甲種輸送とは 地理の人気・最新記事を集めました - はてな (original) (raw)
甲種鉄道車両輸送は、輸送される車両の車輪*1を用い、日本貨物鉄道(JR貨物)など貨物鉄道事業者の機関車の牽引で、貨物列車扱いで輸送されるものをいう。
主に、鉄道車両を新造や改造した車両工場から発注元の鉄道会社の引込み線まで届けるために用いられる。また、その逆で車両の改造や廃車などのために発注元の鉄道会社から車両工場へ鉄道車両を輸送するときにも同様にこの用語が使われる。他にマルチプルタイタンパー(マルタイ)を軌道保守業者へ引き渡す際の輸送も甲種輸送とされる。
ときに「甲種回送」とも呼ばれるが、実際は貨物列車での委託なので、回送と呼ぶのは誤りである。
工場から受注元までは、機関車に車輌が牽引輸送され、通常、新造車輌が通るはずもないルートを通ったり、新幹線車両が在来線を走ったり、関西の車両が関東で見られたりすることもある(勿論、その逆もあり)ため、鉄ヲタの人気が高く、これらのダイヤは、毎月発売されている「鉄道ダイヤ情報」に掲載されている(マルチプルタイタンパーや、大物車を使用した大型変圧器*2、さらには海外輸出(譲渡)車両の輸送についても掲載されている)。
これらの列車は、被牽引車輌が電車・気動車などであっても扱い上は「貨物」となるので、輸送はJR貨物など、貨物鉄道事業者の担当になる。そのため、牽引する機関車は基本的にJR貨物所属の機関車となる。またこの際、機関車と牽引される車輌との間ではブレーキ装置が根本的に異なるために特殊なブレーキ読み替え装置を設置して運転される。
甲種輸送されている車輌の車内には納入先の鉄道会社への車輌引渡し手続きの際のために製造メーカーの社員が乗っているのが普通。当然この車内では冷暖房を作動させることが出来ないので、夏や冬は季節柄いろいろと大変らしい。
工場がある有名な始発駅は、新津の「総合車両製作所新津事業所(旧「JR東日本新津車両製作所」)、金沢八景の「総合車両製作所」(旧「東急車輛製造」)、豊川の「日本車両(日本車輌、日車)」、兵庫の「川崎重工業(川重)」、徳庵の「近畿車輛(近車)」、下松の「日立製作所」、北府中の「東芝」、黒山の「新潟トランシス」。また、かつて富士重工業が鉄道車両製造を行っていたときには、JR日光線の鶴田駅を経由して各地へ納入していた。さらにアルナ工機(現在のアルナ車両*3)が鉄道線向け車両製造を行っていたときには、東海道本線尼崎駅から各地へ納入していた。なお、かつてのアルナ工機については路面電車を多く製造していたこともあり、路面電車専用の大物車を保有していた。
但し、新津の「総合車両製作所新津事業所」からJR東日本自社内への回送の際は「自社の配給列車」として扱われる。ただ、新津事業所の生産ラインの関係上、引き続き外部の車両メーカー(総合車両製作所横浜事業所または川崎重工業)で製造している2階建てグリーン車についてはメーカーから新津事業所まで甲種輸送の上、普通車のみの編成への組み込み及び試運転を経て搬出される。
また、川崎重工業及び近畿車輛で製造されたJR西日本向けの在来線車両については鷹取駅(あるいは徳庵駅)から機関車の牽引なく試運転を兼ねて自力で車両基地へ向かうことが多い。
一般車両のうち、標準軌・馬車軌の車両については狭軌用の仮台車を履かせた上で最寄りの貨物駅まで甲種輸送され、車両基地までトレーラー陸送されることが多い。なお、京浜急行電鉄(川崎重工業製)、京成電鉄・北総鉄道(日本車両製)は総合車両製作所横浜事業所)まで甲種輸送され、同所で台車の交換及び整備を受けてから、京急〜都営浅草線〜京成の各線を経由して各社の車両基地へ送られる(スカイライナーなど一部を除く)。
他にも新造車輌だけでなく、全検のために自社の車輌整備工場までの輸送にも使われる。西武多摩川線や伊豆箱根鉄道駿豆線などで行われている。
なお、新幹線車両については、車両限界が在来線規格よりも大きいため、甲種輸送を行うことができない*4。そのため、日立製作所製は山口・下松港から、川崎重工業製は工場近傍の兵庫運河からそれぞれ海運により、JR西日本向けは博多港(→博多総合車両所)、金沢港(→白山総合車両所)、JR東日本向けは仙台港(→新幹線総合車両センター)、JR北海道向けは函館港(→函館総合車両基地)へ輸送される。なお、JR東海向けは海運の他、浜松駅(日本車両製)や鳥飼車両基地(川崎重工業製など)までトレーラー陸送される場合が多い。
この他、現在はゴムタイヤ式の案内軌条式電車についても新幹線車両同様、海運により輸送されることが多い(例:札幌市営地下鉄など)。