LED ZEPPELIN - CELEBRATION DAYS (original) (raw)

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ステレオ・カートリッジをモノラル再生で使用する際、左右チャンネルを「並列」で接続する方法と「直列」で接続する方法があります。Shureのカタログでは並列接続が紹介されていますが、直列接続にもメリットがあります。

モノラル盤では、左右チャンネルの位相は基本的に一致しています。この場合、直列接続では左右の信号が合成されるため、音楽信号が強調され、ノイズが軽減される効果が期待できます。

特に、溝の両面に傷ができてノイズが発生する場合、再生時に左右チャンネルから逆相の信号が出力されることがあります。このようなケースでは、直列接続によってノイズが相殺され、よりクリアな音が得られる可能性があります。

よく「モノラル・カートリッジを使うとノイズが少なくなる」という話を聞きますが、その理由のひとつは、昔のモノラル・カートリッジが垂直方向に感度(コンプライアンス)がなかったためです。垂直方向に動くことで発生するノイズは再生されないため、結果的にノイズが減ります。

モノラル盤用のカッティングでは、垂直方向の信号は記録されていないため問題ないように思えますが、何十年も経ったレコードには、垂直方向に針を動かすような傷がついている場合もあります。そのため、昔のモノラル・カートリッジをそのまま使用するのにはリスクがあるかもしれません。

また、現代のモノラル・カートリッジでは、水平方向に2つのコイルが配置されていて、垂直方向には感度がない機種があります。このようなカートリッジは4本のピンから二つの信号を出力しますが、厳密には左右別々の信号を出力しているため、純粋なモノラル信号とは少し異なります。

そのため、特にこだわらないのであれば、わざわざモノラル・カートリッジを探さなくても、Shure M44をモノラル結線することで、手軽にモノラル盤を楽しめるのではないかと思います。

N44-1は今となっては入手は難しいです。50年代に限らず、それ以降のモノラル盤を聴くのであれば、もう少し針先のRが小さなN44-7あたりを試すのもいいかもしれませんね。

M44にはN44-1という針があって、ShureではモノラルLPの再生にこの針を推奨しています。

先端のRが1milで、針圧が1.5~3gと、いかにも50年代のモノラルLPに合いそうな仕様ですね。

モノラルLPというと昔のレコードという印象ですが、現在でもステレオのカッティング・レースで作られていて、それらについてはN44-1ではなく、もっとRが小さくて針圧の低い針でもいいような気もします。

N44-1はモノラルLP用の針なのですが、M44の本体は発電するコイルが二つあって、ステレオで出力されます。

カートリッジからのステレオ出力をモノラルに変換する必要があるのですが、Shureはどう考えているのでしょう??

1965年のカタログを見ると、M44とM55Eについて、配線については解説が記載されています。

これを読むと、並列で接続してアンプの左右どちらかに接続するように読めます。

また以下のリンクには、サービス部門への問い合わせについて、メーカーの回答が掲載されています。

https://service.shure.com/s/article/playing-monaural-lps?language=en_US

https://service.shure.com/s/article/wiring-a-m78s-for-mono-on-a-stereo-turntable?language=en_US

こちらでも並列(もしくは片方)で出力するようにと書いてあります。

モノラルの接続には並列のほかに直列もあります。

ずいぶん前に、Shureのドキュメントの中で直列による接続法が解説されていたような記憶があるのですが。。。

今回はそのどきゅ面を見つけられませんでした。

1968年にはM44Eが登場します。

型式にellipseの頭文字”E”が付いているので、楕円針が付いたカートリッジです。

65年には、M55Eが発売されましたが、どこが違うのでしょうか。カタログを見ると、いくつも違いがあることがわかりました。

M55Eの仕様は、針先が0.2×0.7mil、出力が6.6mV、コンプライアンスが25.0×10⁻⁶cm/dyn、針圧が0.75-1.5gです。

一方、M44Eの仕様は、針先が0.4×0.7mil、出力が9.3mV、コンプライアンスが15.0×10⁻⁶cm/dyn、針圧が1.75-2.5gです。

紹介文にもありますが、楕円針の優位性を持ちつつ、針圧の重い古めのターンテーブルに合わせたようです。

本体の色はどちらも白ではなく(おそらく茶色でしょうか)、従来のM44は白のままです。

またいくつかのカタログを見て気付いたのですが、66年までのスタイラス・ノブには

正面に細いスリットが入っていますね。

一方、68年のカタログに記載されたM55EとM44Eのノブには馴染みのある三角形の切り欠きがあります。

この年、M44の製品群にM55EとM44Cが加わります。

M55Eは、M44とは違う型式なのですが、外観はそっくりです。わずかな違いは銘板に描かれた型式と本体の色だけです。カタログの写真は白黒をなのでどんな色なのかは分かりませんが、少なくとも白ではないようです。
のちにM44は茶色になったので、おそらく発売当初のM55は同じ茶色なのではないでしょうか。

たぶん本体はN44と同じだと思いますが、M55Eを持っていないので確かめられません。ただネット上では、本体は同じものだという方を見かけましたし、現在E-bayなどでは、ジェネリック針がM55でもM44でも使えるものが売られています。

M44と比べてみて外観以外の違いは、針にあります。Eという型式の通り、楕円針が採用されています。0.2×0.7ミルというので、V15と同じ寸法の針先になっています。

【参考】単位の換算
1/1000インチ=1ミル=25.4μm

カタログによると、”低いトラッキング圧力でトラッキングするように特別に設計されたトーン・アームを備えたすべての高忠実度アプリケーションで使用するために開発されました”と書かれています。Hi-Fi向きの製品ですね。

一方で、M44Cは従来からある重めの針圧をかけるトーン・アームに合わせた設計になっているようです。カタログでは、”モデル M44C ダイネティック蓄音機カートリッジは、特定のレコードチェンジャーなど、3 ~ 5 グラムのトラッキング力を必要とするすべての高忠実度アプリケーションで使用するために開発されました”と紹介されています。

古いカタログを見ながら、M44の変遷を辿ってみます。

1964年のカタログを見てみると、M44-5とM44-7が記載されています。違った製品かというとそうではなく、銘板にM44-5、M44-7と書かれていることを除けば、外観は同じです。つまり、違った製品というわけではなく、カートリッジの本体は共通なのです。

それぞれのカートリッジの針にはN44-5とN44-7が使われていますが、本体が共通なため、互換性があります。交換針には、他にN44-1、N44-3がありますが、これらもM44-5、M44-7に使えるようになっています。M44-1やM44-3というカートリッジは発売されていなかったようですね。

M44は年を重ねるごとに外観の変化がありますが、この最初の時点では白で、正面の銘板の地がミラーになっていて、カモメのマークとM44-5かM44-7という型式が印刷されています。

針については、使い分けができるようです。

今回の特許US3077521は、前回のUS3077521と番号が一つしか違わないことから、同時に出願されたものでしょうね。権利化も同時に行われており、1963年に成立しました。

patents.google.com

内容としては、ステレオ盤を再生するMMカートリッジの基本的な要点を押さえています。

クレームを読むと、以下のように記載されています:
The "pickup cartridges are easily constructed, and will withstand hard use. They lend themselves to precision construction, and will re- I a s arranged about said core, one of said cores being mounted forwardly and one of said cores being mounted rearwardly'with respect to said gap between the pole pieces, the orientation of 'said pole pieces being such that they form a common gap and the gap direction lines of the respective pairs of pole pieces are perpendicular to each other, and an armature-stylus sub-assembly, said subassembly comprising a generally sheet-form supporting member having a ferrule at one end mounted within said common gap, a bearing of an elastomeric material having an axially positioned aperture forming a socket fixedly mounted within said ferrule, an armature comprising a permanent magnet operatively' mounted in said socket for angular vibration within said common gap'substantially about a point'intermediate the poles of said magnet, the magnetic axis of said armature being oriented susbtantially perpendicular to both said gap direction lines, and a stylus affixed to said armature for transmitting vibration thereto, whereby said sub-assembly is removable by grasping said supporting member and retracting said sub-assembly axially.

おおまかな内容は、以下の通りです。
・二つの電磁システム(前方と後方)が直交するポールピースを持ち、共通のギャップを形成している

・アーマチュアスタイラスのサブアセンブリは、エラストマーベアリングと永久磁石を含み、このギャップ内で角度の振動を行う

・サブアセンブリは軸方向に取り外すことが可能

この構造は図1、2を見ると理解できます。ポールピースが直交していて、45度の各溝面に応じて音を拾うようになっています。U字型のコアが重ねられており、それぞれのコアには二つのコイルが直列になるように巻かれていて、誘導電圧が加算されるようになっています。ギターのハム・バッカーPUのように、出力を上げながらノイズを打ち消すことができる設計ですが、ノイズを打ち消す点については特に言及されていません。よく考えられた設計だと感心しますが、公知の技術なのかもしれません。

構造上、サブアセンブリが着脱できます。針交換ができるのはMMのいいところですよね。

4番目のクレームには、以下の内容が記載されています:
A sub-assembly according to claim 2 wherein said spring means is a wire spring one end of which is connected to said stylus and the other end of which is connected to said supporting member.

・スプリング手段がワイヤースプリング

・一端がスタイラスに接続され、他端がサポートメンバーに接続されている

とあります。

これは再生中に針が引っ張られないようにする対策ですね。Shureの純正交換針を見ると、本体に取り付ける板金部材の縁に半田付けの跡があります。この半田はワイヤーを固定するためのものです。

サードパーティの製品にはワイヤーがないものもあり、その場合はエラストマーだけで針を支えていることになります。長期間使用するとエラストマーが変形し、音が歪む原因になるそうです。

この特許はかなり古いものですが、この時点でMMカートリッジは完成されていた印象です。音質の精度を高め、長期間の使用にも耐える堅牢な設計を持ちながら、正確な振動伝達を実現するために設計されており、磁性合金でシールドされています。よく考えられた設計ですね。

こちらは実施例の図。

M3やM7そのもののようですが、中の構造はこんな風になっていたのですね。

コイルがシールドの中に、前後、上下に並べて納められています。

M44と違って、針にはノブがついていなくて、交換はちょうっと面倒そうですね。