ワイン好きの料理おたく 雑記帳 (original) (raw)

2021年 02月 20日

詩の紹介 友田多喜雄著『詩法』より「北一条を通って」

友田多喜男著『詩法』(1969年 詩の村出版会)は、本の作り方が変っています。左開きの縦書きの頁と、右開きの横書きの頁があり、両方の表紙が同じデザインなのです。

左開きの頁の詩のテーマは「ベトナム反戦」、右開きの詩のテーマは「愛」。

友田多喜雄氏が込める思いの強さは、「左開き」の詩と「右開き」のそれは、同じなのでしょう。

紹介する詩は、「左開き――ベトナム反戦」の冒頭に置かれています。

北一条を通って

北一条を通って事務所へゆく

朝と夕方とそこを通る

銀杏の並木が西へのびる

アカシヤの並木は六丁目からだ

プラタナスの並木は道庁の裏 南北に走る七丁目道路

ある日

新聞は写真入りで書く

北一条通りのプラタナスの剪定が始った と

<美しい晩秋の風物詩> と

ところで

昨日剪っていたそれはアカシヤだ

別の新聞が写真入りで書く

アカシヤの冬支度が始った と

ところが

写真の 枝おろしている樹はプラタナスだ

そうして並木は札幌の目抜き通り

そうして新聞は日本の新聞

記者もカメラマンも日本語をしゃべる日本人の記者 カメラ

マン

よくみなければ間違うのだ

<美しい晩秋の風物詩>

だが

剪っているのは 貧しい日雇いの人たちだ

そうして同じ新聞で

ベトナムの記事を僕は読む

米軍と南ベトナム政府軍の死者〇人

解放戦線の死者〇百人

またあるとき は

テト攻勢失敗と米軍司令官

書いているのは米人記者

彼らは盲目も同然だ

ぼくは

今日も北一条を通って家へ帰る

プラタナスやアカシヤ 銀杏の並木の下を通る

友田多喜雄氏は、あとがきで<市民運動における詩の役割>について、こう述べています。

―― 詩は、自分の内なる声と外なる関わりを物質化し言語化することですがら、(略)日常性の中から日常的な言葉をいかにとりだして市民のために市民として自らの言葉に変えるかを私は考えました。

また、詩は、市民の集いで即興的に朗読されることがあると、述べています。

私は、そのような場面に出会ったことがないので、詩が持つ力の一つを知りま した。

札幌の北一条通りは、大通公園の北に平行する通りで、幹線道路の一つです。

西に進むと北海道神宮に行くことができます。

私が札幌市内で一番頻繁に歩く通りかもしれません。

2021年2月19日撮影

北一条通。駅前通り(西四丁目通)から西を見ています。

詩の紹介 友田多喜雄著『詩法』より「北一条を通って」_f0362073_15523838.jpg

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北一通から道庁赤レンガ庁舎(北)を見ています。

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by hitoshi-kobayashi | 2021-02-20 08:00 |Comments(1)

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