『脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか』(紺野大地、池谷裕二)など (original) (raw)

【目次】

脳と人工知能をつないだら、人間の能力はどこまで拡張できるのか 脳AI融合の最前線

脳に電極をブッ刺さなくても

生物(人間)の脳と人工知能を連携させることで、可能になる未来や課題について論じた本です。書名からは「頭蓋骨に穴を開けて脳に電極をブッ刺す!」みたいなSF的世界が思い浮かびそうで須賀、(確かにイーロン・マスクはそれをやろうとしているものの)そうでない連携方法も多く紹介されています*1。機材を装着することで脳の活動部位を測定し、精神疾患を抱えている人との類似性から病気の診断を行う・・・といったものも含まれます。

また、今後の展望として、脳内の情報をよりよく読み取ったり、脳に届いた情報を補強*2したり、あるいは言語やジェスチャーなどを使わず脳と脳とを直接連携させたり*3、さらには脳に何らかの情報をインプットするとか、ある人間の脳をコンピューターで再現する(いわゆる「電脳化」)ようなことまでが挙げられています。その上で著者が強調するのが、もちろん侵襲的方法の方が効果が上がりやすいものの、そのリスクに値するメリットがないと広まっていかないだろう、ということです。

まだまだ未知の領域が多く、その力をフル活用できていないともされる脳と、「第三次ブーム」下で日進月歩の発展著しい人工知能の連携。期待は大きいで須賀、個々人としてもトレードオフは慎重に見極める必要は当然あるでしょう。

内心の自由をどう守るか

一方で、社会としてさらに深く考えるべきは、他人の考えていることを外から覗き見て、その脳に何らかの概念なりをインプットしうる技術をどのような規制の下で活用していくのか、ということでしょう。

canarykanariiya.hatenadiary.jp

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前者はフィクションですが、後者はそうではありません。「脳と人工知能をつなぐ」技術が、国家権力によるこうした所業に悪用される可能性は、現実的に想定する必要があるでしょう。そんなディストピアを招かないために今からできることはなんなのか、考え込んでしまいました。

こちらも一緒に読みました

この機会に、以下の本も読んでみました。どれも平易でよいと思いました。特に人工知能は、自動運転を筆頭とする活用法や技術・社会的課題についてもバランスよく触れられていました。

東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい 人工知能

東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい 脳

東京大学の先生伝授 文系のためのめっちゃやさしい 睡眠