国産ノベル・アドベンチャーゲーム200選 第8回『ウイングマン』 (original) (raw)

『ウイングマン』(エニックス、MSX、1985年)

発売元:エニックス
初出:1984年

令和に『ウイングマン』が復活した。このニュースは驚きを持って往年のファンたちに迎えられた。

www.tv-tokyo.co.jp

『電影少女』『I"s』などを代表作に持ち、アニメ『TIGER & BUNNY』のキャラクターデザインでも知られる漫画家・桂正和氏の連載デビュー作。変身ヒーローに憧れる中学生・広野健太が異空間から現れた謎の美少女と、書いたことが実現するノート「ドリムノート」を拾ったことから物語は始まる。
特撮ヒーローものの影響を受けながらもラブコメ要素を取り入れた本作はアニメ化もされ、1980年代前半における週刊少年ジャンプの看板作品のひとつとして知られている。
そしてPCゲームとしてもシリーズ化され、ヒットを飛ばしたのだ。ジャンプ作品のゲーム化としては、最初期の成功作品なのである。

ヒロインを変な目で見ると怒られてしまう

なくしてしまったドリムノートを探すため、健太がヒロインたちと協力して各所を巡るという、原作とは異なるオリジナルのシナリオとなっている。
形式はスタンダードなコマンド入力型だが、ポイント&クリックで対象を調べることもできる。リアクションの数はなかなか多く、マニュアルには女の子に変な事をしたらダメですよときっぱり書かれている。近年は人権意識の向上もあり、特にコンソール作品で見かけることは激減しただろうが、女性キャラクターのデリケートな部分を見たり触ったりして反応を確かめるというのは、昔のアドベンチャーゲームではよくあったことだ。その源流のひとつと言える作品かもしれない。

戦闘パートで敵と戦う

途中にミニゲームが挿入されるのも特徴のひとつ。ウイングマンをカーソルキーで動かしながら(前後移動、ジャンプ、しゃがむ)、技を繰り出して敵キャラと戦う。負けてもゲームオーバーになるわけではないので安心だ。
アドベンチャーゲームの中にアクション・シューティングゲームを導入するのは『機動戦士ガンダム1 ガンダム大地に立つ』など先行例があったが、本作のそれはよりゲーム性が増し、展開が進むにつれ使える技が増えるという成長要素もある。

プレイヤーを飽きさせまいという創意工夫に満ちた本作を開発したのは、高校時代のマイコンフリークで結成されたTAM・TAMというチーム。少年ジャンプとタイアップしたエニックスのシナリオコンテストに応募したところ、これは不採用になったものの後になって声がかかった、という経緯だった。
リーダーを務めた金尾淳*1氏によれば、本作はPC-8801版だけで約1万本の売上を記録し、エニックスの担当者も驚いたという。

この好評を受け、続編として1986年4月に『ウイングマン2 -キータクラーの復活-』、1987年12月に『ウイングマンスペシャル -さらば夢戦士-』がリリースされた。
作曲家・すぎやまこういち氏が『森田和郎の将棋』のアンケートを送ったところ、エニックス担当者の目に止まり、『ウイングマン2』でゲーム音楽家デビューを果たしたことはよく知られている。これがのちの『ドラゴンクエスト』にも繋がった……何気ないことがゲームの歴史を大きく動かすことがあるという格好の例だろう。

【参考文献】
『テクノポリス』1986年6月号(徳間書店)

ウイングマン 1 (ジャンプコミックスDIGITAL)

*1:1989年、美少女ゲームブランド・エルフの創設者のひとりとなる。1991年にはマイコン時代の名から取ったゲーム制作会社・タムタムを創立した。