著作物をどのように利用するか(1) (original) (raw)
前回まで、著作権には様々な種類があることを見てきました。そして、著作権は、著作者人格権と著作財産権に大きく分かれ、後者は他人に譲渡できることを知りました。
著作財産権を所有している人は、元々は著作物を創作した個人や法人(著作者)ですが、著作財産権は譲渡されることもあるので、その個人や法人が著作財産権を所有していない場合もあります。
そこで、実際に著作財産権を所有している人を「著作権者」と呼ぶことにします。もちろん、著作財産権を他人に譲渡していなければ、著作物を創作した個人や法人(著作者)が著作権者です。
著作権者は、著作財産権を所有しているので、複製権や公衆送信権などを持っています。例えば、あるイラストについての著作財産権を所有している著作権者は、そのイラストを複製したり、複製したものをWebサイトにアップロードして公衆に送信することができます。
もし貴方が、そのアップロードされたイラストを見て、自分のSNSに一定期間だけ載せたいと思っても、貴方は複製権や公衆送信権を持っていないので、イラストをSNSに載せることはできません。
勝手に載せたらどうなるでしょうか。その場合、複製権や公衆送信権を持っている著作権者からクレーム(警告)が来るかもしれません。そして、最悪の場合、著作権者から著作権侵害で訴えられるかもしれません。
それは困りますよね。ですので、イラストをSNSに勝手に載せる訳にはいかないのです。ではどうするか・・・
簡単に思い付く方法は、貴方がイラストの著作権者になる、という方法です。いま著作財産権を所有している著作権者から、その著作財産権を譲り受けるという方法です。しかし、1つのイラストだけ著作財産権を譲り受けるのは現実的ではなく、例えば、いま著作財産権を所有している著作権者が会社(法人)であれば、ビジネスライクに多くのイラストの著作財産権を貴方に売り付けてくるでしょう。
貴方は、1つのイラストをSNSに載せたいだけなのに、しかも一定期間だけ載せたいと考えているのに、話は大ごとになってしまいます。
このようなとき、とてもよい方法があります。
それは、著作権者に対して、イラスト(美術の著作物)をSNSに載せることについて、有償で認めてもらうという方法です。著作権者が持っている著作財産権はそのままとし、イラストをSNSに載せることについて、金銭を払うことによって著作権者に認めてもらうのです。この「認めてもらうこと」を法律用語で「許諾」と言います。
著作権法は、著作物を利用することについて、著作権者から利用の許諾を得ることができると定めています。
著作権者が著作物の利用の許諾にOKすれば、貴方はイラストを利用することができるのです。
さあ、貴方はイラストをSNSに載せることができます。でも、ここで注意しなければならない点があります。
貴方は、イラストを勝手に変更することはできないのです。例えば、イラストがつり目をした犬の顔であるとき、貴方が勝手にタレ目に変更することはできないのです。もしそれをすると、イラストの著作者の同一性保持権を侵害してしまうからです。
仮にイラストの著作者が他人に著作財産権を譲渡していた場合、その他人が著作権者になっていますが、同一性保持権は著作者に残っているので、著作者が持っている同一性保持権を侵害してしまうのです。
次回は、著作物の利用の許諾について、更に見ていきましょう。