ワイン好きの料理おたく 雑記帳 (original) (raw)

2020年 03月 30日

時田則雄の歌集『みどりの卵』の「春は足の裏から」より

時田則雄著『歌集 みどりの卵』 ながら書房 2015年

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春はまた足の裏からやつて来て手の指先で輝いてゐる

最初の歌です。時田則雄は帯広の畑作農家です。春の訪れを足の裏、手の指先の肌感覚が教えてくれます。農業が、年に一回の毎年の繰返しであることを「また」の言葉で表現されていると思います。

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空を担いで生きて来たのだこの俺の裏も表も空のみぞ知る。

農業は、「空を担ぐ」ことであり、時田の農業への思い、生き方を知るのは「空」だけ。雄大な歌です。

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この風は何処から吹きて来るならむ土の匂ひに安らぎてをり

農家は、春の仕事播種や移植の前に土を整地します。耕起された畑からは土の匂いがします。その匂いは、毎年感じる春の匂いです。今年の仕事の始まりを迎えることできた喜びを感じます。

あーら、まあ 妻の指差すその方に茜の色の雲の流るる

今日の仕事の終わりころでしょうか。農業は夫婦で一緒に働きます。夫婦が一緒に作業する時間の長い職業です。

雨が土に染み入るやうに消えていつた母だよ 今日の空はからつぽ

時田は、何首か母の臨終を歌っています。春に亡くなったのでしょうか。

お母さんは、きっと農耕馬を飼っていた時代から、農業に携わってきたのでしょう、

染み入るように消えていつた・・・・・・空はからつぽ。心に響きます。

時田 則雄(ときたのりお、1946年9月24日 - )

歌人。北海道帯広市生まれ。北海道帯広農業高等学校、帯広畜産大学別科草地畜産専攻修了。十勝の農民歌人。

by hitoshi-kobayashi | 2020-03-30 12:16 |Comments(0)

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