LAST MILE(ラストマイル) (original) (raw)

滅多に観ない邦画だけどこれは観たいと思ってた。

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ドラマ『アンナチュラル』『MIU404』(特にアンナチュラルが好み)が良かったというのはもちろんあったけど、映画の感想にケン・ローチの名前を挙げているのを見かけたから。

ケン・ローチ監督の『わたしは、ダニエル・ブレイク』『家族を想うとき』が強烈なパンチで、忘れられない衝撃を受けたので、あの要素があるのならという期待も沸いた。

まだ公開して間もないので”ネタばれ”しないように気を付ける。

普段邦画をほとんと見ないのでわかったようなことを言うのはどうかと思うが、『ラストマイル』に接して、「なんかもやもやする」「もっとすっきり楽しみたかったのに」的な感想が出るというのが(見かけた)、普段いかに政治的なことから距離を置き、見たり考えたりせずに暮らしているかであって、逆に言うと『ラストマイル』は、そういった観客に対しても伝えたいことを伝えることには成功し(もやもやは残しているから)、かつ、エンタメとしても成立するその絶妙なバランスをとっているのだなと感じた。これ以上メッセージ性があってもダメだし、これ以下では制作側の思いがうやむやになる。みたいな。とてもうまくできていて、私は楽しんだし、こういう作品を作ろうとする人がいることもうれしい気持ち。もちろんもっとガツンとした作品を作れる環境がある方がよいと思うけど。

”物流”という点で『家族を想うとき』とは共通するものがあるし、『ラストマイル』で感じるものがあった人が『家族を想うとき』も見たらよりその搾取の構造や、権力を持たない側の過酷さが明らかになる。こちらは容赦なし。

フランスでは映画は”第七の芸術”と呼ばれるし、本来映画作品は社会を映す鏡としての役目を果たすこともできる(はず)。辛い現実、過酷な現実を突きつけられるのは、観る側にも気力体力が必要だったりするし、毎回毎回それがいいとは言えないけども、毎回毎回娯楽だけでいいとも思えない。

例えばパリ・オリンピック開会式への大量の批判(日本語による)を目にして私は心底びっくりしたんだけど、普段見ているもの、接しているものの違いが相当に大きいんだなと悟った(開会式への日本人の反応についてはめちゃくちゃ思うところがある)。

ヨーロッパとアメリカでも映画の存在感・位置付けは違うと感じるし、日本は主にアメリカからの受容なんだろうねきっと。エンタメ寄りで。なんとなくの印象だけど。

『ラストマイル』がめちゃくちゃヒットして大金稼いで、こういう作品が次々作られて、政治性やメッセージ性が溶け込んだ作品が広く観客の目に届く世界であってほしいなーと思っている。そして観客側もそれを受容するための知識や感性を鍛えておかねばなのだ。こっちも大事。

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