いとこの場合よりも計算が煩雑になるため、いったん中断し、今回の考察を完成させました。いつか半兄弟も計算するかもしれません。半兄弟はトリオになる世代について、♂がとりうるすべての遺伝子の組ひとつずつに対して、それにかける姉妹がとりうる遺伝子のすべての組での次世代を計算しなければならないため、計算する量が爆発的に増えてしまいました)