普遍って何? (original) (raw)

画家の千住博氏が興味深いことを語っている。「"私の代わりに描いてくれた"と、多くの人に思われることが"普遍性"になる」 氏はテレビや記述などで同趣旨の話をしている。

ふへん【普遍】
すべての、または多くの、対象に共通のもの。(岩波国語辞書)

千住氏は鑑賞する側の視点に着目しているのがおもしろい。氏はまたこんなことも語っている。「賞を獲ったり、 世の中から注目されたりする作品は"世の中から必要とされている作品"ということです」

こうした考え方は、ジャズにも活用できるだろう。たとえば、「ジャズって何?」という問いかけ。ジャズといえばモダン・ジャズと答える人が多い。ビバップからクール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、この辺りまでのジャズをイメージする。もちろん、ニューオリンズ・ジャズ、スイング・ジャズ、ソウル・ジャズフュージョン・ジャズなども存在するわけだが、モダン・ジャズのファンが圧倒的に多い。再発盤の出る作品数や回数の多さでも明瞭である。

これは、「ジャズといえばモダン・ジャズ」ということを、「私の代わりに言ってくれた」と感ずるジャズ・ファンが多いことを示しているわけだ。多数の意見や考えが本流となる。そう言ってしまえば、簡単すぎてミもフタもないかもしれないが、物事というものは基本的にそういうものだろう。

僕は判官びいきなところがあって、少数派の意見に組したくなる性分である。だが、「ジャズといえばモダン・ジャズ」という考えに反したい気持ちを持とうとしても、実際はそうではない。概念的にも感覚的にも、モダン・ジャズがジャズの本流であることに少しの疑問も持てないからだ。

ある有名ジャズ・ミュージシャンがこんなことを言ってる。
「特定の音楽にジャンル名をつけるのはレッテルを貼ることであり、その音楽を限定してしまう」
これは重要な意見である。レッテル貼りは、音楽の可能性を閉ざしかねない。ジャズの普遍的な本流を楽しみながら、新しい試みや挑戦を受け入れるマインドを持ち続けたいものだ。