手間がかかるなら付けたままにしてしまおう ラッセルヘッド永久固定した異端機・DD21【3】 (original) (raw)

《前回からのつづき》

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DD21形のもう一つの大きな特徴は、キャブ部分の構造にありました。塗装は国鉄ディーゼル機の標準ともいえる朱色と灰色の2色塗りで、白い帯を巻いたものでした。初期のディーゼル機に共通して、キャブ部分の上部まで灰色というパターンは、DD13形と同様でした。

前面窓はDD13形と同じ中央部に排気用の煙突を挟んで左右2個ずつ、降雪時の着雪を防ぐために旋回窓を備えた寒地仕様でした。DE10形のように煙突部が突出した折妻ではなく、DD13形と同様に切妻の形態でした。ただし、機関士の出入口は、DD13形では前後部にデッキ側に扉が備えられていましたが、DD21形は側面に出入口扉が設けられていました。これは、特に冬季にデッキ部に積雪することで扉の開閉がしにくいことや、走行中に隙間風が入ることを防ぐ目的があったと推測されます。

1963年に落成したDD21形は、東新潟機関区に新製配置されました。新製当初は期待通りに積雪時の除雪列車に充てられ、夏季は特に大規模な作業もなく入換運用に充てられました。

しかし、前述のように機関士からの視界に難点があったことや、軸重が大きいことが災いしたこと、さらに1967年になるとDE10形をベースにした、より使い勝手の良いDE15形が増備されるようになったこと、加えて1形式1両という少数機であったことなどから、1977年には兄弟機ともいえるDD20形とともに休車となってしまい、実質的に用途を喪失してしまいました。

新製から14年で実質廃車に等しい休車という扱いは、財政事情が火の車状態だった国鉄にとって、会計検査院をはじめとする国から「無駄遣い」という指摘を避けることが目的だったと推測されます。休車であれば車籍は維持されているので、必要があれば整備してまた運用するという「逃げ口上」もできます。他方、廃車となると車籍を抹消しているので、このような言い訳はできなくなるので、このような措置が取られたと考えられます。

いずれにせよ、ラッセルヘッドの脱着の手間をなくすために、車体と一体化させて永久に固定するという発想自体は悪くなったものの、見通しの甘さから結局は使い物にならない車両を誕生させてしまい、DD21形はその悲運を背負わされてしまったといえるのです。

出力1000PSという大出力をもつDML61系エンジンを1基搭載し、除雪用のラッセルヘッドを前後に「固定」させた異端のディーゼル機であるDD21形は、写真のように国鉄ディーゼル機では特異な姿だった。夏季には入換運用に充てることも考慮したが、実際に使ってみると、検修陣に配慮した設計がかえって仇になり、運用、運転ともに評判は芳しくなく1両だけの試作で終わってしまった。(©)

その後、DD21形は運用に復することなく、1987年の国鉄分割民営化を前にした1986年に廃車除籍されました。しかし車体自体はその後も新津車両所に留置保管されたままでしたが、1992年に新津車両所に新津車両製作所(→総合車両製作所新津事業所)を建設するために用地を確保する必要から、解体されてしまいました。ここまで長期にわたって保管されていたのですから、せめてどこかで保存されていればと思うのは筆者だけでしょうか。

いずれにしても、1963年に新製されてから、活躍したのは僅か14年ほどで、休車と廃車後の保管期間の方が長い鉄道車両というのも、DD21形のほかにあまり例がありません。あまり活躍できなかったという点では悲運の車両ですが、長きにわたって保管され、解体を免れていたという点では幸運だったともいえるでしょう。

今日、国鉄時代に製造された多くの除雪用ディーゼル機が姿を消しています。製造からすでに40年以上も経っていることから老朽化が進んでいることや、除雪列車を運転するためには特殊列車としてのダイヤ設定が必要なこと、そのためにディーゼル機を運転できる運転士を手配しなければならないなど、多くの手間とコストがかかります。

しかし、除雪用ディーゼル機を運用するのは旅客会社や、並行在来生で移管された三セク鉄道であり、これらの鉄道事業者では機関車を運転できる運転士が減りつつあります。代わって、気動車と同じ運転操作で走行できる除雪用気動車や、運転士の手配が必要なく保線職員だけで除雪ができる除雪用モーターカーへの置き換えが進んでいます。

かつて、鉄道の除雪は人力によって行うか、除雪用車両を特殊列車として仕立てて運行していた。しかし、前者は人海戦術が基本であり、多くの人手が必要でありコストがかかる。一方、除雪列車は人では少なくて済むものの、列車として運行するため機関車を運転する機関士が必要になり、運用と運転、そして除雪装置を操作するための人員がひつようになるなど、手間とコストが掛かっていた。近年、旅客会社は操縦操作が特殊な機関車を運転できる人員が減ったことや、保線用機械の性能が向上したことで、保線職員だけで運用できる除雪用モーターカーを導入することになり、除雪用ディーゼル機は過去のものになりつつある。(©マル, CC BY-SA 3.0, 出典:Wikimedia Commons)

これらの気動車やモーターカーは、最新の技術を投入していますが、もとを辿ればDD21形の経験があったからこそ、DE15形の開発につながり、そして現在の除雪用車両の開発が可能になったといえるでしょう。その意味で、DD21形の存在は、決して「無駄」ではなかったと考えられるのです。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。

〈了〉

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