発達障害ツイッタラーrei氏のnoteから読み解く論文を引用して嘘を塗り固める技術 (original) (raw)

発達障害ツイッタラーrei氏のnoteから読み解く論文引用して嘘を塗り固める技術

みなさん。reiというツイッターアカウントをご存知でしょうか?

https://twitter.com/rei10830349

ツイッタラーありがちな生き辛さや発達障害あるあるを140字に納めた秀逸なツイート話題を呼んでいる方です。

https://note.com/beatangel/n/n32ff4498424e

rei氏が先日投稿たこちらのnoteがあまりにも杜撰で酷いにも関わらず、多くの人の共感を呼び瞬く間にシェアされ、チー牛ミーム拡散に一役買ってしまっているこの状況に警鐘を鳴らすべく、彼の文章基本的根本的な誤りを一つずつ指摘したいと思います

忙しい人向けのポイントまとめ

rei氏は「ストレス」の語を児童虐待や親から被虐意味で使っているが、引用論文内では新規状況に対する精神ストレス意味で使われており、なおかつ被虐児は実験対象から除外されている。

rei氏はテストステロンが低下すると男らしくない顔つきになると主張しているが、引用論文内にそのような記述は一切ない。

rei氏は先進国全般女性は男らしい顔つきを好む傾向があると米国実験で確かめられたと主張しているが、引用論文内にそのような記述は一切なく、引用論文シンガポール大学から発行されている。

rei氏は進化論における適者生存概念を用いているが、正しく理解しているとは考え難い語の使用をしている。

本論

以下では段落ごとに細かくツッコミを入れていきます

このチー牛顔の特徴は言うまでもなく、

・男らしさの特徴が薄い

表情筋の未発達

上記2点の相乗効果により何処か幼く見える

眼鏡

の4点に集約されるだろう。

最初から数えて三段落目の部分です。もうさあ、この箇条書きの仕方からして気にくわないんだよな。三つ目のポッチの”上記2点の相乗効果により何処か幼く見える”の項目。項目間で参照しないでくれ。せめて箇条書きから外してまとめるか、”上記2点の相乗効果により”を省いてほしい。この程度の体裁すら整えられていない文章を書く人が本を出すんですね。校閲の人は大変そうです。おや、rei氏の固定ツイート記載してあるamazonリンク存在しませんね。スクリーンネームも”rei@生きてるだけで疲労困憊発売延期"となっています。何か問題でも発生したんですかね?

チー牛顔の特徴に話を戻すと、"男らしさの特徴が薄い”は後述する論文にも確からしい記述があるので横に置いておきますが、"表情筋の未発達”という表現はどう考えても不自然で、表情筋が発達しなかったら目を開けたり閉じたりできないし、ましてや口を動かして発語して「牛丼ください」なんて言えないはずなんだよな。"幼く見える”は主観的な印象にすぎないし、眼鏡をかけていることが不細工代名詞「チー牛」の特徴の一つとまで言うのはもはやただの罵倒だろ。眼鏡っ娘を馬鹿にするな。

百歩譲って、ここまでは話題提示部分であって、rei氏の過失ではない点が多分にあることは認めよう。

だが、ここから先で繰り広げられる、様々な論文結論部分やrei氏の脳内妄想を継ぎ接ぎして構成されたストーリー断じて許せない。許してはならない。てかこんな意味わからん文章を読んでへ〜なるほど!あるあるとか俺もチー牛じゃんwwwとか言ってスキ!やリツイートした奴全員どうかしてる。反省しろちゃんと読め。

さて、こうした所謂非モテ」や「陰キャ」独特の顔つきの由来については、実は実証的な研究においてほぼ答えが出ている。結論から言えば、こうしたチー牛顔を形作るのは「低いテストステロン値」「精神障害」「虐待イジメ経験」の3要素であるが、これらはそれぞれ相関している。

らしいです。非モテ陰キャあるあるかいマジでしょうもない中学生までには卒業しておきたい話が始まる予感がプンプンしますが、とりあえず聞くだけ聞いてやりましょう。

過去においてASDの原因は「極端な男性脳」と考えられ、彼等の拘りの強さや反復傾向やコミュニケーション不全の原因は高いテストステロン値にあるとされてきたが、研究の進展により近年はそれが否定され※、むしろASD男性物理的に両性具有であることが示され始めている。身体性的2形(身体男性的特徴)が乏しい傾向にあることが示唆されているのだ。その1つに自閉症の顔を調べた研究があり、それによればASD男性の顔つきは「男らしくない」特徴があるという。

https://jneurodevdisorders.biomedcentral.com/articles/10.1186/s11689-015-9109-6論文a)

※(胎内において高いテストステロン値に晒されるとASDになりやすい傾向がある事は2020年5月現在定説だと思われる)

rei氏のnote言及した人はここで挙げられている論文aを全員読んでいるはずなのですがもしかしたら忘れてしまっている人もいるかもしれないため改めてざっくり説明します。チー牛画像説明rei氏はなんの根拠も明示せずに男らしくない顔つきである、と断定していましたが、この論文aはなんと、「男らしい顔、女らしい顔とは一体どんな顔であるのか?」という大変根元的な問いについて画像解析を用いて答えを出しているんですね。ふむふむ、どうやら男性女性に比べて額の幅が広く、鼻は飛び出てて横幅も広いらしい。 で、次の実験②で、自閉傾向の強い人と弱い人とで顔つきの特徴を比較してみたところ、自閉傾向が強い男性は弱い人と比べて額の幅が小さかったり鼻先が飛び出してなかったりしたと。なるほどこれは確かに男性的な特徴とは言い難い。逆に自閉傾向の強い女性については、より額の幅が大きかったり鼻の幅が大きかったと。ここまでデータを見せられたらさすがに自閉傾向のある男性男性らしくなくなり、女性場合だと女性らしくなくなると納得せざるを得ませんね。ASD男性性的二型(生殖器以外に男性女性区別する特徴のこと)に乏しく両性具有の外観をもつ、ええ、rei氏の言いたいことはわかりましたよ。じゃあ次の段落へいってみましょう。

また発達障害男性の顔つきが「男らしくない」事に関して、環境の影響を示唆する研究もある。恐らくこの記事を読んでる方の半分ぐらいは心当たりがあるだろうが、発達障害男性は1般的に幼少期から仲間外れにされたり、暴行されたり、虐待や親の過干渉に晒されやすい。こうしたストレスストレスホルモンであるコルチゾールレベルを高くし、コルチゾールレベルが高くなることでテストステロンが低下し、テストステロンが低下する事で性的2形が不完全に形成される可能性が示唆されている。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3245359/論文b)

※(2020年5月27日、リンク先が間違ってるとの指摘があり修正。元リンクコメント欄にて)

えー、まず、発達障害男性は幼い頃から学校や家庭で加害され、そして精神ストレスや肉体的ストレスに晒される傾向がある、きっと読者の皆さんも身に覚えがあるでしょう?とrei氏はおっしゃるわけですが、いくらその主張が正しくても、その根拠自分人生で起きた主観的事実というたったサンプル数1の寄せ集めなわけですから、読者の共感喚起したところで、発達障害男性全体の傾向や、発達過程における諸要素間の相関や因果関係といったマクロの話には全然繋がらないでしょう。

また、この「ストレス」という単語について、引用されている論文bでは、いやそもそも彼は論文引用ルールすら守ってないので、この論文bが本文のどこと対応してるのか全然からないんで、マジでこのリンクたまたま偶然横に貼られている本文との関連性が一切見当たらない論文URLなんですけど、えっじゃあさっきまでわざわざ論文を読んでた俺バカじゃね?学術的な考察武器に世相を舌鋒鋭く、そして時には優しく切り込んでいくインターネット論客期待の新星っぽい雰囲気にまんまと騙されてんじゃんうわ恥ずかし!えっとなんでしたっけ、そう、この横にペっとはっつけられてる論文における「stress」とは、自閉症児が苦手とする経験したことのない新しい状況や環境のめまぐるしい変化といった意味ストレスなんですよね。introductionのパラグラフ二つ目

"Individuals with autism are commonly observed to react abnormally to environmental changes or novel situations that might not be stressful to others. “

って書いてあるじゃないですか。ところでrei氏の言う「ストレス」ってなんでしたっけ?"発達障害男性は1般的に幼少期から仲間外れにされたり、暴行されたり、虐待や親の過干渉に晒されやすい。こうしたストレスは"–––––––って、ええ!論文の「stress」と意味全然違うじゃないですか!しか実験被験者のうち虐待ネグレクト経験ある子供は除外されてるんですよね。Participantsの段落に、

"Children were excluded if they had a history of abuse or neglect."

ってちゃんと書いてあるんですよ。

本筋と関係ないので手短に実験の内容をまとめると、自閉症の小児について、コルチゾールストレスに応答して分泌されるホルモン一種)の値を安静な状況、新しい環境採血後のそれぞれで測定してみたら、発達障害の既往がない人よりずっと高い数値を示したんだってさ。

rei氏はコルチゾールが高くなると男性ホルモンテストステロンが下がる、って書いてるけど、残念ながらこの論文bにはテストステロンのテの字も書いてないんだわ。Ctrl+Fで単語検索してもテの字も引っかからなかったんだわ。でさ、俺こんな場末インターネットでネチョネチョしちゃってるけどさ、曲がりなりにも医学部通ってて、手元に教科書とかあったりするのよ。ギャノング生理学原書25版、CHAPTER20、副腎髄質と副腎皮質の章、433ページ。"副腎アンドロゲンの分泌は急性にACTHにより調節され,性線刺激ホルモンによって調節されない.”と書いてありますテストステロンアンドロゲン一種。ACTHは副腎皮質刺激ホルモン略称で、コルチゾールテストステロンを分泌させるのに働くホルモンです。教科書のこの記述から類推するに、コルチゾール糖質コルチコイドもテストステロンの分泌には関わってなくね?や、もしかしたら教科書の隅から隅まで読んだらちょろっと一行書いてあったり、コルチゾールが高くなったことでフィードバック機構が働いて副腎皮質刺激ホルモンの分泌低下が引き起こされて結果的テストステロンが下がったりするのかもしれないけど、rei氏はどこにも出典を明記せずに本文中でいけしゃあしゃあと"コルチゾールレベルが高くなることでテストステロンが低下し、テストステロンが低下する事で性的2形が不完全に形成される可能性が示唆されている。"なんて書いてやがるわけですよ。許せなくない?ありえんでしょ。なんでわざわざこいつのデタラメデタラメエロゲで鍛え抜かれた迫真想像力快楽排泄した駄文に付き合っていちいちファクトチェックしないといけないんですか?そうだ、reiさん。医学部レポートコピペ学科学生に任せてみたらどうですか?少なくともあなたよりロジカル科学的に正しい文章を書いてくれると思いますよ。なんなら紹介しましょうか?彼らは優秀で知性溢れる優しい友人がいるおかげでいつも成績は満点みたいですしきっと心強いと思いますよ。ところでreiさんにはいるんですか?優秀で知性溢れる優しい友人。いえこれは単なる興味です。

次の段落行きましょう。まだまだありますからね。先は長いですよ。

更に上記取り上げた海外チー牛ことThe Virgin Walkに関しても、インターネット等で語られる「ぎこちない」「フラフラしてる」「リズム感がない」「つま先で歩きがち」などの特徴は発達障害運動協調の苦手さや感覚過敏や身体感覚の不全等の特徴と1致する。

https://www.scientificamerican.com/article/autism-in-motion-could-motor-problems-trigger-social-ones/記事c)

なんなんですかね、この抜け字。めちゃくちゃ気になっちゃうんですが。話の流れで飛ばしちゃったけど、なんかチー牛ミーム類似品は海外にもあるらしいですね。俺は細かいところが気になる性分なので、The Virgin Walkの画像を見せられた後に”インターネットで語られる「ぎこちない」「フラフラしてる」「リズム感がない」「つま先で歩きがち」"なんて書かれるとつい画像の中の英文対応してるのかな〜なんて思っちゃうんだけど、全然対応してなかったです。じゃあこの例にあげてる印象ってどこの誰が言ってるんですか?対応してないっていうので言えば、ここで発達障害の特徴をいくつかあげてますけど、運動協調の苦手さ、身体感覚不全、まあ上述の印象と概ね一致するとしましょうよ。でも感覚過敏はどれとも対応してないですよね?何と何が一致するか、そういう細かいところキチッキチッと詰めていきましょうよ。文章グルーブ感が大事なんですから、この後きっとこうくるだろうなという読者の予感みたいなの丁寧に扱ってあげましょうよ。リンク先の記事cについては特にコメントないです。自閉症児の多くは運動機能の発達や社会性の発達に障害を抱えるよ、くらいのことが書かれた科学ニュース記事で、論文とかじゃないですし。あ、でも自閉症児の運動障害社会性の発達に悪影響を及ぼすという理論に、そもそも社会性の発達より運動機能の発達の方が時系列的に先に生じるからそう見えるだけなのでは?と反駁している記述とか、自閉症患者の困難は取り入れた視覚情報運動性・社会性とを接続させられない点にあるという指摘は面白かったですね。はい次!

たこれは研究事例を示すまでもない事であるが、人間自分言動揶揄されたり叩かれると自分に自信がなくなり、表情が暗くなったり、あまり表立って活動しなくなったり、人との関わりに消極的になってしまう。その為、こうした人間は表情を使う機会が乏しくなり、表情筋が発達しなかったり、表情をノンバーバルコミュニケーションとして使う経験が蓄積されず、表情が常に無表情気味かつ幼くなってしまう。

いや、研究事例はちゃんと示そうよ!まあ書いてあることはわからんでもないよ、わからんでもない。上司や先輩に怒られたり同級生バカにされたりインターネット誹謗中傷されたら凹んじゃうよね、引きずっちゃうよね。ウンウンわかるわかる。それはそれとして、この段落後半、同じことの繰り返しになっちゃってません?「顔の表情を使う機会が乏しくなる」、「顔の表情筋を使わないから発達しない」、「表情を使う経験が蓄積されない」、「表情が無」。極め付けには「顔が幼い」と、今まで一度も論じられてない幼さという主観的な形容詞を持ち出しちゃってます。GooglescholarやPubmedを使いこなしありとあらゆる論文引用して鮮やかなストーリー提示し、英語はおろかちょっと黒々とした文字集合体さえ読めないパンピを納得させてみせるrei氏が、こんな小学生みたいな感想文をうっかり混ぜ込んでしまうなんて、とても私には信じられません。きっと何かの間違いでしょう。

ここでrei氏の文章は前半のまとめに入ります

まとめれば「発達障害男性は幼少期から多大なストレスに苛まされる事によってテストステロン値が低くなり、また人間との接触を避けるようになってしまい、結果として顔は男らしくなく、表情筋が発達せず幼い印象の顔になってしまう」という事だ。尚これは傾向の話であり、チー牛顔であるイコール精神障害であったり、虐めや虐待経験があったりする事を意味しない。

ツッコミどころが満載のまとめですね。簡潔にいきましょう。

rei氏はストレスの語を、援用した論文とは異なる意味使用している。

rei氏は発達障害男性テストステロン値が低くなる根拠を示していない。

発達障害男性の顔は男らしくない傾向にある、と解釈できる論文はあるものの、rei氏が主張するところの表情筋の発達とは関係のない目や鼻や額といった器官そのもの位置に関する論文である

rei氏は、発達障害男性の顔が幼い印象を与えることについて言及する記事論文を示していない。

腹立つのがさ、あくまで傾向の話なんですよ〜私はチー牛顔は精神障害者とは一言も言ってませんよ〜って逃げ道じみた一文を付け加えてるところなんだよね。何が原因で何が結果である、みたいな因果関係ってすごくややこしいじゃん。すぐコロッと逆転させちゃったりするじゃん、人間は愚かなので。今書いてる俺も、うん?どっちが先なんだ?って立ち止まっちゃうともうダメ。あーもう、こっすいよなあ、この一文を付け加えるだけで責任逃れられるみたいに思って書いてんですよ、この人。こんだけ嘘や誤認を誘導する駄文書いといて、「いや俺はそこまで言うてませんから、ほな^^」みたいな態度、要は舐めとるんですわ。文章を書くということも、読者のことも、発達障害者のことも、生き辛さを抱えてる人たちのことも、毎日研究室でせっせとデータ取って論文読んで人類の知の水平線を広げんと奮闘してる研究者のことも。腹立たしい。論文読むならちゃんと読め、使うならちゃんと使え、筋の通ってないこと書き散らかすな、知の冒涜も甚だしい。

入りきらなかったので後半に続きます

https://anond.hatelabo.jp/20200614185914

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