ワイン好きの料理おたく 雑記帳 (original) (raw)

2021年 07月 14日

今日の詩 山之口貘『鮪に鰯』より「弾を浴びた島」「桃の花」「核」

弾を浴びた島(3)

島の土を踏んだとたんに

ガンジューイ(*1)とあいさつしたところ

はいおかげさまで元気ですかとか言って

島の人は日本語で来たのだ

郷愁はいささか戸惑いしてしまって

ウチナーグチマディン ムル(*2)

イクサニ サッタルバスイ(*3)と言うと

島の人は苦笑いしたのだが

沖縄語は上手ですねと来たのだ

(*1)お元気か

(*2)沖縄方言までもすべて

(*3)戦争でやられたのか

桃の花(4)

いなかはどこだと

おともだちからきかれて

ミミコは返事にこまったと言うのだ

こまることなどないじゃないか

沖縄じゃないかというと

沖縄はパパのいなかで

茨城がママのいなかで

ミミコは東京でみんなまちまちと言うのだ

それでなんと答えたのだときくと

パパは沖縄で

ママが茨城で

ミミコは東京と答えたのだと言うと

一ぷくつけて

ぶらりと表へ出たら

桃の花が咲いていた

核(5)

もうお年ですからと言えば

なにをこの青二才がと

老人は怒ってしまったのだが

年甲斐もない顔をしてまで

握っていたいもの

それはつまり若さなのだ

by hitoshi-kobayashi | 2021-07-14 08:00 |Comments(0)

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