『ワイルド・スピード SKY MISSION』 安住の地へ (original) (raw)

ジェームズ・ワン監督、ヴィン・ディーゼルポール・ウォーカードウェイン・ジョンソンミシェル・ロドリゲスジョーダナ・ブリュースタータイリース・ギブソンクリス・“リュダクリス”・ブリッジスエルサ・パタキージェイソン・ステイサムカート・ラッセルナタリー・エマニュエルジャイモン・フンスートニー・ジャーロンダ・ラウジー出演の『ワイルド・スピード SKY MISSION』。

ドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)とブライアン(ポール・ウォーカー)たち“ファミリー”はロンドンでオーウェン・ショウ(ルーク・エヴァンス)との戦いに勝利したが、オーウェンの兄で元イギリス特殊部隊員のデッカード(ジェイソン・ステイサム)によってアメリカ外交保安部のホブス(ドウェイン・ジョンソン)が負傷、東京にいたハン(サン・カン)が殺されてブライアンの家も破壊される。デッカードを追う秘密工作組織の男“ミスター・ノーバディ”(カート・ラッセル)から「神の目」と呼ばれる監視システムのチップの回収を依頼されたドミニクと仲間たちはアゼルバイジャンに飛び、空から地上への車での降下を決行する。

「ワイルド・スピード」シリーズ7作目。

前作『

EURO MISSION』からの直接的な続きなので、登場キャラの関係を知っておくためにも最低限前作は観ておいた方がいいと思います。

僕は映画館で観るのは前々作『

MEGA MAX』から。

それ以前の作品はTVで放映されているのをちょこちょこ観てる程度。

それではこれ以降、この映画と前作『EURO MISSION』の

ネタバレがありますので未見のかたはご注意ください。

ポール・ウォーカーを偲んで。

2013年11月、ヴィン・ディーゼルとともにこの「ワイルド・スピード」シリーズの顔でもあったブライアン・オコナー役のポール・ウォーカーが交通事故で亡くなったというニュースを見て、悪い冗談に思えたのだった。

だって、映画の中じゃどんな危険な目に遭っても生きていた彼が、現実の世界ではあまりにもあっけなくその命を散らしてしまったのだから。

前作(本篇とエンドクレジット)では主要キャラが2名死んでしまって、だから僕は感想で「登場人物をまるでコマのように簡単に死なせるのはやめてほしい」と苦言を呈したんだけど、そしたら現実にポール・ウォーカーが事故死、ってどんだけ運命は残酷なんだ、と。

わかりきったことではあるけれど、作り物の映画と現実がいかに違うかということや、本物の人間の脆さをあらためて実感したのです。

ちなみにポール・ウォーカーを死に至らしめた交通事故は撮影中ではなくて、プライヴェート時に友人の運転する自動車で起きたとのこと。

僕はP・ウォーカーの出演作は「ワイルド・スピード」シリーズ以外はほとんど観ていないのでとてもファンとはいえないけど、それでも「ワイスピ」シリーズにはそれなりに愛着があって最近では2年に一度のお祭りみたいになっていたので、シリーズも10年以上続いて俳優としての円熟味も増し(シリーズ初期の映像を観るとポール・ウォーカーもヴィン・ディーゼルもほんとに若い)まさにこれからという時に最新作の撮影半ばにしての彼の突然の死にはショックを受けたのでした。

結局、一時中断したものの撮影は再開されて映画は完成。こうして日の目を見た。

残されていたシーンの撮影はポールの2人の弟が代役を務めている。


右からポール、ケイレブ、コーディのウォーカー3兄弟。

当然ながら映画のシナリオはポール・ウォーカーの死を想定して書かれたわけではないので、彼が演じるブライアンが劇中で死ぬことはない。

もしもそんなふうに作り変えたのなら悪趣味過ぎるけど、映画の作り手はさすがにそこまで無神経ではなかったようで、劇中でブライアンは最後まで無事ながらもヴィン・ディーゼル演じるドミニク・トレットやチームのメンバーたちとはこれでお別れ、と示唆する演出になっている。

今回初めてこのシリーズを観る、という人や事情を知らない人にはなぜラストがまるでブライアンとの今生の別れみたいに描かれているのかわからないかもしれないけど、事実ポール・ウォーカーとはこれで本当にお別れなので、そこはシリーズを観続けてきた人には目頭が熱くなるようなエンディングになっているんですね。

また、今回のエンドクレジットには前作のような「さらに続きます」的な“おまけ映像”はありません。

そのあたりも作り手はちゃんと配慮していてよかった(おそらくシリーズ自体は今後も続くと思われるが)。

そんなわけで主要キャラを演じた俳優の死を前もって知っている身としてはどうしたって観ながら感傷的になってしまうんですが、映画自体はド派手なカーアクション(と、おねえさんたちのケツ)てんこ盛りの“いつもの奴”で、スタローンの「エクスペンダブルズ」シリーズ同様に大真面目に語るようなストーリーではないし、登場人物たちもいくら高所から落ちても車ごと大破しても死なない荒唐無稽の極みみたいな映画。


終盤はロック様無双

Twitterで「このシリーズでは登場人物は身体が四散しないと死んだとは限らない」みたいなツッコミをしているかたがいて笑ったんだけど、まさしくその通りで、4作目『MAX』で死んだはずのミシェル・ロドリゲス演じるレティは前作で復活したし、今回も前作の敵ルーク・エヴァンスが冒頭で病院に入院してて「死んでなかったのかよ」と笑ってしまった。

前作で死んだことになっている他の人たちだって、いつまた「実は生きていた」ということで再登場するかわからない。

とりあえず今回は主要キャラが死んだり生き返ったりしなかったんで(冒頭でハンは死んじゃいますが)ちょっとホッとしたけど。

さっき述べたように、この映画は物語を細かく分析するような類いの作品じゃないしツッコミ入れだすときりがないので、わりと表面的な感想にとどめるつもりです。

まず、僕は前作を映画館で観た時にエンドクレジット直前にトイレに立ったためにジェイソン・ステイサムの出演場面を観逃す、という痛恨のミスをやらかしてしまいまして(いつもは途中で席を立つことなんて絶対ないんだけど、その時は尿意が限界に達していたので^_^;)、そのため今回は事前にトイレに行って飲み物も一切口にせず万全の態勢で臨んだために無事最後まで観ることができました。

本作には3人のハゲが登場(厳密にいうと主要キャラにはもう一人スキンヘッドがいるけど)。

トランスポーター」シリーズなどで主役を務め、「エクスペンダブルズ」シリーズではスタローンとアツアツぶりを見せている“動けるハゲ”ジェイソン・ステイサムが悪役、というだけで無条件に観る価値があるわけですが、彼がヴィン・ディーゼルとロック様ことドウェイン・ジョンソンそれぞれとタイマン張ります。

正直なところ、ヴィンヴィン兄貴もロック様もとにかくぶん殴りまくるパワーファイターで技巧的な技を繰りだすタイプではないのでちょっと単調な感じもしちゃったんですが、でもともかく殴り合ってる相手がステイサムなんでやっぱりアガる。

この人が演じるデッカードは、もうとても人間とは思えないキャラで(最後まで観ていればわかる)、劇中でなぜかドミニクたちの前にいきなり姿を現わして襲ってくる。

なんで彼らの居場所がわかったのかとか、そういう理屈は一切無視。『エクスペ2』におけるチャック・ノリスみたいに神出鬼没。

何がおかしいかって、ドミニクたちはデッカードの行方を捜すために「神の目」と呼ばれる監視プログラムを手に入れようとするわけだけど、行方を捜すも何も相手の方から襲ってきてくれるんだから、一体なんのためにアゼルバイジャンやアブダビまで行ってんだかよくわかんなくなってくるのだ。

しかもドミニクもブライアンも毎回標的であるはずのデッカードから逃げる一方。

アゼルバイジャンで助け出した「神の目」の開発者ラムジー(ナタリー・エマニュエル)を捕らえていたジャカンディ(ジャイモン・フンスー)率いる武装組織がデッカードとツルんでいたことが後半になってわかるので、一応中盤でのドミニクたちの行動には意味があるんだけど。

最初からデッカードとジャカンディはグルだった、ってドミニクたちにも観客にもわからせておいた方がよかったんじゃないのかな。

それと、レティは前作でドミニクと一緒にいた過去の記憶を失っていることがわかったんだけど、今回もそのことで悩んでいる。

自分の記憶が欠落していることで恋人であるドミニクとの想い出が共有できないから。

でもそのあたりの問題は次第にどっかいっちゃって、途中で「記憶が戻った」とか言ってる。

このおねえさん、第4作で爆発で吹っ飛ばされたショックで記憶を失い、今回もなんかちょっとしたショックで元に戻ってと、よくまぁコロコロと(;^_^A

観客のこちらはポール・ウォーカーのこととジェイソン・ステイサムのことで気を取られているので、レティさんの記憶のことなんかほんとどーでもよくて。

今回カート・ラッセルが出演していてドミニクたちと共闘するんだけど、なんとなく彼の物腰が怪しいんでいつ裏切るんだろうと思ってたら、最後まで味方のままだった。

彼が演じるミスター・ノーバディとドミニク役のヴィン・ディーゼルがストーリーとはまったく関係ないビールの話を唐突にしだすんで可笑しかった。

「コロナビールをもらう」とか、「ベルギー産のエールは旨い」とかw

あまりにわざとらしいタイアップなんでギャグなのかと思った(※ドミニクは以前からずっとコロナビールを愛飲していたそうです。失礼いたしました)。

しかし、このミスター・ノーバディさんも傷を負ってドミニクたちの邪魔になると速攻自ら車を降りて消えるのがスゴい。

ほんとにキャラクターがコマのようだ(;^_^A

熱烈なファンにとっては1分でも長くお馴染みのキャラクターたちを見ていたい、というのがあるのかもしれないけど、このシリーズはどうも回を重ねるごとに上映時間が長くなってて(おかげで映画のハシゴができなかったYO!^_^;)さすがに途中でちょっとくたびれてきてしまった。

とりあえずアブダビの超高層ビルを車で突っ切りたいからあの場面を強引にぶっこんだだけでそこにはたいして必然性などないし、最後はドローン(無人機)が攻撃してきてビルも倒壊。ストーリーだけ取り出すとこんなにご都合主義な映画もない。

でも映像で楽しませてくれるから、そこは不問にしましょうね、と。

この映画を観ていて、やはりVFXの精度は重要だなぁ、と思いました。

ちょっと前に観たトニー・ジャーの『マッハ!無限大』ではVFXがこの映画ほど金がかかっていないのでどうしても合成がバレバレで見劣りしちゃったんだけど、実際にやってる工程は両者ともそんなに違わないわけで。

ただ、完成品が実写のように見えるかどうかで評価は俄然変わってくるんだよね。

このシリーズは、ここ最近の作品は特にVFXを結構丁寧にやってて、3作目の『TOKYO DRIFT』(今回、『TOKYO DRIFT』で主人公を演じていたルーカス・ブラックも顔を見せている)もオープンセットと合成によって作られた渋谷の交差点でのカーアクションがまるで実景のように撮られていたし、ドミニクたちが車で高所から落下する時もとてもリアルに見える。

前作では輸送機の爆発炎上がまるで本物のようだった。

今回は中盤でポール・ウォーカー演じるブライアンが崖で武装組織の装甲バスみたいな乗り物から脱出して間一髪でレティの運転する車に飛び移るという場面で、素晴らしい効果をあげていた。

単にCG使う、ってんではなくて極力撮影現場で撮れるものを撮っている(メイキング映像ではほんとに車を空中から落下させていた)ので、やはり空気感が違うんですよね。

まるでドラクエのパーティみたいに仲良く1列になって走る車たちがカワイイ。

あえて気になった箇所を挙げると、ブライアンの家が時限爆弾で爆破されるところはもうちょっと合成頑張ってほしかった。

あと、前作もそうだったけどクライマックスが夜なので画面が暗くて見づらい。

VFX満載の場面でもあるからバレを目立たせなくするためとか理由はあるのかもしれないが、せっかくのアクションが暗過ぎてよく見えないのはもったいない。

『MEGA MAX』での金庫を引っぱっての大爆走は明るい日中だったし前作の中盤での戦車大暴走だって迫力満点だったから、むしろクライマックスこそ明るいところでやってもらいたいなぁ。

それに攻撃用のドローンは現実に存在するものではあるんだけれど、ドミニクたちがそれに追いかけられてミサイルまで撃たれちゃうところまで行くと、もうSFアクションになってしまってこのシリーズにかろうじて残っていた視覚的なリアリティまでがなくなっちゃうので、これ以上空想科学的な兵器は出してほしくないなぁ、って思った。そうなると別のジャンルになっちゃうから。

今回のクライマックスは、このシリーズが守るべき世界観としてはかなりギリギリだったんじゃないかな。

トニー・ジャーがジャカンディの部下役で出ていてブライアンと闘ってたけど、予想通り前作のジョー・タスリム(『ザ・レイド』)同様にアジア系アクション俳優枠での出演。

ブライアンに「遅いぞ」と言われて高所から落ちてご臨終。

主演映画もあるスターなのにハリウッドだとこの扱いなのね、という寂しさはあるけど、ブライアンと絡んで結果的にポール・ウォーカーに華を持たせるキャラクターになってるわけだし、ハリウッド映画で闘ってるトニー・ジャーの姿が見られたことは率直に嬉しい(劇中での彼のまともな画像が1枚もないのは納得できないが)。

インターネットにはトニーが劇中では絡んでいないヴィン・ディーゼルとアクションのトレーニングみたいなことをしている画像があったりするんで、アクション監督的なこともしてるのかな?(※追記:2017年公開の『トリプルX:再起動』でヴィン・ディーゼルはトニー・ジャーと共演しているので、そのトレーニングだったのかも)

そして格闘界からは前作のジーナ・カラーノに続いて、今回は『エクスペ3』でステイサムとも共演していたロンダ・ラウジーが参戦。

ムッチムチの身体でまたしてもミシェル姐さんとボコり合ってました。

でもちょっとあっさりし過ぎだったかなぁ。もうちょっと粘ってくれてもよかったのに。ちょっと高いところから落ちたぐらいじゃ、彼女だったらなんてことないでしょうに。

できれば今回もあのセクシーな腋の下を見せてほしかったw

まぁ、このシリーズでは身体が四散してなければ死んだとは限らないので、ジーナ・カラーノと一緒にまた再登場してくれることを望みます(^o^)

あんだけ大暴れしたジェイソン・ステイサムは最後は殺されることなく収監されて、「こんなところ簡単に脱走してやる」と捨て台詞吐いてました。

だからポール・ウォーカーは亡くなってしまったけれど、シリーズはまだ続くのかもね。人気シリーズの宿命という奴ですか。

「エクスペンダブルズ」の3作目が僕はちょっと残念だったのでこちらに期待していたんですが、前作に比べて若干息切れしてる感もあった。

いや、普通に楽しかったしP・ウォーカーの遺作に対して別にとやかく言いたくはないですが。

とりあえず、この映画を観ると「車は空を飛べる」と思えるw

ブライアンは「家族」である妻ミアと幼い息子ジャック、そして新たに宿った命とともに生きることを選び、ドミニクたちはその姿に彼との別れを予感するのだった。

この場面はグッとくるんですが、知らない人には夢を壊すようで申し訳ないけど、あの浜辺で妻と子どもと戯れているブライアンを演じているのはポール・ウォーカーではなくて、弟のケイレブ・ウォーカー。

また、車で去っていくドミニクに追いついたブライアンが「黙って行っちまうのか?」と話しかけて二人が目と目で別れを告げ合う場面も、ブライアンの顔だけを過去の映像から抜き出して合成している。

言われなきゃわからないぐらい自然だけど。

映画の流れからするとちょっと唐突な感じもするんだけど、そりゃそうだよね。映画の撮影中は誰もこの作品でポールとお別れになるなんて思っていなかったんだから。

ブライアンがこのシリーズから離脱したということは、さらに続篇が作られても自動的にジョーダナ・ブリュースター演じる妻のミアも今後は出てこないということで(ドミニクの妹であるミアだけが登場して夫のブライアンが不在のままでは不自然過ぎるし)、彼女は強制的に映画から退場させられてしまいましたね。

もちろんご本人はポール・ウォーカーとの別れを悲しみこそすれ、そんなこと気にしたりしないだろうけど。

できれば今後もポールが演じたブライアンを劇中で死んだことにはしないでほしいな。

それにしても「映画」ってほんとに不思議なものですね(なんか水野晴郎先生みたいですが)。

だって、演じた俳優本人が亡くなったあとに映画は完成して、今こうしてスクリーンの中で彼は生きている。

それはたとえば演劇やミュージシャンのライヴコンサートなどではありえないことで、「映画」だからこそ実現しえた奇跡だ。

ポール・ウォーカーは残念ながらこの世を去ったけれど、僕たちはいつだって彼の残した映画を観ることができる。

輝ける星(スター)のひとつになった彼は、今では愛車を転がして天空を駆け巡っているのだろうか。

あらためてポール・ウォーカーさんのご冥福をお祈りいたします。See You Again.

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