実話怪談「福祉」 (original) (raw)
■実話怪談「福祉」
『ストロングゼロは飲む社会福祉』まことに上手いことを言った人がいるものです。
その言葉を初めてネットで目にした時、私はストロングゼロは卒業し、ペットボトルの焼酎を飲むようになっていましたから、その言葉の意味を理解するどころか、誰よりも体験していたと言えるでしょう。
つまり、毎日毎日飲んだくれていたわけです。一日の半分近くは酔っ払っていたでしょうか。それでも朝から飲むわけじゃありませんから、アル中とまではいかないでしょう。
でね、飲んでいる時に何度か考えたことがあるんです。
お酒が飲めなかったら、自分は一体どうなっていたんだろうって。
飲まない方にどういうことか説明申し上げますと、ストロングゼロやペットボトルの焼酎を飲むような人間はお酒に救われている、酔っ払うことで救われていると考えているのであります。
ですからそのような人間にとって、ストロングゼロは飲める社会福祉というわけです。
その福祉を体質で取り上げられてしまうと私はどうなってしまうのか不安になり、また酒をあおるのでございます。
その日はちょうと七夕でございました。やけに蒸し暑かったものですから、いつもの焼酎をストロングゼロで割って飲んでおりました。こうすると暑い日でも飲みやすくなるんです。
飲みながらネットを見ていると、どこも話題は首長選挙の結果ばかり。
投票締め切りの20時と同時に当確が発表されまして、当選は現職なので予想通りの結果でございましたが、2位と3位は予想外の争いで、こっちの方がずっと盛り上がっている。
2位でも3位でも落選なんだから、私なんかはどうでもいいだろうと思うのですが、ネットの世界はどうもそうじゃないようです。
そのような罵倒するような書き込みが無数に見つかるわけです。しかも、ネットのどこへ行ってもですよ。
なんでそんな書き込みをするものなんだろうかと思いましてね、わかりませんよね。共感できない。
でも、そんな時は実際に試すのが一番なんですよ。体験することでわかることがあります。
ストロングゼロもそうでした。どうして飲むのかと体験するうちに、私も毎日飲むようになった。何事も体験しなければわからないものでございます。
そうするとですね、不思議なことに気分がぱぁっとよくなったのです。頭の中のモヤが晴れるといいますか。
言葉につられて、まるで自分が強くなったような、偉大になったような気がするのでしょう。
「境界知能」なんて言葉も覚えまして、「お前は境界知能だから当たり前のこともわからないんだ」なんて書いてやると、向こうは黙りこくるわけです。言い負かした。
すると、やっぱり心持ちがよくなってくる。
なるほど。やはり体験してみるとわかります。驚くことに、この頭がすっきりとする感覚はストロングゼロと同じなのでございます。
お酒を飲まれない方、ストロングゼロを必要としない方にはわかりますまい。どうしてストロングゼロのような美味くもない酒を飲むのか。
それと同じで誹謗中傷を不要な方にはわからないでしょう。一方で必要な方もいる。
そういえば、ネットニュースで読んだことがありました。誹謗中傷で裁判までやって損害賠償が確定しても、相手は支払い能力がないケースが多いというやつです。
目ざとく見つけたんでしょうね、誹謗中傷をすることで自分が救われることに。もしかしたら、お酒が飲めないタイプが「書く社会福祉」を使っているのでございましょうか。
いやいや、私などのように『飲む社会福祉』との併用される方も多いでしょう。
飲みながら『書く社会福祉』の方をしていますと、脳の血流が活発になるような感覚がありまして、酒がよく効いいて、体が軽くなって今にも浮き上がるような、そんな心持になれるのです。
よくいますでしょう。居酒屋で大声をだして説教しているおじさんが。あれと同じような状態になれるのです。
この「書く社会福祉」は今では欠くことのできないものになりました。
飲む方の福祉と違いまして、こちらは朝起きてすぐでも、仕事中でもできますでしょう。
気分が落ち込んだ時に、なんでもいいんです誹謗中傷なら。話題だって政治じゃなくていい。芸能、スポーツはもちろんのこと、一般人の弁当だって、本当になんだっていいのです。
バカだとかアホだとか、そういった簡単な言葉で構わないのです。中身なんて必要ありません。
中にはもったいぶった文面を作る方もいますが、中身なんてございません。結局のところ、バカかアホと書いてあるだけでございます。
『書く社会福祉』というのは結局のところ誹謗中傷であればいいのです。
先陣を切ってバカとかアホとか書きますでしょう。そうすると、ネットの向こうの福祉仲間でしょう。わっと集まってきて、あっという間にバカだのアホだの誹謗中傷で埋まっていくのでございます。
それがまた気持ちのいいのです。
共感される、共感することで私のこころが満ちていくのが感じられるのです。
これほどの福祉があるのに秘密にするわけにもいかず、こうしてお伝えしたのでございます。
どうぞ一度、一度でいいから試してごらんなさい。
コツはただ一つ。世の中は馬鹿ばっかりだと思い込むのです。
福祉を受けると思うとハードルが高く感じられるかもしれませんが、気にすることはございません。
一緒に社会をよくして行こうじゃありませんか。
某怪談コンテストに応募しようと思って書いたけど垢バンされるかもしれないから供養に
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