プレミア12〜侍ジャパンが戦う野球場 (original) (raw)
2024年プレミア12で侍ジャパンは練習試合、強化試合、本戦を含めて5球場を巡る。宮崎、名古屋、台北、東京。旅のプロセス順に紹介していく。
日本代表の日程(オープニグラウンド)
- 13日 vs.オーストラリア(ナゴヤ)
- 15日 vs.韓国(台湾・台北ドーム)
- 16日 vs.台湾(台湾・台北ドーム)
- 17日 vs.キューバ(台湾・天母)
- 18日 vs.ドミニカ(台湾・天母)
※グループBで2位以内に入れば東京ドームのスーパーラウンドに進出
13日にオーストラリアとの開幕戦を名古屋で終えた翌日に台湾に移動し4連戦。日本、台湾、メキシコのホスト(開催国)は全試合がナイターゲームになるのは有利だが、シーズンを終えたばかりの疲労が溜まる状態には厳しい日程。怪我や故障をなく乗り切れるか。WBCより過酷な戦いが待っている。
SOKKENスタジアム
- 開場:2014年2月(球場の命名)
- 収容:5500人
- 正式名称:宮崎市清武総合運動公園
- 所在地: 宮崎県宮崎市清武町今泉甲
- 内野:混合土
- 外野:人工芝
- 両翼:100m
- 中堅:122m
- フェンス:不明
- 主な大会:プレミア12&アジアCS合宿
- 球場メシ:釜揚げうどん、宮崎牛の串焼き
10月29日から始まるプレミア12の宮崎合宿。10日間のキャンプ地となり、11月5日に広島カープと練習試合を行うのがSOKKENスタジアム。人口3万人弱、北には美しい清武川が流れ、南は山頂から日向灘を望む荒平山に挟まれた宮崎市清武町にある。最寄りの清武駅からは徒歩40ほど。黒潮が流れる太平洋まで4キロと近く、雨は多いが温暖な気候から秋の侍ジャパンの合宿地となっている。
名前の「SOKKEN」は郷土の儒学者・安井息軒(やすい そっけん)にちなんだもの。観客席は5,500席と少ないが、両翼100m、センターまで122mあり東京ドームと同じ。内野は完全な土、外野は人工芝。秋は風が強く肌寒い。
見どころ
侍ジャパンの合宿、世界でもトップクラスの野球を眼の前で、しかも無料で見られる。キャンプは夕方までなので、子どもだけでも観に来られる。こうして野球文化は育つ。
試合は広島カープとの練習試合の1試合。日本シリーズが第7戦までもつれた場合、その選手が合流しない可能性もある。SOKKENスタジアムは唯一、内野がすべて土。選手たちは土煙をまいて滑る。そして侍ジャパンの試合はすべてナイターの中、唯一のデーゲームの練習試合。太陽と埃の中で試合し、試合終了後には美しい夕陽が侍ジャパンを包む。SOKKENスタジアムは本戦への向けての重要な滑走路となる。
球場メシ
侍ジャパンの合宿中、球場外にSAMURAI PARK(侍パーク)のキッチンカーの出店ができる。侍ジャパンは地域おこしも兼ねている。
「釜揚げうどん」600円と「宮崎牛の串焼き」800円。たまらない美味しさ。クセになう。これぞキャンプ飯。プレミア12の宮崎合宿は10日間すべて張り付くので、もちろん釜揚げうどんは昼ごはんに頂く。
バンテリンドーム ナゴヤ
- 開場: 1997年(平成9年)3月12日
- 収容:36,418人
- 正式名称:ナゴヤドーム
- 所在地: 愛知県名古屋市東区
- 内野:人工芝
- 外野:人工芝
- 両翼:100m
- 中堅:122 m
- フェンス:4.8m
- 主な大会:ドラゴンズ主催
- 球場メシ:がぶりもも焼き
プレミア12では11月9日、10日のチェコとの強化試合、13日のグループB開幕戦と3試合を戦う。得点もホームランも12球団で最も入りにくい問答無用のピッチャーズ・パーク。左右中間の外野フェンスまでの距離が116 mと東京ドームより6mも深く、フェンスの高さ4.8mも横浜スタジアムの5mに次いで高い。UFOを思わせる円盤状の不思議な魔力が働くのか、ナゴヤドームを主戦場にした平田良介は「この球場は明らかにボールが飛ばず、フェンス手前で失速する」と公言。野球場の七不思議である。
70年代、80年代の2度の計画では名古屋駅から徒歩10分の場所にドーム球場を造る計画だった。なぜか電車で30分近くかかる東区に建設。その結果、ナゴヤドーム前矢田駅から直結するドラゴンズロードが生まれた。
ナゴヤドームの最大の長所は居心地の良さ。ブルーとグリーンのコントラストが美しく、ドームの閉塞感がない。ライトスタンドの5階席は大谷翔平の打撃練習の伝説を生んだ。ナゴヤドームのポールは天井まで伸びている。ホームランかファウルかを判定しやすくするため。落合監督の進言によるもの。
見どころ
9日、10日のチェコとの強化試合は、日本シリーズに出場するチームが初めて合流するかもしれない試合。ここでチームビルディングを完遂しなければいけない。13日の開幕戦はオーストラリア。最もホームランが出にくい球場だけにパワーエリートの多いオーストラリアには不利だが、侍ジャパンも打撃力を図る指標となる。そして豪州代表はWBCやアジアCSと同じメンバーが多く、チームビルディングの点では侍ジャパンより上。しかも今年のMLBドラフトでオーストラリア史上初となる全体1位指名を受けたスーパールーキーのトラビス・バザナ(二塁手)がいるため、戦力が大幅にアップ。開幕戦で落とすと、もう1敗もできないためプレッシャーが大きくなる。重要なオープニング・ゲーム。
球場メシ
ナゴヤドームが開場すると、野球ファンは練習見学そっちのけで名物「がぶりもも焼き」を求めて並ぶ。1時間以上も並んで結局は売り切れ。幻の球場メシ。チェコとの強化試合では味わってみたいところ。
もうひとつの名物が「球弁(たまべん)」。ホームラン弁当1,300円を食べた日は、2本のホームランを観られた。この縁起のいい弁当のおかげか。ご飯、おかず、どれも絶品。この日も売り切れ。弁当の美味さは首位ではないか。
台北ドーム
- 開場: 2023年12月3日
- 収容:40,071人
- 正式名称:臺北大巨蛋
- 所在地: 台湾台北市信義区
- 内野:人工芝
- 外野:人工芝
- 両翼:102m
- 中堅:122 m
- フェンス:3.5m
- 主な大会:台湾プロ野球、プレミア12
13日のナゴヤドームでの開幕戦を終えた侍ジャパンがすぐに台北に飛び立ち、15日の韓国戦、16日の台湾戦と2試合を戦う。亜熱帯で雨が多い台湾初のドーム球場。シルバーの楕円形で、ヨーロッパの甲冑の兜に見える。1991年の構想、2012年の着工から32年をかけて幕を開けた。特定の本拠地チームを持たず、球場名の「大巨蛋」は東京ドームの「ビッグエッグ」を参考にしている。天上の高さがスケール感を演出し、東京ドームが56.2m、ナゴヤドームが64.3m、エスコンフィールドが70mであり、それより高い台北ドームは74.5m。人工芝は大阪ドームと同じミズノ製。白、ベージュ、黒の3色の座席があり、横幅や前後のスペースが広く、ゆったりと座れる。訪れた王貞治は日本のドーム球場より素晴らしいと絶賛した。14日の台湾vs.ドミニカ、15日の日本vs.韓国の2試合を観る予定だ。日台戦は秒殺でチケットが売り切れ入手できなかった。
見どころ
15日の韓国戦、16日の台湾戦ともにエースをぶつけてくるのは間違いない。韓国はアジアCSの決勝戦で日本を1失点に抑えたクァク・ビン、もしくはエースであるウォン・テイン。クァクは9月に釜山で観たがストレートのキレが桁違い。本来の力を発揮すれば、日本打線も苦しむ。台湾も2枚看板である大エース・古林叡煬(グーリン・ルイヤン)か、アリゾナ・ダイヤモンドバックスの3Aに所属する21歳の林昱珉(リン・ユーミン)をぶつけてくるだろう。古林(グーリン)は157キロのストレートを誇り、昨年のアジアCSでも日本を相手に7回1失点に抑えた。まだ24歳で将来のメジャーリーグもあり得る逸材。韓国戦、台湾戦ともに相手ピッチャーが鍵を握る。
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天母棒球場
- 開場: 1999年8月15日
- 収容:10,000人
- 正式名称:臺北市天母棒球場
- 所在地:台湾台北市士林区
- 内野:人工芝
- 外野:人工芝
- 両翼:99.1m
- 中堅:121.9m
- フェンス:不明
- 主な大会:U-18W杯、プレミア12
プレミア12では侍ジャパンが最後のオープニングラウンド、17日にキューバ、18日にドミニカ共和国と2試合する。2015年の第1回プレミア12のグループBオープニングラウンドの舞台でもあり、台湾プロ野球(CPBL)の味全ドラゴンズの本拠地。
最寄駅の芝山(ヂーシャン)駅から20分ほど歩く。勇ましい赤の装飾とゴールドの漢字。国際試合のときは「TAIPEI TIANMU BASEBALL STADIUM」という呼び名になる。
人工芝と赤土が美く、国際大会のユニホームが映える。視察に訪れた井端監督は台北ドームを「天国」、天母を「地獄」と形容したが、国際大会にふさわしい野球場である。
見どころ
ドミニカは戦力が読めないが、グループBで日本の最大のライバルとなるのがキューバ。WBCでも活躍したメジャーリーガーのヨアン・モンカダが加わり、日本プロ野球界のナンバーワン左腕のリバン・モイネロ、最強クローザーのライデル・マルティネス、日ハムのアリエル・マルティネス内野手がいるため戦力は超強力。優勝候補の一角である。
球場メシ
普段は台湾のフードを販売しているらしい。チャーハンっぽいものからお菓子、お餅などがあり、英語表記もあるので韓国と違ってわかりやすい。
U-18のワールドカップを観たときはペプシコーラとホットドッグ140元(約600円)を頼んだ。今度は地元の台湾メシを堪能したい。
東京ドーム
- 開場: 1988年(昭和63年)3月18日
- 収容:43,500人
- 正式名称:東京ドーム
- 所在地:東京都文京区後楽
- 内野:人工芝
- 外野:人工芝
- 両翼:100 m
- 中堅:122 m
- フェンス:4.24 m
- 主な大会:侍ジャパン、ジャイアンツ主催、都市対抗など多数
- 球場メシ:東京ドームドッグ、ジャイアンツ・ソーダ
3大会連続で決勝戦の舞台。11月21日から24日までの4日間。オープニングラウンドを勝ち抜いた4チームがメダルを争う。ドームランと揶揄されるように、ボールが飛びやすくホームランの多さは日本一。国際大会を彩る祝砲、打ち上げ花火。本塁打の多い球場だからこそ、ピッチャーの孤高が際立つ。東京ドームのマウンドはゴルゴダの丘。敗戦投手になるか英雄になるか。ヒッターズ・パークは打撃戦を愉しむ場であり、同時にピッチャーの孤高に耳をすませる球場でもある。
見どころ
熾烈な6チームで争うオープニングラウンドを勝ち抜いた上位2チームがぶつかるスーパーラウンド3日間、そして優勝決定の過酷な4連戦が待っている。精彩を欠きやすい疲労のピークで最上のパフォーマンスを求められる。相手が誰であろうと、最高の戦いが待っている。
球場メシ
「火が使えないから東京ドームにうまいものなし」は都市伝説。67店もグルメが並ぶ。昨年のアジアCS決勝戦を前に食べたのが、宮崎の塚田農場『鶏炭火焼丼』。宮崎合宿から始まる侍ジャパンの軌跡を締める球場メシ。プレミア12決勝戦の前にも食べる。
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