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量子コンピュータ

量子力学の原理を情報処理に応用したコンピュータのこと。英国の物理学者デイヴィッド・ドイッチュによって発案された。
極微細な素粒子の世界で見られる「状態の重ね合わせ」を利用して、超並列的に計算を実行する事が出来る。

概要

現在CPUは集積化が進み、回路がどんどん小さくなっているが、あまりにも小さくなると電子が回路の外に浸みだしたりして量子力学的効果が出てきて、これまでのアーキテクチャが使えなくなってしまう。しかしこの量子効果を逆に利用して全く新しいアーキテクチャのコンピュータを作ることもできる。
たとえば量子力学の世界では飛び飛びの値しか取れない物理量がある。電子や原子核の「スピン」とよばれる量がその典型である。これをそのまま1ビットのメモリとして利用できれば原子一個で1ビットの情報を記憶できる究極のメモリとなる。
(数学的にはチューリングマシン(TM)の発展である、量子チューリングマシン(QIM)として定式化される。TMとQTMの相違点は,遷移関数が複素数体への写像になっている点である。)

キュービット(qubit)

しかしこれらハード的側面よりも、量子コンピュータが注目されているのはソフト的側面だといえる。上記のようなビットは「キュービット(qubit)」と呼ばれ、通常の0/1 の値の他にもそれらの「量子的重ね合わせ」の状態もとることができる。この状態でプログラムを実行すると、0の場合と1の場合の両方について並行して計算が行われる。キュービットを例えば10個用意して全てのキュービットを重ね合わせた状態にして計算すれば 1024 通りの計算が並行して行われる。イメージ的には 1024種類の状態の重ね合わせになっているシュレディンガーの猫がそれぞれ別の計算をしている感じである。しかし計算結果を見ようとフタを開けると、どれか一つに収束してしまい一つの計算結果しか取りだせないので、うまい工夫が必要となる。

ショアのアルゴリズム

このうまい工夫を考えたのがショアによる素因数分解のアルゴリズムである。一般に巨大な数を素因数分解するにはすべての数で割ってみるしかなく、厖大な時間がかかる。現在WEB などで広く使われている公開鍵暗号システムは、公開鍵を素因数分解できれば破られてしまうが厖大な時間がかかるため安全とされている。しかしショアのアルゴリズムを使うと劇的に速く素因数分解できてしまうので社会的影響は大きい。

実現性

今のところまだ量子コンピュータは研究段階にあり、核スピンを使った5キュービットが試作されたり、基本回路である制御NOTゲートがようやく実現されたりというところである。技術的には克服すべき点がまだまだ多い。たとえばキュービットは「観測」してしまうと量子的重ね合わせが崩れてしまうので、計算が終るまでは「見てはいけない」。外部からのちょっとしたノイズも「見た」ことになるので技術的に難しい。
2003年には巨視的量子コヒーレンス研究チームはNECと共同で、固体素子を用いた量子コンピューターの基本回路を世界で始めて実現させた。
2011年には、西森秀稔が考案したとされる量子アニーリングの方法を応用し、カナダのD-Wave Systemsにより量子コンピュータを世界で初めて発売したと発表。最初のユーザーはロッキードマーチン社とされる。また2013年5月には、NASAGoogleが共同で同社の「D-Waveマシン」を導入したと発表した*1

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