休養学 あなたを疲れから救う 片野秀樹 著 (original) (raw)
1.はじめに
最近、自分でも疲れてるな、と感じることが増えました。
そこで、今日くらいゆっくり寝たいな、と思ったとしても、年齢を重ねていくと長時間寝られるものでもないし、夜中に目が覚めてしまうこともしばしばあります。そんな中、表紙に”「休むこと=寝ること」ではありません。”、と大きく書かれた本書が気になり手に取りました。
以下では、自身が強く関心を持ったところだけ引用していきます。
2.内容
(1)日本人の8割が疲れている
- 人間は疲労感をマスキングして、一時的に忘れることができる。そのため疲れを考えに入れず、朝の体力が100あれば、1日中100のパフォーマンスを出せるはずだと勘違いしてしまいがち。しかし現実には自分の体力から疲労を引いたものが、自分が出せるパフォーマンス。
- アスリートたちは「超回復理論」に基づいて、激しいトレーニングのあとに必ず一定の休養をとることでパフォーマンスを上げていく。「必ず」「一定の」休養をとることがポイント。休むからこそ、身体能力が一段上に上がる。
(2)科学でわかった!疲労の正体
- 疲労感とは「あなたは疲労しています。これ以上活動を続けると危険ですよ。今すぐ休みなさい」という警告。もし体が疲労感という危険信号を発しなければ、私たちはどこまでも心身を酷使して、そのうち病気になってしまう。
- 使命感や仕事のやりがい、褒章への期待、あるいは「ここでがんばらなければみんなに迷惑をかけてしまう」という責任感などによって、疲労感を覆い隠すことができる。
- 問題は疲労感のマスキングを恒常的に繰り返してしまうこと。自分が疲れていることを認めず、十分な休養を取らずに活動を続けていると、今度は少し休んだくらいでは疲れが回復しなくなる。疲労の蓄積の始まり。こうなると疲労が回復するまで、予想以上に時間がかかる。
- 代謝を担う主な部位は肝臓、脳、腎臓、膵臓などだが、疲労が蓄積して内分泌系が疲れてしまうと、その結果、内分泌系代謝作用を促すホルモンの異常が見られるようになる。内分泌系の病気には、糖尿病、高脂血症(脂質異常症)、高尿酸血症(痛風)などがある。
- 自律神経が乱れると、不安や焦燥感で眠れない、集中できない、頭が痛い、倦怠感がある、イライラする、疲れやすい、食欲不振などの症状を訴えるようになる。これらの症状は「検査値には異常がないけれど本人は不調を感じる」というもので、いわゆる不安愁訴といわれることもあり、「疲れ」のサイン。
- ストレスから疲労が起こり、免疫系の不調につながる。免疫はがんからも守ってくれている。がん細胞は毎日生まれているが、すぐに免疫系が見つけて対峙しているので多くの場合は発症せずに済んでいる。しかし免疫系の働きが低下すると、がん細胞が勝ってしまい、がんを発症することになる。
(3)最高の「休養」をとる7つの戦略
- 辞書を引くと、疲労の反対語は「活力」であると書いてある。休養だけでは50%しか充電できなくても、活力を加えて満充電に近いところまで持って行く。
- 疲れたら、休みつつ、負荷をかける。次の4条件を満たすことが必要。あくまでポジティブな負荷を課してみるのが大切。
- 自分で決めた負荷であること
- 仕事とは関係ない負荷であること
- それに挑戦することで、自分が成長できるような負荷であること
- 楽しむ余裕があること
- 休養学では休養の7タイプを定義している。この7モデルを日常に取り入れることで、疲労回復は促進される。
①生理的休養その1:休息タイプ
- 休憩には注意が必要。「1日中ベッドでゴロゴロしている」「ソファに横になって映画や動画を見まくる」といった休み方は、疲労をゼロにすることはできても、活力を高めるという意味ではあまり効果がない。
②生理的休養その2:運動タイプ
- 運動すると血液の流れがよくなり、細胞の1つひとつにしっかりと酸素と栄養を運ぶことができる。それによって老廃物の除去が促進されたり、リンパの流れがよくなったりするので、疲労感の軽減につながる。「血のめぐり」をよくすることは健康の基本。それには体を動かすのがいちばん。
- 風呂に入ると水圧がかかるので、1か所にとどまっていた血液が心臓に押し返される。そのため血行がよくなり疲れが取れる。
③生理的休養その3:栄養タイプ
- 活力を得るためには、必要以上に食べないことを心がけること。それが体に休養を取らせることになる。
- よく「甘いものを食べると疲れが取れる」というが、正確には疲れを一時的に覆い隠しているだけ。楽しみとしてケーキやチョコレートなどを食べるのはかまわないが、お菓子を食べたからといって疲れが取れるわけではない。
④心理的休養その1:親交タイプ
- スキンシップやハグをしなくても、言葉を交わすだけで十分「親交」になる。親しい相手でなくても、職場の人と朝のあいさつを交わすとか、近所の人やなじみの店員さんに「お疲れさま」「最近、調子はどうですか?」「元気ですか」といった声掛けも親交の一種。人とコミュニケーションすること自体が、自分の感情をポジティブにする。
⑤心理的休養その2:娯楽タイプ
- 娯楽とはいえなくても、たとえば「鼻歌をうたう」「爪を切る」「窓を開けて空気を入れ替える」「歯磨きをする」といった何気ないことだが、十分に気分を変えてくれる。自分なりの気分転換法は、ぜひ書き留めておいてほしい。
⑥心理的休養その3:造形・想像タイプ
- 1つのことに集中すると、疲労を忘れることができる。形のある、目に見えるものを残さなくても構わない。好きなことについて空想するだけで十分。
⑦社会的休養:転換タイプ
- 転換とはまわりの環境を変えること。大がかりなものでなくても構わない。転換タイプの最たるものが旅行。普段とまったく違う環境に身を置くわけだから、とてもいい休養になる。買い物や外食でも構わない。
大事なのはここから。実はそれぞれのタイプを複合的に行うことで、疲労回復効果が2倍にも3倍にもある。複数のタイプを自由に組み合わせていく。
(4)眠るだけでは休養にならない
- 若いころはいったん眠りにつくと朝まで一度も目が覚めないのが普通だが、中高年になると、夜中に何度か目が覚めるようになる。高齢者には「眠れない」「睡眠が足りない」と訴える人が多いが、実際は睡眠量はそれほど変わらない。おそらく中途覚醒が多いので、睡眠が足りない感じがする。
- 夜になるとメラトニンという睡眠誘発ホルモンが出てくる。メラトニンは、朝起きて太陽の光を浴びてから14~16時間後に分泌が始まるので、寝る14~16時間前に日光を浴びることで、メラトニンの分泌の時間を入眠時間に合わせて調整すれば、薬に頼らず睡眠時間を調整できる。
(5)新しい「休み方」を始めよう
- 卵が先か、鶏が先かというような話だが、とにかく「平日のあとの土日で休む」のではなく、「土日に休んだ分で平日働く」と考えるようにしてみる。
- 仕事の合間のちょっとしたすき間時間でも十分に休養にあてることができる。たとえば立ち話は「親交」の要素も「転換」の要素もある。少しだけ行動を変えることで休養の質はどんどん高まっていくはず。
- 100%のパフォーマンスを前提に契約しているのに、50%のパフォーマンスしか出せなければ、会社からすればむしろ損失になっている。それよりは有休を消化してでもしっかり休みを取り、100%のパフォーマンスが出せる状態で会社に行くことが会社のためにもなる。
3.教訓
本書を読んでまずよかったのは、疲れを感じている、夜中に目が覚めてしまうのは、自分だけではないとわかったことです。感覚だけではなく客観的なデータから見てもそうだということがわかると、安心できます。
「土日に休んだ分で平日働く」という考えにも納得感が得られました。土日に何をするかで、次の1週間の質が決まるということだと思います。例えば、土日にこれからキャリアコンサルタントの資格取得を目指している受験生の支援活動をしています。その面談練習が「親交」にも、一緒に資格合格を目指して勉強してきた社外の友人とサポート役として定期的に集まり、勉強会後に食事をすることが「転換」にもなっています。10kmくらい先の会場まで自転車で行くことが「運動」であり、自分でも知らず知らず、複合的に休養学を実践できていた、ということがわかりました。
実際には木曜や金曜になると、日中に眠気を感じ電池が切れかかっていると感じることが多いです。その時には良くないこととは認識しつつもどうしても栄養ドリンクに頼ってしまっています。しかし、疲労回復しているわけではなく、疲労感をマスキングしているだけ、というのは確かになと改めて認識を新たにしました。そこでこれから栄養ドリンクに頼らない、と短絡的に考えるのではなく、疲れのサインが出ていることを認識し、うまく疲労と休息と活力のバランスを考慮しながら、うまく自分の体調やストレスに向き合っていく必要がある、という学びにつながりました。