加藤美紀画集 百花妖炎 (original) (raw)
加藤美紀は異界と現実の狭間に現れる、妖しく神秘的な女性をよく描く。美人画家は多く存在するが、これまでの深い魅力と力強い美しさを表現できるアーティストは稀である。待望の初作品集!
* * *
急激な変化の時代がきました。これからの時代を生きるための、新たな指針が求められています。
神社の鳥居に腰掛ける女性、獣の背に乗って駆ける女性……加藤美紀描く女性たちは、異界と現実のはざまに出現し、あらゆる自然現象と生命への尊厳を表現します。その感性は「八百万の神」を信仰する日本古来の神道に通じるものです。
現代日本人が、自らを神道の信仰者だと意識することはまれですが、「八百万の神」への信仰は日本人の生活に根付き、溶け込み、日本人の、ものの考え方の基盤となっているのです。
まさに日本人の深層心理をビジュアル化したような加藤美紀作品は、クールジャパンの神髄と言えます。
一方で加藤は、女性が日常の中で一瞬見せる何気ない表情を描きます。雪混じりの風の中を歩く少女。そのまなざしが、ふと春の気配を感じとったかのように明るく見開かれます。あるいは、ミシン仕事に疲れてうたた寝をする女性のしどけなさ。その部屋には、カーテンを大きくふくらませて夏の風が吹き抜けてゆきます。
異界の女性も、日常における女性も、加藤描く女性は、ともに濁りなく純粋で、炎のような生命力を秘めています。異界と日常は、遠く離れたところにあるわけではなく、実のところ両者は個人の内面でつながっているのだと、加藤の作品を見ていると、気づかされます。
画集全体を二部構成とし、第一章では異界における神秘的な美女を、第二章では日常の中で垣間見せる女性の可憐な表情を、ご覧いただきます。迫力と繊細さを併せ持つ、加藤美紀の絵画世界を堪能できる初の画集です。
「加藤はアニミズムに見られる神仏や霊獣と女性像を、
和紙に岩絵具という伝統技法ではなく、
ワトソン紙にガッシュというスタイルを用いて、
令和の時代に再び鮮烈に蘇らせてい流のである。」
--現代美術家 天明屋尚
「個人と人間の思惑を超えて、神の意思を表現するのが、神子である。
加藤は、画業を依り代として、
神の声を我々に届けることのできる、神子なのである。」
--弥生美術館学芸員 中村圭子
------------------------------------------------------------
加藤美紀 Miki Katoh
1973年、埼玉県生まれ。女子美術大学絵画科洋画専攻卒業後、文具メーカーに制作室デザイナーとして入社。その後フリーのイラストレーターとなり、絵本、ポスター、装画、CDジャケット、文具、挿絵などを手がける。
2012年より本格的に画家活動を開始。ニューヨークや台北、シンガポールなど国内外で個展およびグループ展を多数開催。
著書『大人の塗り絵プレミアム 着物姿の乙女たち』(小社刊)