とある行政経験者からの石丸伸二評 (original) (raw)

とある行政経験から石丸伸二評

三十代、元自治体職員の所感。

報復議員定数半減条例

就任してそこまで経っていない頃だっただろうか、副市長人事の同意議会から得られず、さら議員提案により副市長の定数を減らす条例が可決成立したことがあった。当時のニュースを見ていたときは、議会の封じ込めを図る姿勢はどうなんだろうと思ったものだ。しかし、その後、今度は氏側が議員定数を半減させる条例を提出した。それっぽいことを並べていたが、まあ報復である

当然否決されるわけだが、議会への条例提出には、例規審査と呼ばれる体裁、法的整合性などの確認作業があり、付随して議案としての説明文の作成資料印刷マスメディアへの提供も行われる。子供喧嘩のような仕返しに付き合わされる職員としてはたまったものではない。

氏の支持者には、彼を論理的是々非々人間と評する者もいるが、このくだりを見る限り、その評には疑問符がつく。なるほど、深謀遠慮、否決されることありきで耳目を集めることが目的かもしれない。しかし、その個人パフォーマンスために職員リソースを空転させないで欲しい。職員議会で可決されるために議案を作りたい。

議会との過度な対立姿勢

日本地方自治議員首長直接選挙で選ばれるところに特徴がある。いわゆる二元代表制と呼ばれるものである議員首長もある方面から民意の反映で、原則として議会議決を経なければ予算も作れないし、条例の制定改廃もできない。だからこそ、氏の対議会苛烈ともいえるパフォーマンスは目に余るものがあった。

氏はどこか二元代表制を首長議会対立構造と考えているフシがあるが、それは少し誤解がある。個人商店の議員に対して、多数の職員を動員し、多くの情報アクセスできる首長とでは、そのリソースは段違い。法的なところでも、再議、後述の専決処分など、権限首長が強い。日本二元代表制の実態首長優位で、対立構造とするにははなから不均衡だ。

自分の優位が約束されている中で、対等な勝負という体で、多様な民意をすり合わせもせず言い負かすことに終止する。なにかにつけて二元代表制を強調するのならば、最低限の体裁くらいは整えてくれないものか。

議会首長対立自体はあろうとも、必要以上に煽ると通る議案も通らなくなってしまう。氏本人がそうであるように、人はしょうもない意地の張り合いで不合理な行いをする生き物なのだから

専決処分濫用

氏は無印良品を巡っては企業の言い分を丸呑みして時間がないと専決処分を行い、こども園を巡っては既に議会で否決された予算をやはり時間がないと退任直前に専決処分した。専決処分地方自治法179条の方を指す。)は、本来経なければならない議決を経ずに条例の制定改廃、予算措置などを行うものだ。その二元代表制を否定するような特性上、専決処分を行う要件(緊急性など)は厳格に解されているところであり、企業の都合や、否決された予算を押し通すのに行うものではない。というか、要件を満たしていないか違法という指摘もされ得る。

そもそも、氏は二元代表制を大事にしていたのではなかったのか。それをないがしろにする専決処分濫用は言行不一致であり、また、行政として遵守すべき手続の軽視だ。

特に無印良品に関しては、普通に臨時会を開いて議案にすれば可決された余地もあっただろうに、何故無理矢理やろうとしたのか。

まとめ

自治体は、好意的な印象を持ってくれる人に対してもそうでない人に対しても分け隔てなくサービス提供する。法令は当然として、その制度趣旨考慮し、手段適当か勘案して業務を行う。

水戸黄門半沢直樹舞台ではないし、スカッジャパンの収録でもない。自己統制として「違法ではないが不当」という考え方も存在し、目的手段正当化しない。

敵味方の劇場型政治を繰り広げ、制度趣旨を軽視し、目的のためには手段を選ばない。その一連のパフォーマンススタッフとして職員が巻き込まれる点で、氏の姿勢は「ない」ものに映った。これは、相対する議会が有能だろうと無能だろうと変わらない。

また、基本的時間金も手間もかかる裁判について「気に入らなければ、違法と思うのならば訴えればいい」というスタンス相手の足元を見てのものであり、「裁判判断されない限り合法」と主張する打算が見え隠れする。そもそも訴えられる余地をなるべく減らし、瑕疵なく進めるのが行政の基本で、予防法務民間でも知られた概念だと思うのだが。

そして本当に訴えられた場合、やはり苦労するのは職員の方である

余談

そんな氏であるが、先の都知事選ではなんと2位。

一方が他方を言い負かす構図は見ていて気持ちがよく、古い政治家に立ち向かい手段を選ばず邁進する姿は魅力的に映るのだろう。

しかし、その言い負かされる対象自分たちになる可能性や、手段を選ばないことを肯定した結果、止められず明後日の方向に暴走していく可能性は少し勘定に入れて欲しい。

政治行政はそういった危険性を織り込んで面倒くさくなっているわけで、そこまでわかりやすエンタメではないし、そうなってはいけない。

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