被団協、ノーベル平和賞を授賞 (original) (raw)

ノルウェーノーベル賞委員会は、2024年のノーベル平和賞を日本全国の被爆者らでつくる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)に授与すると発表した

私は長崎市に住んでいる。日本原水爆被害者団体協議会は、1956年に結成された日本の原爆被害者の全国組織であり、活動目的は核兵器廃絶である。全国組織であるから、全国各地で様々な活動がなされているのだろうが、広島、長崎は原爆が投下された地であるので、私が住む長崎市でも長崎県被団協の活動を長崎新聞紙上で拝見することも多い

私自身は被団協の活動に何もタッチしていないし部外者である。その被団協がノーベル賞を授賞したことを聞いて、身近で活動されている方々の姿を思い浮かべて、私は長崎県民の一人として大変嬉しく思った。

私たちは誰でも平和な世界であって欲しいと思うが、現実は、ウクライナにしてもガザにしても毎日多くの人々が戦争で命をなくし、傷を負っている。そして核兵器の威嚇まで行われている。なんとかして平和な世界を取り戻したいと思っても、何もできない。ただ黙って見守るしかないという状況の中で無力感に苛まされることもある。無力感はいつの間にか諦めに変わってしまうこともある。しかし、そのような中にあっても諦めずに何十年も地道に活動に取り組んできた人々がいた。被団協である。核兵器廃絶のため地道な活動を倦まず弛まず取り組んできた。その地道な活動であるが、ノーベル賞委員会にはしっかりと届いていたことを知って本当に凄いことだと思った。

ノーベル賞委員会の発表した授賞理由には次のように書かれていた。
「被団協の活動は、核兵器の使用がもたらす人道上の破滅的な結果についての認識を高めるために、たゆまぬ努力を続け、その結果、核兵器使用は道徳的に許されないという力強い国際的な規範が醸成された。この規範は核のタブーとして知られるようになった。ヒバクシャである歴史の証人たちは、自らの経験に基づく教育キャンペーンをつくりだし、核兵器の拡散と使用に対する緊急の警告を発することにより、世界中で核兵器に対する幅広い反対運動を定着させることに貢献してきた。

ノーベル賞委員会は約80年間戦争で核兵器が使われていないという、励みとなる一つの事実を認めたい。日本被団協被爆者の代表らによる並外れた努力は核のタブーの確率に大きく貢献してきた。それゆえ、今日、核兵器使用に対するこのタブーが圧力にさらされていることは憂慮すべきことだ。核兵器保有国は兵器の近代化と改良を進めている。新たな国々が、核兵器を手に入れようと準備を進めているように見える。そして、進行中の戦争で核兵器を使用するという脅迫も行われている。人類の歴史で今こそ、核兵器とは何かを思い起こす価値がある。それは世界がかつて経験した最も破壊的な兵器だ。
米国の2発の原爆によって、広島と長崎の推定12万の市民が殺害されてから来年で80年を迎える。それに匹敵する数の人々がその後の数ヶ月、数年間に火傷や放射性障害で死亡した。現代の核兵器ははるかに大きな破壊力を持っている。それらの核兵器は数百万もの人々を殺害可能で、気候にも破滅的な影響を与える。核戦争は我々の文明を破壊しかねない。

広島と長崎の地獄を生き延びた人々の運命は長きにわたり隠され、無視されてきた。1956年、地域の被爆者団体と、太平洋で行われた核実験の被害者が日本原水爆被害者団体協議会を結成した。日本語での略称は日本被団協である。
ルフレド・ノーベルのビジョンの核心は、献身的な人々が変化をもたらすことができるという信念である。ノーベル賞委員会は今年の平和賞を日本被団協に授与することで、肉体的苦しみやつらい記憶を、平和への希望の取り組みを育むことに生かす選択をした全ての被害者に被爆者に敬意を表したい。
日本被団協は何千件もの目撃証言を提供し、決議や公式のアピールを発表し、国連や様々な平和会議に毎年代表団を派遣して、核軍縮の差し迫った必要性を世界に訴えてきた。
いつか歴史の目撃者としての被爆者は私たちの前からいなくなる。しかし、記憶を守る強い文化と継続的な関与により、日本の新たな世代は被爆者の経験とメッセージを引き継いでいる。彼らは世界中の人々を鼓舞し、教育している。そうすることで彼らは、人類の平和な未来の前提条件である核のタブーを維持することに貢献している
2024年の平和賞を日本被団協に授与する決定は、アルフレド・ノーベルの意思にしっかりと目指している。今年の賞は、委員会がこれまでに核軍縮や軍備管理で授与してきた平和賞のそうそうたるリストに加わるものだ。2024年の平和賞はアルフレド・ノーベルの、人類にとって最大の利益をもたらすための努力を認めるという願いを満たすものである」

私はこの授賞理由を読んで、被団協の活動は国際的に高い評価を受け、高い期待を持たれていると改めて思った。授賞理由の中で、被団協の活動は核兵器を決して使ってはならないという核のタブーを定着させ、80年の間核兵器が使用されなかったことに大きく貢献したと明言している。しかし、今日、核兵器使用に対するこのタブーが圧力にさらされていることは憂慮すべきことだと今まさに危機に瀕していることを示し、だから人類の歴史で今こそ、被団協の活動を思い起こし、核兵器とは何かを思い起こす価値があると強調していた。

さらに、アルフレド・ノーベルは、献身的な人々が変化をもたらすことができるという信念を持っていたと語られていた。そして、現代の献身的な人々とは被団協であり、歴史の目撃者である被爆者は我々の前からいなくなるが、日本の新たな世代がその活動を引き継いで、彼らは世界中の人々を鼓舞し、教育し、核のタブーを維持することに貢献しているとも語っていた。このことから、被団協が新しい世代に引き継がれ今後もますます人類の平和な未来のために貢献して欲しいという大きな期待を感じることができた。

被団協がノーベル賞を授与されて、世界が被団協に期待しているものは何かということを強く感じることができた。「ノーモアヒロシマ、ノーモアナガサキ、ノモアウオー」の核廃絶の世界である。私も被団協と心を共にしたい。