熟して黄色くなったカボスが白米いけるくらいうまい (original) (raw)

産地ならではの逸品、黄色いかぼす

「かぼす」といえば、主に料理の香りづけのために使われる柑橘類である。柚子やすだちと同じようなものと思っていただいて差し支えない。

完全に余談であるが、私は中学生の頃にかぼすのことを知らない友人たちと、その実在・非実在について舌戦を繰り広げたことがある。

素材集より。ふつうのカボス。カボスじゃなかったらすまん

冒頭に書いたようにかぼすは一般的に緑色のものが流通しているが、それは熟する前に収穫しているからに過ぎず、秋が終わるころ果実は完熟して柚子のような黄色になる。

黄色くなったかぼすは酸味がマイルドになり旨みと甘みが際立った逸品として一部では知られているが、流通の難しさから全国には出回っていないそうだ。

ほら、黄色いかぼすもあるのよ。宮崎県北のスーパーにて。

かぼすの本場は大分県であり全国シェアは脅威の98%以上を誇るが、私の住む宮崎県でも少なからず生産されていて、旬の時期にはスーパーマーケットの生産者コーナーなどで黄色くなった果実が簡単に手に入る。

旬の時期(12月)になると大量に店頭に並ぶよ

そして私は黄色いカボスをたまたま人から貰って食べて、あまりの美味しさにびっくりしたのである。この異常とも言える美味さ、どうしても伝えなければならない。

白米いけちゃうくらい旨味がある

黃かぼすのなにがそんなにいいのか。何度も言うように酸っぱさのなかにも甘みと旨みがあって目が覚めるようなおいしさなのだ。とにかく酸味・旨味・甘味のバランスが非常にいい。

無理に例えるならうま味調味料と少量の砂糖を溶いた水で育てたレモンのような味がする。なんだそれは!おれの理想じゃないか!

おれの理想よ!(呼格)

大分県では黄色くなったカボスの果実をしぼったものに酢を加えて調味料を作ったり、焼酎に果汁を垂らして飲んだりするらしい。緑色のものと比べて香りが少し落ちるとも言われるが、そのぶん汎用性は高くなっているような印象を受ける。

もちろん鍋物にあわせたり焼き魚にかけたりしてもいい。なんに使ってもいいのだ。とたんに味のグレードがあがる。

もう、果汁を白米にかけて食べてもいいんじゃないか。そう思えるくらい旨味がある。果汁だけでお惣菜に匹敵するくらいのおかず力がある。

一合ぶんくらい米を盛った

よし。すだちうどんの要領でかぼすの果汁をごはんにかけてみようじゃないか。ちゅっちゅ。

果汁かかってます

かぼすの果汁をまとった白米はてらてらと光沢を帯び、柑橘特有の爽やかな香りが食欲をそそる。黃かぼすは甘味と酸味のバランスがいいので果汁をかけるだけでほぼ酢飯みたいになるというわけだ。

おらっ!

うめえ!

ばくばくいけるぞ!

果汁の水分で米のねばりが抑えられるもんだからサラダのような感覚で米がばくばく食える。

家でしゃぶしゃぶをやるとき、器に大根おろしを盛ってポン酢かけたタレを用意しますよね。それで、出汁が煮立つまで我慢できなくてポン酢ひたひたの大根おろしだけを食べたら存外おいしくて、豚を茹でる前にお茶碗一杯いっちゃったみたいな、そういう感じのうまさです。

ごま油と塩をかけてもいい

もともと醤油とかポン酢をご飯にかけて食べるのが好きなのでその延長とも言えるが、健康面でまったく罪悪感がないのでかぼすご飯はすばらしい。健康的ですらあるし。

おかずを作る必要がないので食材費と私の人件費のぶん儲かっているのもいい。

とはいえ、おかずがあるにこしたことはない

スーパーの鶏たたき、400円

当初はかぼすの果汁だけで米を無限に食えるという記事にする予定だったが、普通に茶碗1杯ぶんで飽きてしまったことをここに白状しよう。黃かぼすの美味さを味わうにはいい方法だと思うのだが、塩味がものたりないのだ

保険で鶏たたきを買っていたのでこれにかぼすの汁をかけて食べることにした。九州ならでは。

ほれ!

ぎええええ、うまい。鶏たたき用の醤油ダレはそうとう甘く作られているので、かぼす果汁を足すと清涼感がプラスされてサッパリ食べられる。

かぼすご飯は酸味と旨味こそあれど、おかずの邪魔をするほどの強い香りはないので、本当に何にでも合う。食欲のないときなんかにもいいはずだ。

完食した

この「黃かぼす」は一部ネットショップで買えるほか、大分県人の知り合いに送ってもらうという手段で手にする人も多いようだ。

旬はいまの時期なので、なんとかして一度食べてみてほしい。酸っぱいものが好きな方なら皮を向いてそのままパクっといっちゃってもいいかもしれない。

きっと黃かぼすに底しれぬ可能性を感じ、果汁をご飯にかけてみたくなるはずだ。決して奇をてらった行為ではないのである。

今年の冬はカボスしぼろうぜ!

(おわり)