「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」 1984 (original) (raw)
★★★★☆
あらすじ
文化祭を目前に控え、慌ただしい日々を送っていた主人公たちだったが、日常空間に異変が生じていることに少しずつ気付いていく。
人気テレビアニメの劇場版シリーズ第2作目。
感想
意味深なオープニング、そしてタイトルバックの後、主人公らが忙しなく文化祭の準備をする高校の様子が映し出され、物語が始まる。人がわちゃわちゃいて、ガチャガチャと好き勝手に動いているカオス感がいかにも80年代らしかった。ドタバタのコメディぽい空気に満ちている。
だが物語は不思議な方向に進んでいく。騒々しさの中に静かで奇妙なシーンを挿入することで、非日常的な世界へと導いていく演出が上手い。自然とSFな世界へと引き込まれていた。
いくつかの不思議な体験を経た後、主人公らは廃墟のような世界で生きることになる。だが生活に必要なものはなぜか揃っており、好きなだけ食べて、水辺で遊んだり映画を見たりして遊ぶ毎日だ。永遠の夏休み感がある。まるで天国のようで悲壮感はないのだが、どこか気だるく虚無感が漂っているのが印象的だ。満ち足りた日々に飽いている。
そして主人公らが、この不思議な世界にいることを大して気にしていないのが、アニメならではで良い。適度にコミカルさを漂わせつつ、ある意味で哲学を感じさせるような、深みのある物語が展開される。「インセプション」など、これまで話題になった様々なSF映画を想起してしまうような内容になっていて感心してしまった。
また、ここで描かれている終わりなき日常は、登場人物らが何年経っても歳を取らず、同じ設定のままで永遠に続く漫画の中の世界をネタにしているようにも見える。確かにそんな設定で生きている彼らからしたら、同じ一日が繰り返されようが、同じような日々が続こうが、今さら気にすることではないのかもしれない。
しかしそもそもはラブコメなのに、こんな変化球の内容を劇場版でやってしまうこと自体がすごい。「サザエさん」が、劇場版では超絶SFになっていたみたいなものだろう。当然観客が期待していたものとは違ったはずで、賛否両論あったそうだが、それでも割とすぐに評価されたというのもまたすごい。このタイプの作品は、最初は非難轟々だったが次第に評価されるようになった、となりそうなものだが、観客もレベルが高かったということだろうか。
今ならすぐにネットで賛否どちらか一方に傾いた空気が作られてしまい、時おり逆張りする人や明後日の方向を向いた意見を言う人が出てくる感じだが、ネットのない当時は、皆がそれぞれに意見を持って周囲の仲間たちと熱心に語り合っていたのかもしれないなと勝手に想像してしまった。
名作とされるのも納得の映画だ。
スタッフ/キャスト
監督/脚本 押井守
原作 うる星やつら〔新装版〕(1) (少年サンデーコミックス)
出演(声) 古川登志夫/平野文/鷲尾真知子/藤岡琢也/神谷明/永井一郎
音楽 星勝
うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー - Wikipedia
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