無免許運転 (original) (raw)

無免許運転

夫という車を選んで人生という長い道を走り始めた。

走りやすいし安定しているし、車に積まれてる脳みその考え方も今時のものチューニングされている。それに丈夫だ。車体はかなりコンパクトだが、日々メンテをしているのでボディの稜線が美しい。何よりこんなに良い車なのに何故か買われていない。周りの奴らは見る目がないな、ハハハと思って選んだ。

だがどうだ。1年試乗してみて良かったので契約を結んだのに、2年本格的に運転したら、粗暴でガサツな振る舞いが多くて非常に音がうるさいことが気になり始めた。

道を進むためにやってほしいことを指示をしても「なんで俺だけに押し付けるんだよ」と吐いてくる。すぐに怒り出して思うように動かない。エンストしすぎ。物事への合理性ではなく自分お気持ちを強く優先する、お気持ちファーストの車だった。

車がスムーズに、快適に動くように毎日良質な燃料を決まった時間に与え、ボディを可愛がってやり、思いやりを尽くしてきたが、こうもうるさく使えない車では愛が失われていく。試乗したのにどうして気付かなかったのだろう。

何故お前は「作業を任せられる=押し付けられている・丸投げされる」と捉えるのだ。なんで。そうやってイライラとうるさくしても誰が幸せになるんだ。というか任せたことすらお気持ち配慮しないとこなせないのか。ガキかテメーは。

もう家庭のタスクは頼みたくないので、これは私がやるよと巻き取るようになった。何度でも言いたいがお前から発露される沸点の低いイライラは本当に嫌いだ。イライラをやめろ。ガキっぽさ満載のお前を見て私もイライラするから

それからこの車、うまくいかないときに物に当たるのをやめろ。うるさいから。何度言ってもうるさいなお前は。

そして何故ググれば分かることを私に聞くんだ?私はお前に回答を渡すためにググるんだが。なんでまず自分で調べるってことができないんだろう。疑問ってものがまず浮かばないのか。お前が触ってる四角い画面はなんだよ。

車を作り上げたスタッフたちは皆いい人達だ。よくしてくれる。やさしい。

うるさくなければ、感情沸点が低くなければ、アンガーマネジメントができていれば、小学生のガキっぽくどうでもいい自分話や仕事愚痴を私の仕事中にいちいちいちいちいちいちいちいち話しかけてこなければ、この車は良いスタッフに愛を込められ作られたと心から思う。

スタッフたちは暖房全然ない寒い家に住んでいて、自分たちは温かく重ね着をしているのに客の私にはコートを着させて室内で過ごさせることを何故かなんとも思わない意味不明ケチだが、ケチであることを除けば皆良い人だ。

契約を破棄すればそのスタッフ達が悲しむし、契約破棄には非常に面倒くさい作業が発生する。面倒臭い。だから車を降りることはできない。けれどなんだか本当に疲れた

お気持ちファーストのこいつのためにどうして自分の考えを曲げ続けるのか。子どもはお前が欲しいと言うから私のキャリア犠牲にするし、都会に住みたかったのにお前が希望するから田舎移住した。飯も決まった時間に作ってやってる。でも私は自分希望を何も叶えてもらっていない。なぜなら自分希望は夫の希望とは真逆からだ。制度が悪いとは分かっているが相手お気持ちのために、大好きだった自分苗字も諦めた。本当は私は子どもにあまり乗り気じゃないしこんな場所に住む気もなかった。

だがなぜこんな奴の人生を私が叶えてやるのだろう?私の人生はどこへ行った?一生お前のお気持ちに寄り添うために、怒らせないように生きるのが私の望んだ人生だろうか?と最近思うようになった。

お前みたいにわがままなガキをもうそういう対象として見ることはない。ガキとはしたくないんだよ。そう伝えたのに、何故お前はいつまでもパートナーとしたがる?私だったら私みたいなパートナー絶対やりたくないんだが。理解できない。拒否。いつお前の脳ってアプデ入るの?基本設計思想は変わらないだろうからせめてアプデ入れ。

だがこの車を故障させると私に非が発生するし、丹精込めて作ったスタッフたちがかわいそうだ。だからせめて車がなくなってほしい。そうしたらみんながかわいそうで終わり。まあそうはならないんだが。

車を降りたい。もしくは他の車を知りたい。だが他人の車に無許可で乗るのはアウトだ。決してそうするつもりはないが、この車はもういやだ。違う車を知りたい。お金を払ってレンタルしてみようかな。それなら違法性はないから。契約した車に乗りながら、私は私の人生がほしい。もう自分自分幸せに向かわないとダメになりそうだ。

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