Q.ヴォイストレーニングは誰にでも必要ですか。プロになるために、ヴォイストレーニングは必要ですか。 (original) (raw)

A. 私は、そこから疑うべきだと思うのです。つまり、あらゆるトレーニングは目的の達成のために行なうことです。その目的とは何か、を見ずにトレーニングは成立しないのです。いえ、効果をうんぬん言えないのです。

しかし、「プロになりたい」という目的に対して、「ヴォイストレーニングを行なわなくてはいけないということ」は必ずしも結びつきません。なぜなら、プロになった人の多くは、“ヴォイストレーニング”をやっていないからです。また、プロになってから、始めた人も多い。(とはいえ、せりふや歌の練習のなかに包括されていたといえるとも思いますが。)この場合、大切なのは、あなたにとって「プロとは何か」ということを具体的にすることです。ヴォイストレーニングは使い方しだいで有効でしょう。私は、プロどころか、日本人全てに必要だと思っています。

私はトレーニングは、常にそれが何のためにやるのかを考えることと言い続けています。もちろん、それを何に使うのかは、それぞれの人の自由です。ストレス解消、ボケ防止などに使うのも大変に結構です。(♭π)

A. ヴォイストレーニングは、誰にでも実施していただきたいものです。声の小さな人には、楽に大きな声を出せるように。声は大きいけれど、大きな声を出し過ぎて、汚い声になっている人には、美しい声に。落ち着いた低い声を出したいのに、かん高く子供っぽい声になってしまうのがお悩みの人には、温かく包容力に満ちた低音を。また、高齢化社会に伴って、誤嚥性肺炎の予防のためなどにも、活用してほしいと思います。

ヴォイストレーニングは、喉回りだけでなく、呼吸回りのトレーニングも重要になってきます。最近は、スマホやPCとにらめっこし続けるお仕事が増えているようですので、手軽な運動不足解消にも、とても役に立つと思います。

また、声のプロになるために、ヴォイストレーニングは、自分の個性を見つけ、磨いていくために、役にたってくれます。声の分野によっては必ずしもヴォイストレーニングは必須ではありませんが、プロになった後、プロとして活躍し続けるためには、間違いなくヴォイストレーニングは必要になります。たまたま、声の魅力が認められて、声のプロになれても、その後何十年にもわたって、声の魅力を維持していくためには、ヴォイストレーニングは力強い味方になってくれるのです。(♭Ξ)

A. ヴォイストレーニングはすべての人に必要なことではありません。もしやらなかったとしても、その人の生活や人生において何も困ることはないと思います。ですが声を使う何かしらのプロになりたいとしたら、それ相応の努力と練習が必要になるでしょう。特に声に関しては、自分の身体そのものが楽器であり、さらに私たちは自分の声を客観的には聞けないため、第三者からの意見・指導は上達していく上でとても大きな助けとなります。

レッスンをしていると、人それぞれが持っている固定概念が上達の邪魔をしていることが多いと感じます。たとえば、大きい声を出し続けていれば声は強くなると思い込んでいる人は、声が疲弊していることにも気づかず、日常的に喉に負担をかけ続けています。もしそれが喉で力んでいる声だった場合、声の出し方を改善することで今までよりずっと楽にヴォリュームのある声を出せるようになります。技術面の上達はもちろんですが、声の捉え方や取り組み方といった面もプロになるためには必要な要素なので、トレーニングをしていく中で合わせて学んでほしいものです。

(♯α)

A. トレーニングをしなくても、プロとしてのパフォーマンスを最大限に発揮できるような人であれば必要ではないのかもしれません。ただし、それはごく稀な人に限られるのではないでしょうか。聞き手に対して、プロとして自分が何を提供できるのか。現時点で提供できるものにどれほどの価値をお客様がつけてくださるのか。それを客観的に分析しなければなりません。もちろん、個性も商品価値の重要なポイントです。それらを総合的に判断して、現時点で、自分という商品を買いたいと思えるでしょうか。もし、少しでも躊躇うようなことがあるのであれば、それはトレーニングと練習で、自分自身を磨き、商品価値を上げていかなければならないと思います。私個人の価値基準で申し上げれば、プロと名乗る以上は、日々の研鑽とメンテナンスは必要不可欠です。それを行っていても、ときにはちょっとのずれが大きなケガを生む原因になってしまう場合もあります。日々のたゆまぬ努力というのは、パフォーマンスに還元される必要不可欠なものだと思います。(♭Я)

A. 声を出すことを仕事にしない人は不要かもしれませんが、ヴォイストレーニングで得られるメリットはたくさんあります。喉の健康、誤嚥防止、メンタル面の安定、セルフプロデュースなどがあげられます。日本語は、口も舌もあまり動かさなくても話せてしまうため、日常会話では声はほとんど鍛えられません。こちらに通われている生徒さんで、小学校の先生をしている人がいわれていたのは、在職中は大声を出す日々だったのに、退職して声を使わなくなると、めっきり声が衰えたとのことでした。

声を使って仕事をする人は、自分の身体の特性をよく知るためにも、ヴォイストレーニングは必要になってくると思います。その人の得意な点、弱点、どんな癖があるか、などを知っておく必要があります。さらに、どこの筋肉を意識するとどういう声が出るか、自分の身体や機能を知り尽くすことはプロとしての責任でもあり、追求する喜びでもあると思います。(♯β)

A. 声を仕事にしていこうと思った以上、広い意味でのヴォイストレーニングは誰にでも必要だと思います。才能があって、何のトレーニングもせずに、特に問題なくプロになった人もいると思います。ところが、年月が経ってから急に不調になるということもあるのです。昨日まで出ていた声が出ない。その時に、トレーニングの必要性を痛感するでしょう。逆に、トレーニングをしないと全く声が出ないということもあるかもしれません。そういうあなたこそチャンスです。バレリーナでもお相撲さんも、はじめから身体が柔らかいよりも、はじめは固い身体をトレーニングを重ねて柔らかくしたほうが、よいのだそうです。苦労があったほうが、ファンもつきそうです。やはりトレーニングは皆に必要なのではないでしょうか。(♭∴)

A. 大谷翔平選手のようなずば抜けた能力の持ち主でも毎日基礎練習をするのです。普通の人間に必要ないはずがないでしょう。

確かに10代20代のうちなら、何もしなくてもナチュラルにいい声が出る人がいます。天賦の才といってもいいその声は、磨かなければ加齢とともに失われます。少し故障しただけで声の出し方を忘れてしまいます。そうならないためにはトレーニングが必要です。

レーニングは理論でもあります。呼吸や身体を鍛えていくのと同時に、「ここをこうすればこうなる」という知見を得て、フィジカルとロジカルを結び合わせていくわけです。この関係が強固になれば、少々外れてしまってもリカバリーできるようになるのです。

ひとつ、トレーニングの重要性を如実に表すエピソードを紹介しましょう。

17世紀イタリアの作曲家・ポルポラは高名な声楽教師でもありましたが、彼はある弟子に毎日毎日、たった1ページのおもしろくもない練習曲だけをやらせました。6年後、彼は「もう何も教えることはない。行け、お前は世界一の歌手だ」といって弟子をデビューさせました。弟子はヨーロッパ中を席捲するカファレッリという名歌手になりました。

数学に王道なしと言いますが、ヴォイストレーニングもまた同じです。(♯∂)