下田正弘・永﨑研宣編『デジタル学術空間の作り方 仏教学から提起する次世代人文学のモデル』全文公開サイト (original) (raw)

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2019年12月18日全文PDF公開!

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ライブラリアン、コンピュータサイエンティスト、人文学者...複数のプレイヤーによって共同で創りあげる、デジタル学術空間という「知」のかつてない新たな形態に、これまでどう対応してきたのか。そしてこれから、どうデジタル学術空間を創っていくのか。仏教学から提起する書。
第1部「デジタル学術空間の作り方」では、SAT大蔵経テキストデータベース研究会がデジタル研究基盤を構築するにあたり実現してきたものを創成期(1994年)から現在までを詳述。第2部「仏教学とデジタル環境から見える課題」では、全体を「デジタル技術を作る・使う」「研究基盤を作る」の二つにわけ、研究者たちが課題の提起とともに、その解決の方向を示した。さいごに大向一輝(国立情報学研究所)によるコラム「デジタル学術空間の未来に向けて」で今後の展望を示す。
今後の人文学の展開には、日々生まれつつあるデジタル学知との対話が不可欠なものとなった現在、私たちは何をどう創り未来へと進むのか。その良きガイドになる書です。
執筆は、下田正弘、永﨑研宣、小野基、船山徹、石井清純、八尾史、宮崎展昌、宮崎泉、苫米地等流、蓑輪顕量、李乃琦、王一凡、青野道彦、落合俊典、高橋晃一、大向一輝。

【人文学の使命は、無意識にことばが使われることによって無反省に世界が構成されてゆく、その過程を反省的に照らし出し、そこに潜む問題を明らかにするところにある。同様に、デジタル媒体空間における次世代の人文学は、デジタル技術を使い、あらたな世界を生きる力をつけさせることに終始するのではない。やがて無意識化するだろう、その活動を外から反省的に分析し、問い返すところにまで進まなければならない。
ことばが構成する概念や事態を分析する力を発揮し世界を解明してきた人文学には、今後、情報通信技術が構成する概念や事態を分析する学問へと、あらたに成長を遂げることが期待されている。言語活動を批判するためには言語が習得されなければならないように、技術を批判するためには、技術を習得する段階を経なければならない。しかるに、声から文字へ、文字からデジタルへ、という歴史における展開は、言語が自身のより遠くの外へと向かい、そこから自身へと還帰する運動である。それは、振幅に相違があるものの、人文学が長い歴史のなかで寄り添ってきた運動にほかならない。】...epilogue 人文学の将来(下田正弘)より

■書籍版の案内はこちら
ISBN978-4-909658-19-7 C0020 A5判・並製・384頁 定価:本体2,800円(税別)
https://bungaku-report.com/books/ISBN978-4-909658-19-7.html

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【目次】

目次

prologue 情報通信革命と人文学の課題(下田正弘)
1.人文学にいまなにが起きているか
2.デジタルの学知の特性
3.具体的課題と解決の方向性

第1部 デジタル学術空間の作り方

chapter.01 デジタル学術空間の作り方 ─SAT大蔵経テキストデータベース研究会が実現してきたもの (下田正弘・永﨑研宣)
1.はじめに―「SAT大蔵経テキストデータベース研究会」前史―
2.SAT研究会の方向転換と国際連携
3.新学術領域「人文情報学Digital Humanities」の構築とSATの進路
4.完成までの取り組み
4-1.校正作業のためのWebコラボレーションシステム
4-2.外字データベースの構築と運用
5.研究基盤の提供と連携に向けて
5-1.Webデータベース初版の開発
5-2.2012/2015 年版
5-3.図像編のデータベース化
5-4.万暦版大蔵経(嘉興蔵)デジタル版の構築
5-5.IIIF Manifest for Buddhist Studies (IIIF-BS)
5-6.SAT-DB 2018年版
5-7.リンクによる協働語彙集ITLRの構築
6.国際標準へのかかわり
6-1.Unicodeへの登録
6-2.Text Encoding Initiativeの導入に向けた取り組み
6-3.IIIFへのかかわり
7.内容の分析
8.SAT-DBへの反響
9.SATの現在─デジタル環境における仏教学
9-1.成果への評価
9-2.オープンアクセス
9-3.研究資料・データのオープン化
9-4.成果公開の持続可能性
9-5.次世代人文学のための研究基盤とは
9-6.SAT-DBと人文学のためのデジタル研究基盤のこれから

第2部 仏教学とデジタル環境から見える課題

はじめに (下田正弘・永﨑研宣)

Ⅰ デジタルコンテンツを作る・使う

chapter.02 仏教論理学研究の現在と人文情報学 (小野 基)
1.はじめに/2.テクストの電子化など/3.KWIC索引─今後も作る価値はあるか─/4.電子テクストの適正化/5.新出梵文写本の登場/6.梵文再建とフラグメント蒐集/7.今後の課題と展望

chapter.03 文字検索のさらなる地平に向けて ─文字列の散在的一致を網羅するために (船山 徹)
1.序説/2.文字検索の価値/3.文字検索の二種/4.現時点での対策/5.「散在的一致」─文字検索が現在不可能な事例/6.提案したい結論

chapter.04 仏典の切れはしを読む方法 ─「根本説一切有部律薬事」新出サンスクリット写本の研究とデジタルデータ (八尾 史)
1.はじめに/2.あらたに発見された根本説一切有部律サンスクリット写本の研究/3.おわりに

chapter.05 諸版対照テキストと註釈対象語句索引の作成をどうすすめるか ─Samantapāsādikāの研究基盤を整備する (青野道彦)
1.はじめに/2.諸版本対照テキストの作成/3.註釈対象語句索引の作成/4.将来の構想─伝統内在的なテキストの再現

chapter.06 一切経音義全文データベースの構築と研究 (李乃琦)
1.はじめに/2.先行研究/3.『一切経音義』日本古写本/4.「一切経音義全文データベース」の構築/5.「一切経音義全文データベース」の活用/6.今後の課題

chapter.07 チベット語大蔵経データベースの利用および本邦に伝存する漢語大蔵経とその調査の重要性と可能性 (宮崎展昌)
1.はじめに─チベット語大蔵経および漢語大蔵経の来歴の概略/2.チベット語大蔵経の「仏説部」(カンギュル)のデータベースとそれらによって参照可能な諸本資料/3.日本に伝存する写本および版本大蔵経─それらを実際に調査することの重要性と可能性/4.まとめにかえて

chapter.08 引用出典検索・読解とデジタル化 ─曹洞宗学におけるデジタルアーカイブの活用 (石井清純)
1.はじめに/2.道元研究とテキストデータベース/3.曹洞宗典および関連史料と画像データベース/4.禅学研究の学際的・国際的展開─仮字『正法眼蔵』を中心に─

Ⅱ 研究基盤を作る

chapter.09 中世の手書き写本のOCR翻刻テスト報告 (蓑輪顕量) (研究協力者:ジッリオ・エマヌエーレ・ダヴィデ、余新星、田中翔悟)
1.はじめに/2.最初の試行/3.第二の試行/4.第三の試行/5.人間による文字の読解との比較を通じて/6.おわりに

chapter.10 慧琳撰『一切経音義』の符号化をめぐって (王一凡)
1.はじめに/2.資料としての慧琳撰『一切経音義』/3.デジタルテキストにおける文字/4.紙本からみた符号化/5.技術からみた符号化/6.まとめ

chapter.11 電子テキストの有効利用に関する雑感 ─文献資料のモデル構築の可能性 (宮崎 泉)
1.はじめに/2.研究対象としてのテキスト/3.テキストと漢字/4.テキストと書誌情報/5.おわりに

chapter.12 サンスクリット文献電子データについての雑想 (苫米地等流)
1.はじめに/2.電子テキストデータベースかリポジトリか/3.還元梵文によるデータのコンタミネーション/4.最後に、テキストの構造化について

chapter.13 蘇州西園寺蔵『大正新脩大蔵経既刊分一覧』(昭和五年四月現在)に見られる刊行予定書目 付 "大正蔵刊行予定書目"と現行『大正蔵』の比較 (落合俊典)
1.蘇州西園寺と藏經樓/2.『大正新脩大蔵経既刊分一覧』(昭和五年四月現在)に見られる刊行予定書目/3.大正蔵の全体像を知ろうとした人物/"大正蔵刊行予定書目"と現行『大正蔵』の比較

chapter.14 研究者による情報発信としての「学術ウェブサイト」の評価の行方 (高橋晃一)
1.研究者による情報発信はもっと積極的にされてよい/2.2001年の研究者自身による「オープンアクセス」/3.個人運営のデータベースDigital Dictionary of Buddhism/4.XML、TEI/5.電子データをどう提供するか

columm デジタル学術空間の未来に向けて ─縦割りではなく協働的な体制へ (大向一輝)
1.はじめに/2.デジタル情報の固定化/3.オープンサイエンスと研究データ/4.人文学におけるデジタル学術空間

epilogue 人文学の将来 (下田正弘)
1.ある仏教思想研究者の批判から/2.人文学の使命

執筆者紹介