【書評】「プログラマーとしてはこんな人に憧れるという理想形」『岩田さん』 (original) (raw)

任天堂元代表取締役社長を務めた(故)岩田 聡氏が日頃どのようなことを考え、話していたか、若くしてこの世を去った岩田さんのエピソードや言葉のかけらからその人柄を知り、きっとあなたも惹かれてしまうはず。

コンピューター好きの岩田さんがアルバイト先で知り合った人が起業し、その誘いを受けてHAL研究所に入社、ちょうどその頃任天堂からファミリーコンピュータが発売され、日本のコンピューターゲームの聡明期、ファミコン用ソフトを受託開発し始め、ソフト開発の面白さにハマり、その後、同社の開発トップになって、会社の経営が傾いたタイミングに「もし、逃げたら自分は一生後悔する」と腹を決め、32歳で社長を引き受ける。

それまでプログラマーだった特性(バグがあったら、情報を集めて、分析して原因を特定し、一つ一つ取り除いていくという地道な作業を繰り替えすこと)が会社経営の手法に上手く落とし込まれた結果、社員全員と面接をするという方法に至る。そしてその面談中でまず初めにする質問が「あなたは今ハッピーですか?」という本質的な問いかけ。
これは、後の章で糸井重里氏が岩田さんのことを「みんながハッピーであることを実現したい人なんです。」と語っているように、社員一人ひとりの声を聴き、それぞれの持ち味(ポテンシャル)を最大限活かせるように環境を整えて、組織全体のパフォーマンスを上げるということを経営者としてやっていた(社員にも発信していた)とのことで、自分が目指すロールモデルのような人だなと思いました。
また、自社がシェアトップの時でも慢心せず、危機感を感じたら、時期を見極めたうえで、非連続な変化を伴う決断をすると語っていたのも、なるほど、そういったチャレンジがあったから今の任天堂があるのだなと。

また、岩田さんは才能について、「ご褒美を見つけられる能力」であると語っていたとのこと。
人は興味を持ったものに対して、自分のエネルギーつまり時間や労力やお金などを注ぎ込み何かしらの反応が返ってきてそれが自分へのご褒美になる。その注ぎ込むエネルギーよりもご褒美が大きいと続けられるが、ご褒美の方が小さいと挫折してしまう。つまり、小さなご褒美やその近くにある新たな別のご褒美を見つけることができる人は、継続することでき、それが結果的に成長(才能)に繋がる。このエピソードを読んでいて、ご褒美が繋がるといったところでスティーブ・ジョブズ氏のConnecting the dotsに通じるものを感じました。
第六章「岩田さんを語る」では、宮本茂氏や糸井重里氏など長年一緒に働いたり、周りから見ていた第三者の視点からみた岩田さんについて語られていて、人柄を垣間みることができます。

日本を代表するゲームクリエータープログラマー、実業家の岩田聡氏のゲームや会社、社員に対する向き合い方、大切にしていたこと、生き様などここでは紹介し切れないほど学びの多い本でしたので、ぜひおススメしたい一冊です。

著・編集:ほぼ日刊イトイ新聞
出版社:株式会社 ほぼ日

岩田さん: 岩田聡はこんなことを話していた。 (ほぼ日ブックス)