あゝ残念!雨に打たれ体も心も冷え切る3周目出発―道隆寺77~天皇寺79白峰寺81根香寺82⑫ (original) (raw)
■3章:遍路3周目■深まる絆
3. 一難去ってまた一難
DAY75-5
全身脱力したまま心で叫ぶ。
ああ・・・。
息も苦しい・・・。
くっそーーーーー!!!
もう、駄目だ・・・。
ゴンちゃん「なあ、頼むわあ!俺の気持ちを受け止めてくれよ!」
私「・・・。」
ゴンちゃん「なあって!」
私「・・・。」
ゴンちゃん「俺なあ、ほんまに大事にするから。俺、お前みたいなやつに会ったことないねん!これからも出会えない程やと思ってんねん!」
私「だから、ゴンちゃんは、友達として好きだと何回も言ってるでしょうがーーー!!」
ゴンちゃんの力が一瞬緩んだすきに、私は、もうこれ以上出せないと言う程の力を振り絞って、ゴンちゃんを引き離そうと暴れる。
ゴンちゃん「なんで、わかれへんねーーーん!!頼むから、わかってくれよーーー!!」
私「痛いーーー!!!やめろーーーーー!!!」
私は、更に10分程だろうか、暴れに暴れまくった。
私「あああああああーーーーーー!!!くっそーーーーー!!!離せーーーーー!!バカーーー!!」
とうとう、私は、ゴンちゃんから離れることができた。
私「ゴンちゃん!私は、もう寝るよ!友達でいてくれるなら別にいいよ。今夜の事は忘れてやる!」
私は、そのまま振り返りもせず、遍路小屋へと戻って行った。
遍路小屋で一人考える。
そうかあ・・・。
残念だけど、ゴンちゃんのためにも、相当ゴンちゃんとの距離を開けなければ・・・。
社長さんや奥さんが、もう少しいるようにとも言っていたけど、明日の朝一には、出発しよう。
ああ・・・。
別にゴンちゃんの事は嫌いじゃないのに・・・。
友達でさえいてくれれば、ゴンちゃんは好きなのに・・・。
残念だ・・・。
DAY76-1
私は、朝6時に遍路小屋で目覚めると、生憎の雨が降っていた。
雨かあ・・・。
社長さんや奥さん達がゆっくりして行くようにと言ってくれているのだし、こんな雨の日にわざわざ3周目に出発しなくてもいいようなものなのだが、とにかく昨夜のような状況を長引かせたくはなかった。
着々と出発の準備をしていると、ゴンちゃんが遍路小屋へやって来た。
気まずい気持ちや寂しい気持ちが入り混じったような複雑な顔をしていたので、何事もなかったかのように声をかけた。
私「おはよう。」
ゴンちゃん「あ・・・。おはよう。出発すんの?」
私「うん。だって、あんまりのんびりしてると高ちゃんの49日に戻ってこれなくなるよ。」
ゴンちゃん「それもそやなあ。今日は、11月3日やから、高ちゃんの49日までは、あと22日しかないもんなあ。」
私「そうだよ。」
ゴンちゃん「でも、わざわざこんな雨の中、出発せんでも・・・。」
私「確かに、晴れた日に出発したいけど、少しでも進んでおかなきゃ、本気で間に合わなくなるから。」
ゴンちゃん「それもそやなあ。でも・・・。行ってしまうんやなあ。俺・・・、寂しいなあ。」
私「ははは!!大丈夫よ!今日もまた楽しいお遍路さん達がやって来るから、楽しくなるよ!」
ゴンちゃん「まあ、それはそうやけど・・・。」
私「じゃあ、準備できたから行くよ!」
ゴンちゃん「そうかあ。わかった!あ、俺もな、仕事であちこちの寺へ行ってたりするから、また何処かで会うと思うで!」
私「そうなの?」
ゴンちゃん「うん。そうやあ。やから、またどっかで会ったら、合流しよや!」
ゴンちゃんも何処か私に嫌われないよう、友達のように精一杯振る舞おうとしているようにも見える。
私「じゃあね!ゴンちゃん!」
私は、サッサと自転車を漕いで朝7時半にマントラを後にした。
昨夜の騒動で両腕が筋肉痛だ。
お蔭で疲れも溜まっていたのだけど、とにかくここから離れて、違う場所へ移動して今日の所は一旦落ち着きたい。
こんな形で始まってしまう3周目。
気持ちは、残念で悲しさと寂しさがこみ上げる。
3周目は、別格無しの88ヶ所のみで、多少の順番を変えながらの基本、順打ちにしようと思っていた。
雨の中、直ぐに77番道隆寺へ到着してお参りを済ませ、78番郷照寺へ向かう。
ああ、いよいよ、3周目が始まった!
そして、もう1日くらいマントラでゆっくりしている間に、念珠玉を買い忘れている別格の海岸寺へ行って、念珠玉を買いたしておくつもりでいたのに、突然出発を決めてしまったので、結局、まだ買えていない事に気が付いた。
そうか・・・。
あと、一つなのに・・・。
買えなかったな・・・。
次回、高ちゃんの49日で戻って来る時には、絶対買わなきゃ・・・。
なんだかボーっとしている状態で、雨の中、78番郷照寺を打つ。
今日は、体力的にも天候的にも精神的にも元気が出ない。
ただ、ボーっとしている。
駄目だ!
今日のところは、気持ちも身体も場所を変えて立て直さなければ。
確か・・・、この道は1周目の時もボーっとして走った道だったのを思い出した。
あの時も、とにかく立て直すため、一旦、80番国分寺近くの民宿あずさに泊まったっけ。そしてその翌日、体調の整った私は、結願に向けて大ハッスルしたことを思い出す。
そうか!
今日も、雨だし、一旦、民宿あずさに泊まって、気持ちも身体も入れ替えよう!
民宿あずさには、80番国分寺に近いので、明日の朝一にでも打てるから、そこを飛ばして、79番天皇寺を打ち、81番白峰寺へ淡々と上り、更に82番根香寺へも淡々と上って、寺を打ち、80番国分寺付近まで降りてきた。
今の私は、暑くないので白峰寺や根香寺への坂道は、ただ淡々といつの間にか終わっていた。
遅めの昼食を国分寺付近のうどんジャンボで食べ、ボーっとしていると3時半になっていた。
泊まりに行くには、まだ少し早いのだけど、気持ち的に前に進めないので、このまま民宿あずさへ行った。
この民宿あずさは、民宿とは言え、構造はラブホテルと変わらない。
入口で簡単に支払いを済ませて鍵をもらったら、ほぼ誰とも顔を合わせない構造で、どちらかと言うと、民宿と言うより、ザ・昭和な一人でも気軽に泊まれるラブホテルと言ったところだろうか。
部屋に入り、シャワーを浴びてさっぱりして、一人ボーっとする。
何故だか、一日中、残念な気持ちが離れて行ってくれない。
ずっとここまでお遍路を回りながら、電話をくれたりして応援してくれていた高ちゃんや、ゴンちゃんなのに、途中、高ちゃんが亡くなっていなくなってしまったし、ゴンちゃんは、私の思いとはすれ違ってしまい、あえて遠ざけなきゃいけない状況だ。
ああ・・・。
ゴンちゃん・・・。
なんで、友達になれないのだろうか・・・?
友達でさえいてくれれば、とてもいい人には違いないのに・・・。
でも、やっぱり、昨夜のようになってしまうようなら、結局、友達でいる事さえ難しくなってくる。
あまりに残念で、悲しい気持ちになった。
すると電話が鳴ったので出る。
私「あ、博士・・・。」
博士「あ、Noisy・・・。」
私「どうした?」
博士「今日、マントラへ行ってみたら、Noisyは、今朝、早く出発してしまったって聞いて・・・。昨日、もう出発するなんて言ってなかったのにと思って・・・。それで・・・。電話したんや。」
私「そうなんだ。早く出発しないと、49日に間に合わなくなるしね。」
博士「それで・・・今、何処?」
私「ああ、今日は、なんかやる気でないから、80番近くの民宿あずさにいるよ。」
博士「そうなんや。近いなあ。」
私「うん。」
博士「俺は・・・暇や。」
私「ん?博士、暇なの?」
博士「うん。」
私「そう。じゃあ、博士も来る?」
博士「直ぐに行くから、そこで待っといて!」
私「うん。わかった。」
私は、なんだか残念な気持ちでいたので、救われる気がした。
つづく・・・
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