ワイン好きの料理おたく 雑記帳 (original) (raw)
2020年 12月 14日
詩の紹介 川上澄生『寂寥地方』
版画家川上澄生は、昭和20年3月から昭和23年12月まで、北海道に疎開しています。安平村(現追分町)で二ケ月過し、昭和20年6月1日に白老郡白老町に転居しました。安平村は川上澄生の妻・千代の実家がありました。8月に苫小牧中学の嘱託教員(英語)となり、白老・苫小牧間(約20km)を列車通勤します。川上澄生は北海道で終戦を迎えます。
『我が詩篇』は、北海道の生活・風景を描いたいくつかの詩から始まります。
その一番目の詩『寂寥地方』を紹介します。
川上澄生は、淡々と自身が感じる「寂寥」とは何かを述べています。
私には、どれも思い当たることばかりで、川上澄生の正確な観察眼と的確な表現力に感心します。最後の一行に込められた「寂寥」感は、格別です。
一方、川上澄生に、どんなことでも取り込んでしまうような度量の大きさを感じ、そして、微かなユーモアが魅力的です。
『我が詩篇』昭和31年11月20日 龍星閣発行より
寂寥地方
ここなれや寂寥地方
我が舌と唇は凍て
眼に見知る人とてはなく
四月六日降る雪を見る
ここなれや寂寥地方
寂寥とは友有らざること
寂寥とは馴染まざること
寂寥とは煖爐燃ゆる室に居て
ひねもす無為に過ごす時
微塵の如く降りかかる 目にみえぬもの
寂寥とは市井に住みて感ずるもの
見知らぬ人と伍する時 身に覺ゆるもの
寂寥とは軒に干されし開きたる鱈を見ること
ここなれや寂寥地方
ここなれや げに
寂寥とは微塵の如く我が上にひるはひねもすふりつもるもの
北海道絵本より
by hitoshi-kobayashi | 2020-12-14 08:00 |Comments(0)
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