20050612 ハンサムガイ (original) (raw)

東横線
渋谷行きの電車に乗っていた。
週末の曇り空のお昼。

座った向かい側の少し先に彼は居た。
大きな黒いリュックを前に置いて、電車が止まるたびに
表示を几帳面に覗いていた。
旅行者かな
そう思った。
青いTシャツに、少しクセのある髪の毛。
(あの外国人独特の天然パーマに憧れる)
グレイの瞳。
かわいい目をしている。
なかなかのハンサム。

ふと目が合った気がした。
私はあわてて広告を見て目をそらした。

急行との待ち合わせをしたときに、彼が
慌てたように隣のサラリーマンに何かを聞いていた。
私は急行に乗り換えながら、彼が心配になった。
自分がかつて、外国で そうであったように。

急行に乗り換えたとき、彼も前の車両に乗り込んだ気がした。
少しほっとして、私は座った電車の中うとうとした。
渋谷駅で降りて、ホームを歩いているときに
彼が隣を歩いていた。
流れていく人ごみの中で、同じタイミングで、ばっちりと目が合い
どちらともなく微笑んだ。沈黙の後、私は「Hi」と言った。

「again」
とゆっくり言って彼が笑った。

「Hello again」彼がもう一度言う。
「?」
「I saw you in the train before」
「・・・・yh, I know that」
私が笑う。
tourist?
と私が聞くと、彼は違うけど似たようなものだと言った。
名前を名乗って彼が手を差し出した。
私も名乗って、軽い握手をした。

映画でよくあるような光景だと思った。
自然に会話が始まるし、自然にスマイルしあう。
日本は目があうと結構そらしてしまうし、何気に会話を始めたりしない。

改札までの道のりを喋って歩く。

彼は今静岡で英語の先生をしているのだと言った。
日本に来て2ヶ月だとも。
カナダ人でトロント出身。
改札を出るところで、彼と5分ほど立ち話をした。

彼が最後にメールアドレスを聞いてもいい?
と言った。
「OK」と、私は彼の差し出したくしゃくしゃの
チラシみたいな紙に、アドレスを書き込んだ。

「so」
「so that, see you・・・later」
彼が言いながら笑った。
「see you again」
「nice meeting you」

彼はコーヒーを飲んでいくと行って、ドトールに消えていった。
私は、銀座線に乗り換えて「表参道」に。

人ごみにまたまみれて歩きながら
少しすがすがしい気持ちがした。
いつもと少し違うことがおこる。

わたしは、「いつもと違うこと」が起こるのがすきだ。