愛情と友情、ボーナスステージ ~にじよん あにめーしょん2感想週報⑬⑭⑮ (終)『姉王決定戦』『同好会とお弁当』『同好会とゲームセンター』~ (original) (raw)

※本記事は『にじよん あにめーしょん』BD BOX特典映像のネタバレを含みます。未視聴の方、購入しようか迷っている方はご注意ください。

4月に放送が開始された『にじよん あにめーしょん2』は、6月21日 (金) の12話をもって感動のフィナーレを、

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またしても迎えませんでした。

1期と同じく、26日 (水) 発売のBD BOXにあと3話収録されています。1期とは異なり、3話はそれぞれ別の内容になっていますが、今度は1人ずつではなく、同好会メンバー同士の「仲間でライバル」という関係性にフィーチャーしていました。

1期の特典映像

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BDのもう1つの特典である2年生5人のカード

13話 ~相対の姉、絶対の母~

1期9話『妹王決定戦』の続きにあたる回です。前回、「みんなの妹」ではなく「それぞれ特定の人の妹」になっていった璃奈が優勝しましたが、今度はかすみが即「優勝はエマ先輩」と断言します。妹もそうでしたが、かすみは何か絶対的な存在への希求が強いのでしょうか?

妹王

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言わずもがなの強さかと思いきや、タイプが異なる「姉キャラ」である彼方と果林も参戦を宣言します。蚊帳の外に置かれていらつくミア、便乗して参戦するせつ菜と嵐珠、立候補していないのに栞子から勝手に候補に推される歩夢とドタバタになってきたところで、かすみからは「姉王は妹王が選ぶべき」という珍しくもっともな提案がありました。妹王は璃奈。ここまで来ると、もう展開は読めているのですが、璃奈はいつも璃奈を庇護してくれる愛を選びます。これは審査員特権というか、審査員の人選が悪いですね (笑)。
ところで、愛はお姉さん系であるにもかかわらず、美里を姉として慕って育ってきた「妹」です。ここで、彼方・遥としずく・オフィーリアの出会いによって姉妹の立場の変化を描いた1期8話を思い出します。人には人の姉妹愛があり、立場が変われば姉的か妹的かは変化しうるのです。

妹だとか姉だとか

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負けじと「母王決定戦」を開催するかすみ。勝つのはもちろん「エママ」でした。どうしてもエマを優勝させたい拘りが何かあったのでしょうか……。
ところで、璃奈が「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」と言っていましたが、確かTVアニメ1期の生放送で矢野妃菜喜さんの「ヒトリダケナンテエラベナイヨー!!」を最初にコピーしていたのは田中ちえ美さんだったような気がします。

14話 ~なぜせつ菜の料理は劇物なのか~

13話とはまた切り口の違う「愛情」の話です。
歩夢と彼方のお弁当、かすみのコッペパンと料理上手が多い同好会。さらに、自分で作ったわけではなくても愛の祖母のぬか漬け、嵐珠の料理人 (?) の肉*1など、何でも美味しく食べてくれるエマにみんなが食べ物をあげていきます。その流れを断ち切ったのは果林でした。果林といえばいつもエマにお世話されているイメージですが、体型管理は果林のほうが得意で、自分の得意なことを大事な人のために活かしていることがわかります。わかりきっているようですが、甘やかすばかりが愛情ではありません。
話題は歩夢の卵焼きの秘訣に移ります。歩夢が侑 (または「あなた」) の好きな卵焼きを作っていたことは以前から知られていましたが、侑に喜ばれたのが嬉しくて、もっと喜んでもらえるように研究を重ねていた様子が描写されました。積み重ねが得意な歩夢らしいエピソードですが、こんなにずっと侑のことを想い続けていれば「嫁王決定戦」で勝てるのではないでしょうか。愛情は最高の隠し味、というのは彼方も認めるところで、やや拙い遥の卵焼きが世界で一番だと断言します。
では、何故せつ菜の料理はあんなに酷いのでしょうか? せつ菜だって、ファンに愛情を注いでいるはずなのですが……。実は、せつ菜は料理の技能がないわけではなく、味付けの独創性が高すぎるだけであるようです (『スクスタ』などに描写あり)。初期の同好会がせつ菜のやり方に合わせようとしたら破綻したように、せつ菜のやり方が通用しない分野というものはいろいろあるのだと思います。やはりせつ菜は「天才」であって、誰にも真似できないパフォーマンスをする半面、何故そうなるのかわからないレベルの料理ができてしまうのでしょう。『スクスタ』『毎日劇場』でにこがしていたように、その独創性を潰して料理を作らせるのは、ニジガクらしくありません。とはいえ「せつ菜スペシャルインフィニティランチボックス」は被害者が出てしまうので、せつ菜が料理しようと思ったら阻止するしかない、ということになるのかもしれません。

15話 ~これからも「仲間でライバル」~

この回は、『Level Oops! Adventures』を流しつつ、『ラブライブ!』らしさが垣間見える日常回でした。
ニジガクメンバーの勝負魂に火を点けるのは、ゲームセンターでした。せつ菜と璃奈は格闘ゲームで、果林と栞子と彼方はレーシングゲームで、愛と嵐珠はエアホッケーで、等々、誰もが本気を出していました。適性があってもなくても (逆走してしまう果林も、安全運転すぎる栞子も) それぞれやりたいものに全力で、まさにニジガクを端的に表す映像でした。
熱戦の舞台はたこ焼きミュージアムに移ります。ここのロシアンたこ焼きにまつわる苦い思い出が璃奈に蘇ったシーンの「にじよん in にじよん」も面白かったです。辛いたこ焼きを引いたのは、その璃奈でした。璃奈だけに辛い思いをさせまいと、全員で辛いたこ焼きを食べ尽くした (!?) メンバーたちは、集合写真を撮ります。ここで歴代の名シーンを思い出してうるっときたのは、私だけではないと信じています。μ'sの解散を決め、駅の証明写真機で集合写真を写した『ラブライブ!』2期11話。あるいは、ラブライブ! 北陸大会という大舞台を前に、蓮ノ空メンバーたちが配信カメラいっぱいに今の自分たちの姿を刻んだ2023年11月30日の『With×MEETS After』。今回も画面いっぱいにみんなの顔が集まるカットです。デフォルメされたキャラデザがそれに一役買っています。μ'sや蓮ノ空のように大きな決断や決意をしたシーンではありません。しかし、こうした他愛ない一瞬が輝いていて、ニジガクにとっての「永遠の一瞬」となるのです。

総括 ~同好会とあなた~

『にじよん あにめーしょん2』は、『同好会とビクトリーロード』というなんでもありの茶番劇を通奏低音に、前半で同好会や虹ヶ咲の輪郭線を探っていたように思います。せつ菜のせつ菜でない姿である菜々や、学園を自由に歩き回るはんぺん、彼方の一日店長で表現された現実のお台場との接点など、スクールアイドル同好会の周囲にニジガクらしさが広がっているのが表現されていました。そして、終盤のストーリーでは、『同好会とビクトリーロード』で「侑 = あなた」を示しつつ、侑がスクールアイドルとして成り立つ姿を描きました。終盤のテーマは、2期の結末とも重なっています。アニメ2期は新メンバーの加入ストーリーやユニットの結成ストーリーに尺を割いていますが、『にじよん あにめーしょん2』はそれが無い分、同好会と外との関わりに着目しているのです。他のラブライブ!が部の内部での人間模様を描く一方、『虹ヶ咲』は『スクスタ』以来、同好会メンバー以外との関わりを積極的に取り上げてきました。
『虹ヶ咲』は「あなたと叶える物語」です。どんなところにいて、何をしている「あなた」にも、その人それぞれのニジガクのスクールアイドルとのかかわりがあります。高咲侑に感情移入できない人でも、ニジガクとの接点を見いだせる場所は必ずあります。そして、それを推し進めると、その人なりの「スクールアイドル性」があるというのです。スクールアイドルは確かに特別な存在であるかもしれませんが、誰もが特別で、その特別な力で周りに良い影響を与えることができたら、もうスクールアイドルになれるということです。『にじよん あにめーしょん2』は、『虹ヶ咲』の原点に立ち返る物語でした。
次は『完結編 (えいがさき)』と『にじちず』。どちらも新しい切り口で、ニジガクの想いを伝えてくれることに期待しています。