番外1.すてきなミイちゃん A★ (original) (raw)

概要:アニメのエピソードのひとつ。同タイトルの短編が元になっている。
ドラえもんが恋に落ちたという。普段世話になっているのび太は恩返しも兼ねて協力しようとするが、その相手はあろうことか「近所の子供がもっているおもちゃの猫」だった。ドラえもんはこれを無断で持ち出し、鳴き声を出す機能で一人遊びに耽るが、持ち主の父親に取り返されてしまう。譲ってくれと泣きついた挙句、犬に持っていかれたおもちゃを命がけで救ったことからおもちゃを譲ってもらった。ドラえもんはこれに22世紀のロボット用機能をつけて命を吹き込んでプロポーズするが、その猫は「いやだなあ、お婿さんなんて!僕は男だよ!」と大笑いして立ち去ってしまう。ドラえもんはショックのあまり大泣きし、のび太は「泣くなよ!人生にはいろんなことがあるもんだ」と慰める。
備考:3回アニメ化されているが、いずれも細部が異なっている。

感想:「ドラえもんの迷エピソード投票」を行えば、トップにはなれないかもしれないが一桁は堅い作品。普段はのび太ジャイアンに振り回されるドラえもんが、この回は逆に大暴れしてのび太が保護者になる。しかもドラえもんのび太の視点だと「ドラえもんがおかしくなった」だけのエピソードなのだが、それ以外の人の視点だと「正気を失った青いタヌキがおもちゃを相手に発情して持ち逃げし(ようとし)た挙句大泣きしながら譲ってくれと頼みに来る」というめちゃくちゃ怖いエピソードなのだ(わさドラ第1回の時はこの点が強調されて描かれた)。
のぶ代ドラ(1979年)は全盛期の大山のぶ代のオーバーな演技や間の取り方、設定がまだそこまでこりかたまっていないこと、当時の作画のせいでシンプルに狂気が浮き上がる必見の回。6分ちょっとしかないので狂気がかなり凝縮されており、久々にドラえもんで涙が出るほど笑ってしまった。この間の取り方が完全にギャグマンガや落語のそれなのだ。のぶ代の微細に入ったふられた後の息遣いは、今じゃもう大塚明夫レベルの大御所じゃないとできないというか、そもそもそういう演技指導・指示をできる人がいないんじゃないだろうか。
では、1979年の2倍ほどの時間をとっており、そういうところがマイルドになっている事に定評のあるわさドラはどうか?丁寧にドラえもんとおもちゃ猫(手動)のデートシーンが丁寧に描写されるので、江戸川乱歩の「人でなしの恋」とか「押絵と旅する男」じみた狂気がますます強まっており、それでありながら周囲が止めないせいでもはやホラーの域である。
そして原作はさらにセリフがシンプルなのでなおのこと狂気じみており、四者四様の狂気を味わえるというドラえもんきっての迷エピソード。よく「二次元コンプ」「男の娘」「ケモショタ」などに準えられる業の深い回だと言われるが、そういうのを一切抜きにして単なる昭和時代のカオスが詰まっていてやたら面白い。比較して見れる環境を整えると酸欠になるほど笑える、はず。ぜいたくな楽しみ方だ…。
それにしてものぶドラ末期のミーちゃん(普通の猫)やわさドラの女優猫(名前忘れたけど毛の長い猫、シャロンちゃんだっけ?)、2112年のノラミャーコさん(CV皆口のやたら色気のある擬人化された猫型ロボット)など、こいつ性癖の範囲やたら広くないか…?
そしてF先生。これのほかにも面白い話をいくつも思いつき、さらに「T・Pぼん」「ミノタウロスの皿」「ウルトラスーパーデラックスマン」などの毒々しい話まで書くってのは一体どうなってるんだ…。